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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

北大CoSTEPモジュール2「表現とコミュニケーションの手法」を受講しました #costep

f:id:yumu19:20200822124125j:plain 今年度、北海道大学 科学技術コミュニケーター養成プログラム (CoSTEP) を受講しています。

CoSTEPの講義はモジュール1からモジュール6まであります。その2つ目が終わり、以下のようなレポートを提出しました。

モジュール2 レポート

モジュール2の講義で取り上げた、3つのコミュニケーションの手法(プレゼンテーション、ライティング、映像メディア)について、コミュニケーション上の特徴をまとめてください。そして、自分がこれまで実践している(あるいはこれから実践しようとしている)科学技術コミュニケーションに資する活動に、どのコミュニケーションの手法を取り入れることで、どのようなプラスの効果をもたらすことができるのかを、具体的に述べてください。(800〜1200字程度)

■プレゼンテーションによるコミュニケーションの特徴

 プレゼンテーションは、時間と場所を共有して同期的に行うコミュニケーション手法である。話者と聴講者の距離が近く、直接的なコミュニケーションができる双方向性を持つ。コミュニケーションの最中に、聴講者の反応を見ながら適切な説明方法を選択することができる。  プレゼンテーションを撮影した動画がアーカイブとしてWebにアップロードされたり、ビデオ会議ツールを用いてオンラインで開催されるなど、オンラインを活用した実施形式もある。この場合、特徴である双方向性が弱まる一方、時間と場所の制約が解消される。

■ライティングによるコミュニケーションの特徴

 ライティングは、書かれた文章をいつでも読むことができる非同期的なコミュニケーション手法である。3つのコミュニケーションの手法の中で、内容を正確かつ詳細に伝えることに最も向いている。ライティングでは、内容を大まかにわかりやすく記述することも、精密に記述することもでき、目的や対象に応じて内容の抽象度や説明の仕方を選択することができる。ただし、わかりやすい文章を書くには技術を要する。書く技術が低いと、意図通りに伝わらない。執筆と推敲にかかる労力も、プレゼンテーションに比べて大きい。  執筆された文章は、以前は書籍や新聞といった紙媒体に掲載されることが主流であったが、近年はWeb媒体に掲載されることも多い。現在、Webにおける検索は文字検索が主流のため、映像や写真に比べ、文章情報は検索性に優れる。そのため、調査の際に目にする可能性が高い。

■ 映像メディアによるコミュニケーションの特徴

 映像メディアは、受け手に強い印象を与えることのできるコミュニケーション手法である。映像は情報量が多く、上手く活用することで効率よく情報を伝えることができる。さらに、CGやアニメーションでの表現、ナレーション、テロップ、BGMなどを活用することで、より効果的な情報伝達となる。映像は演出によって伝わる印象を調整することができる。ただし、過剰な演出は誤解を招く可能性も高いため、演出方法には気をつける必要がある。  スマートフォンの普及、映像制作支援ソフトウェアの充実、動画配信Webサービスの増加により、コミュニケーション手法のひとつとして映像メディアを利用しやすくなった。ただし、依然として映像制作には非常に大きな労力がかかる。

ポッドキャストにライティングを取り入れる

 私は「品モノラジオ」というポッドキャスト番組を主宰しており、約5年間で約40件のエピソードを配信してきた。Maker Faireなどのものづくりイベントに出展している方たちをゲストに迎え、作品制作の詳細な話やその背景にある想いなどを語ってもらうことを趣旨とした番組である。ポッドキャストなので、基本的には音声だけを配信している。しかし、音声コンテンツには、情報の細部まで伝達することが困難であること、視聴に拘束時間が発生してしまうこと、検索性に乏しいことといった欠点がある。  これらの欠点を補うには、ライティングが活用できる。例えば、ポッドキャストで話した内容をインタビュー形式の記事としてまとめれば、より詳細な内容を伝えることができ、それはいつでも読むことができる。また、文字としてアーカイブされるためWeb検索でみつかりやすくなる。

モジュール2を終えた感想

モジュール2は、「イベント・フィールドワーク」「映像メディア」「プレゼンテーション」「ライティング」「アート」という、科学技術コミュニケーションを行う具体的な手法について学びました。

それぞれ90分の講義なので、この講義だけですべてを学ぶというのは難しいですが、限られた時間の中で多くのことを学ぶことができました。イベント、プレゼンテーション、ライティングは普段やることがとても多いのですが、科学技術コミュニケーションにおいて非専門家に向けてコミュニケーションを行う際のポイントを改めて意識しました。映像メディアとアートは、CoSTEPで学ぶことをとても楽しみにしてたトピックでした。映像メディアの講義は、担当の早岡先生が元テレビ局の科学番組のディレクターで、現状のテレビ番組制作の問題点なども交えつつ、映像制作における文法などをとてもわかりやすくまとまってました。来月、選科でも希望者が受講できる映像制作の演習講義もあるのですが、行けないのがとても残念です。

レポートは、プレゼンテーション、ライティング、映像メディアのそれぞれのコミュニケーション上の特徴をまとめ、これらを具体的にどう活かせそうかまとめるという内容でした。この3つのコミュニケーション手法は、それぞれ別の手法ではありますが、似た特徴も多く、3つの手法間での補完関係が成立しにくいように感じました。最初は、自分の研究を伝える時にどうするかというテーマで書こうかと思いましたが、まとめるのがなかなか難しかったので、この3種類以外の手法を用いている活動としてポッドキャストを選び、それをライティングで補完する方法を書きました。実際、ポッドキャストがWeb検索に引っかからず特定コミュニティ外にリーチしないという課題は大きく、内容をWebに載せることは相互補完的で相性が良いと思いました。知ってる事例では、かまぷとゆうこのデベロッパーズ☆ラジオ がそのような感じでポッドキャスト配信とWeb記事掲載を両方行ってます。

何か伝える時、プレゼンをするのか、文章を書くのか、それとも、映像を作って見せるのか。これは、多くの場合、イベント等の機会の形態によって自ずと決まるもので、これらの特徴を吟味した上で取捨選択することはあまりありません。ただ、こうした取捨選択の一部は無意識的に行ってることかもしれず、そういう意味では、改めて意識したことは重要だったかもしれません。コミュニケーション手法というのは、講義で紹介されたものに限らず、たくさんの手法があるので、より適切な方法を持ち出せるよう、普段からひきだしを多く持っておくことが大事なのかもしれません。