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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

大学教員になって2ヶ月が経ちました

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4月に北海道情報大学に着任 し、2ヶ月ほど経ちました。うちの大学は前期と後期の2学期制ですが、各期の前半と後半で時間割が変わるため実質4学期制になっています。いまはちょうど前期前半が終わって前期後半が始まったところです。節目ということもあり、着任直後にどのようにすごしていたか備忘録として書いておきます。

講義

想像通り、講義の準備が一番大きな割合を占めました。前期前半では、2年生のプログラミング演習(C++)の講義と、1年生向けに学内コンピュータやソフトウェアの使い方を学ぶ入門的な講義の2つを担当しました。

講義情報の管理は、Learning Management System (LMS)を使ってやっています。LMSはいまだとmoodleGoogle Classroomが多いかと思いますが、うちは moodle ベースのものを使っています。講義資料や課題などの講義情報は、過去から引き継いで少しずつ修正されてきたものがそのまま残っています。また、この学期で担当した講義は、クラスを分けて複数の教員で同じ内容を担当しているものだったので、困ったときには相談させてもらいながらできました。なので、想像してたよりははるかに労力は小さかったです。とはいえ、初めて教える内容なので当然事前準備は必要で、レポート・課題の採点もあり、それなりに大変でした。

また、今年度特有の事情として、オンライン対応がありました。講義は、4月はオンラインのみで行い、5月からは受講者の希望者が大学で対面で受講するハイブリッド形式が始まりました。しかし、5月に入ってすぐ感染症対策レベルが引き上げられ、すぐにまたオンラインのみに戻りました。ハイブリッド形式ができたのは1週間ほどで、ほぼずっとオンラインで講義を行っています。以前から想像していましたが、演習形式の講義をオンラインで行うのはすごく大変です。当日はZoomを使い、情報伝達はLSMの他にSlackを使って行っていますが、対面であればすぐできるようなちょっとしたコミュニケーションにも障壁が高く、いろいろと難しいです。これはこれでコミュニケーションスキルの向上に役立ってはいると思いますが、本来の目的であるプログラミングの習得には障壁となっています。演習課題の解説のために、コードを書く過程を載せた解説動画を毎回作ったりして、いろいろ工夫してみましたが、まだ改善の余地はあるかなと思います。

2ヶ月経ってようやく慣れてきて、学期も変わって落ち着きましたが、4月5月は、毎回の講義に遅れないようにずっと準備をしている自転車操業状態でした。

研究室運営

中村先生のnote

などを参考に、普段の連絡にはSlack、ゼミはZoomなど、いろいろなツールを使っています。全学生が大学で発行されたGoogleアカウントを使っており、これはいろんな準備が捗るのでありがたいです。まだ研究室Webサイトを立ち上げられていないのですが、近日中にJekyllを使って立ち上げる予定です。

この2ヶ月で、対面で開催できたゼミが1回のみでほぼ全てオンラインでやっているので、ゼミ生同士で顔を合わせる機会をほとんど作れておらず、物理的に全員が揃ったことはまだ1度もありません。もともとの想定では、3年生の前期と夏休みは様々なツールを一通り触ってプロトタイピングの手法を身に付けることをメインとし、後期でテーマに沿って研究過程を経験するという流れを想定していたのですが、対面できず、ツール(特に、M5Stack、Raspberry Piプロジェクションマッピングなど物理デバイスを要するもの)に触れる機会があまりつくれてません(時間が取れず準備が追いつけてないこともありますが)。そして、それよりも重大なのがコミュニケーションの機会が少ないことです。今できることをいろいろ試行錯誤しつつ、対面できる日を待ちたいと思います。

先日は、SeMI研・UBI研のLTシンポジウム をみんなで聴講しました。研究会をオンラインで聴講できるのは、北海道の大学にとって大変ありがたいので、研究会のオンライン聴講は今後もぜひ継続してほしいと思ってます。

研究費申請

大学から支給される研究費は、知人の話を聞く限りでは他大学と比べて少なくない方だと思うのですが、それでも、特に初年度は購入する備品や機材が多く、また、あてにしていた科研費(若手研究)も不採択となってしまったため、外部資金の獲得が急務です。

民間の企業や財団の研究助成はいろいろとあるのですが、昨年度締め切りで今年度支給となるものが多く、今年度応募して今年度中に支給されるものは多くが5月締切となっていました。なので、着任直後のこの時期に締切が集中しており、講義等で忙しかったのですががんばって研究代表として4件申請を出しました。基本的には個人で出せるものを選んでいたのですが、お声がけいただいて学内の他の先生と共同での申請もありました。

来年度以降は、年度またぎの助成金も申請でき、科研費の結果開示も早まり、もう少し計画的に準備できると思うのですが、申請の採否に一喜一憂することからは解放されたいので、複数年の研究費獲得や、企業との共同研究の体制を早めにつくっていきたいです。もちろん、そのための研究の種づくりも早めに。

研究

自分で手を動かして実装をしたり論文を書くのをやめるつもりはなく、特に今年度は研究室メンバーがまだほとんど3年生なので、自分で研究を進めていきます。着任してすぐ成果を出すのはなかなか難しいのですが、着任後の成果がないと何ができる人/研究室なのか周囲から見てわからないので、 早く成果を発表したいです。着任直後は自分の研究時間が全く取れないのを覚悟していましたが、5月の後半ぐらいからは少し時間が作れてきたので、本当に少しずつですが、以前から暖めていた新しい研究テーマに着手しています。やりたいことはいっぱいあるんですけど、ひとつずつ。

事務手続き

転職回数はそこそこあるのでもう慣れたものではあるのですが、組織によって手続方法が全然違うので、一つずつ調べて覚えています。なんでも一度やってみないとわからないので、早く一通りできるように、購買や、有給休暇取得など、なるべく早めにいろいろやってみています。分からないことがあったら、教職員Slackで聞くとすぐに誰かが教えてくれるので、とても助かってます。それほど大規模ではない3学部4学科の大学なので、距離感も近くて聞きやすいです。

その他

委員会があったり、オープンキャンパス模擬授業や入試監督の割当が決まったり、来年度から内容を一新する全学の講義の準備を他学部の先生方と進めたり、宇宙情報センターアントレプレナーシップセンターのメンバーとなったり、いろいろありました。

(余談)Windowsの話

基本的にはどの講義もWindowsを前提として進められます。普段使っているのはMacで、宗教上の理由*1Windowsはなるべく触らないようにしているので、講義関係のときだけWindowsを使っています。

違うOSを使い分けるのは大変なので、いっそのこと普段の環境もすべてWindowsにしてしまおうかとも思ったのですが、インタフェース(ディスプレイ、キーボード、トラックボール)を統一すればそこそこ快適に作業できることがわかったので、今後も併用していこうと思います。

Mac上でVMとしてWindowsが動かせるようになると操作的にも荷物的にもすごく楽になるのですが、今使っているM1チップのMacではx64版WindowsVM*2 には対応していないので、早く対応されることを願ってます。

まとめ

やること全てが初めてとなる着任直後のこの時期が、きっと後から振り返ってみると一番大変な時期だったと思うはずです。その一方で、着任直後ということでいろいろ免除されてることもあるはずなので、これから大変になることもいろいろあるのだとは思います。

前期の前半が終わって後半が始まったところなのですが、後半は演習の授業がなく、また、その後には夏休みがあるので、いまが1年の中でも比較的余裕のある時期です。一方、後期は演習が2つ入り、大変な時期になりそうです。なので、この時期を使ってきちんと研究を進めたいです。夏休みが楽しみ!!

*1:よくある冗談っぽく見えると思いますが、自分の時間を無闇に奪うものは極力触らないことを信条としています

*2:ARM版Windowsは動かせるようなのですが、演習でx64版バイナリを使ったりすることがあり、また、コンパイラの挙動が異なる可能性があるため、x64版Windowsが必要なのです