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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

「オンラインでもできる」ではなく「オンラインだからできる」 #DIYMUSIC #劇団ノーミーツ #むこうのくに

f:id:yumu19:20200727081727p:plain 週末に観たDIY MUSIC on Desktopと 劇団ノーミーツ「むこうのくに」が面白かったので、紹介します。

DIY MUSIC on Desktop

Maker Faire Tokyo/Kyotoのスピンオフ企画で、2時間で8組のアーティストが自作の楽器や独自演奏方法を駆使して演奏するオンライン音楽ライブです。YouTube Liveで配信され、そのアーカイブが残ってます。

ねや楽器 @neyagakki さんのソルダリングシンセサイザーは、はんだづけでシンセサイザーを制御するパフォーマンス。このシンセサイザーの発想自体がすごいんですが、パフォーマンスもすごい。

HAUS++のパフォーマンスは、チャットにコード書き込むとそれが音楽になるというもの。観ている人もチャットに入ることができて、一緒に参加して音を鳴らすことのできる参加型の形態でした。

城一裕さんのパフォーマンスは、模様をプリンタで印刷して紙に溝を作って、それをレコードとして読み取らせることで音を鳴らすというもの。プリンタで印刷するところから見せていて、見せ方が面白いと思いました。

音楽系のイベントは現地開催ならではの楽しみもありますが、一方、機材を現地に持っていくのが大変だったり、会場の制約でできないパフォーマンスがありますが、オンラインだと自宅で自由にできるので、表現の幅は広がるなと思いました。また、現地のパフォーマンスでは手元があまり見えなくて何をやっているのかわかりにくいことがありますが、オンラインでは見せ方の工夫次第で手元や機材をアップにして写すこともできるので、操作方法などが細かく分かるのもよかったです。

Maker Faire Tokyoではいくつかあるステージの一つが音楽専用ステージになっていて、2日間ほぼずっとライブイベントやっているのですが、実際にMaker Faireに行くと、展示を見て回ったり、他のトークセッションを聞いたりするのに忙しく、音楽ステージにずっといて聞き続けるのはなかなかできません。今回の DIY MUSIC on Desktop は、2時間だけですが音楽ステージにずっといてステージを存分に楽しんでいるような感覚でした。しかも、音量は自由に調節できて、映像はキレイに見えて、家にいるので好きな姿勢で好きなものを食べ飲みしながらすごい快適な環境で観ることができて、すごい良かったなと思います。

劇団ノーミーツ「むこうのくに」

注意:具体的な内容には触れないようにしてネタバレは避けていますが、それでも内容や世界観に関するキーワードはいくつか出すので、これから観る予定で先入観を持たずに観たい方は読まない方が良いかも知れません。

Twitterでよく流れていたので劇団ノーミーツというのは見かけていたのですが、あまり詳しく把握してなくて、この4連休で公演していたことも知らなかったのですが、 @ochyai のノートを見てこれは絶対見なきゃいけないやつだなと直感して、すぐに申し込みました。

これ、めちゃくちゃ良かったですね。本当に観てよかった。

劇団「No Meets」ということで、演者・スタッフが一度も会わずに準備して稽古して上映もするというコンセプトになってます。オンラインなので各自が自宅で演じ、技術的な演出もリモートで実施してるそうです。

バーチャルワールドでZoomのようなビデオチャットを通じて話が進んでいきます。全体の世界観がサマーウォーズみたいなSFアニメの世界で、その中でストーリーが展開されていくので、SFアニメの中に演劇が入り込んだと言うか、演劇と映像作品の中間のような新しい表現方法だなと感じました。サマーウォーズの他にも、Serial experiments lainなど、いくつかの有名SFアニメ作品のオマージュと思われる要素がいろいろと混ぜ込まれています。

Webブラウザを通してみる観覧方法も、作品の中にいるような立ち位置で見ることができて、面白いなと思いました。メインコンテンツの動画プレイヤーの横には、チャット機能もあり、同じ時間帯に観ている他の人と意見やコメントを共有しながら観ることができ、新しい観覧方法かなと思います。ただ、チャット見てると物語にあんまり没入できないと感じたので、チャットはたまに見るくらい止めるくらいがいいのかなと思いました。途中からは、チャット気になるので別ウィンドウで隠してチャットを見えないようにしていました。チャット非表示機能があるといいかなと思いました。

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ビデオチャットベースで全部進むので、役名が常にウインドウに表示されていて名前を覚える必要がないのもよかったです。これは最初の公演では表示されてなくて、要望により後で追加されたそうです。アップデートが入って改善されていくのも面白いですね。

スクリーンショット撮影とSNS投稿がOKと言うか歓迎だったので、Twitterにも投稿しながら観てました。Twitter見てると、同じ回で @HomeiMiyashita 先生や @tks さん、@etsuko_ichihara が観ていたようで、他の人と一緒に観に行ってるような感覚が得られるのも新鮮でした。普段、演劇や映画を誰かと一緒に観に行くのがあまり得意ではなくほとんど一人で観に行くのですが、この劇団ノーミーツの観覧方法は、一人で気楽に観つつも他の人と空間や感動を共有できる方法だなと思いました。

ストーリーの主要なテーマに「友達を作る」というのがあります。このCOVID-19の状況では、人と物理的に会えない中でどうやって友達を作るかという問題もあり、今のこの状況でこそ共感できる部分が大いにあると思います。そして、この演劇自体が一度も会わないで作られているのですが、演者の皆さんがどう見ても一度も会ったことはないと思えないほどすごく仲が良さそうで、その辺りも内容と作品制作自体がメタに絡み合って面白いなと感じました。

08/01(土)〜02(日)にあと2回だけ追加公演があります。観てない方はぜひ!

おわりに

いま、オンラインイベントの数自体はすごく増えてますが、どちらかというと今までやってたことをオンラインで実現しようとするものが多いように感じます。移動しなくていいことやアーカイブが容易になるといったオンライン化による恩恵はものすごく多くて、それ自体はとても良いと思います。ただ、オンラインだから可能となるイベント形式や表現方法って何だろうというのは最近気になっていて、この2つのイベントではどちらもオンラインならではの表現方法を強く感じました。これからも、オンラインでしかできない表現がいろいろなところから出てくるのが楽しみです。