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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

日本学術会議 若手アカデミーの提言「シチズンサイエンスを推進する社会システムの構築を目指して」について

日本学術会議 若手アカデミーが「シチズンサイエンスを推進する社会システムの構築を目指して」という、シチズンサイエンスに関する提言を出しました。

提言内容には

シチズンサイエンスの存在および、その魅力を周知する広報活動を行うため、サイエンスカフェ等の取り組みを活用することが望ましい。そして、文部科学省および関連省庁は、一連の取り組みを主導するサイエンスコミュニケーターの雇用やイベント開催の予算的措置を進めるべきである。また、職業科学者は、サイエンスコミュニケーターにシチズンサイエンスの推進をすべて任せるのではなく、科学者自身が市民と一体となるシチズンサイエンスをより一層推進していく必要がある。

 

科学コミュニケーションにおけるモデルの変遷に鑑みると、シチズンサイエンスの今後の発展のためには、日本でも職業科学者とシチズンサイエンティストの双方向性を備えたコミュニケーションの場が不可欠である。しかしながら、現状では、職業科学者とシチズンサイエンティストの橋渡しによる双方向性のあるシチズンサイエンスを推進するための社会連携の基盤が十分に整備されていない。学協会は、主催する学術集会でシチズンサイエンティストの発表を奨励し、双方向性を備えたコミュニケーションの場を提供すべきである。また、このような企画を立案、運営する委員会を設置し、社会連携の基盤整備を進めるべきである。

 

シチズンサイエンティストの活動を支援する研究資金制度について、現在、社会課題解決型の研究を助成する資金制度が存在する。これに対し、知識生産を目的とした研究を行う際に、シチズンサイエンティストが研究代表者として申請できる柔軟な使用用途が認められる助成制度が必要である。文部科学省および関連省庁は、シチズンサイエンティストの研究を支援する研究資金制度を確立することが望ましい。職業科学者はシチズンサイエンスの重要性を認識し、社会課題解決型以外の研究に対して、現在の研究費制度にシチズンサイエンティストによる研究を組み込むことを推奨すべきである。

といった内容が盛り込まれ、職業科学者とシチズンサイエンティストの関係、さらにサイエンスコミュニケータまで含めた、シチズンサイエンティストが活躍するための極めて真っ当な提言になっています。提言全文の前半では、世界と日本におけるシチズンサイエンスに関する現状と課題がとてもよく整理されていて、これだけでも価値がある文章です。このような形の提言がアカデミア側から出てくることはあまり想定しておらず、そもそも若手アカデミーがシチズンサイエンスに関する活動をやっていたことも知らなかったので少し驚きましたが、とても良い動きだなと思います。

シチズンサイエンスについて普段考えていることが提言としてまとまってて嬉しく思うとともに、自分ができることをもっと形にしていかないとなと改めて思い、「ハッカソンシチズンサイエンス」という論文ちゃんと書くかーという気分になった。