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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

講演を依頼する時に気をつけること

f:id:yumu19:20160116135052j:plain ここ数年で、有志のイベント等で講演をお願いすることもお願いされることも結構増えてきたのですが、されて嬉しかった対応や困った対応、自分がしてしまったことの反省点などいろんな知見がたまってきたので、それらを踏まえて、依頼する側の視点でチェックリスト風に書き出してみました。

依頼時に講演に関する情報をきちんと伝える

  • イベントの背景や概要
  • 開催日時
  • 開催場所
  • 講演の持ち時間
  • 謝金の有無と金額
  • 交通費支給の有無と上限値

上記は最低限の必須事項ですかね。これらがないと受けるかどうか判断できないと思います。情報を小出しにせず、すべて最初に伝えましょう。未決定事項があれば、「〜は未定です」などと未決定であることをきちんと明示しましょう。加えて

  • 主催団体のURL
  • 参加者募集ページのURL
  • 過去のイベントの記事やTogetterのURL

など、参考となる情報があれば付け足しましょう。公式なwebサイトの情報は公式情報として必要ですし、過去イベントのweb記事やblogやTogetterはイベントの雰囲気がわかるので講演を受けるかどうかの判断材料や、準備する際の参考になります。

依頼は1対1で行う

連絡事項を関係者に広めにCcするのは情報伝達の上では良い事だと思うのですが、初めから1対多になると断りにくい雰囲気をつくってしまうので良くないかなーと思ってます。受諾して頂いた後に関係者にCcしましょう。

集合時間を早めに伝える

イベントの日時だけ伝えて、集合時間を直前(前日や当日)まで伝えないというのは避けましょう。特にリハがあったりする場合には入り時間がだいぶ早くなるので、きちんと伝えて調整しましょう。遅くても1週間前、できれば2週間前くらいですかね。

Web等に掲載するプロフィールを用意する

これは本人にお願いするのがよいかなと思ってます。手間をかけさせないためと思って主催者側で用意すると、不正確な情報が載ってかえって迷惑をかけてしまうかもしれません。お願いする際には文字数の目安も伝えましょう。webに載せる場合には200文字程度で書くことが多い気がします。

主催者側で用意する場合も、webで公開前する前に必ず本人に確認しましょう。ググればすぐわかる情報でも、所属組織の都合などで書けない場合もあります。

写真が必要な場合はどの程度の解像度が必要かも伝えましょう。想定より解像度が低くてもう一回お願いするのはお互いに手間です。

他の登壇者が決まり次第すぐに伝える

講演準備する際のトピック選びの参考と、何より準備のモチベーションになります。性格にもよると思いますが、僕は、直前まで誰と一緒に講演するのか知らずに準備するのは結構苦痛です。

パネルディスカッションのような形式の場合は、初対面だとなかなか話が盛り上がらないので、事前に顔合わせのミーティングや飲み会があるとなお良いです。

参加者募集開始したらその旨を伝える

マナーとして。イベントの告知にも協力してもらえるはずです。

動画のweb配信について伝える

ライブ配信アーカイブをする場合には事前に伝えましょう。webの公開の有無で準備する話の内容が変わります。黙って勝手に公開はNGです。

パネルセッションがある場合には事前に登壇者同士の交流を設ける

パネルディスカッションで、その場でいきなり議論を始めて盛り上がるのは稀です。特に初対面の人がいる場合はなおさら。事前の助走が必要です。 対面やオンラインでミーティングができればベストですが、難しい場合は、登壇者を全員まとめたチャットグループ(Facebookメッセンジャー等)をつくり、そこで登壇内容のすり合わせやトピック候補などを共有するとよいです。登壇内容に直接関係ない雑談的な内容でも、お互いの雰囲気を知ったり関係をほぐすのに効果的です。 また、このような登壇者をまとめたチャットグループをつくることは運営の手間を減らす効果もあります。個別に連絡するのは一見丁寧な対応に見えますが、同時に連絡漏れの可能性も高くなるので、なるべく避けたほうがよいと思っています。

イベント後のフォローアップを行う

講演のお礼を伝えるのはもちろんのこと、その他に、

  • 可能であれば Slideshare などに資料の公開をお願いする
  • webニュースやblogに掲載されたりTogetterまとめ記事があったらURLを伝える

講演者自身のプロフィールのひとつとして使ってもらいやすくなりますし、イベントの広告にもなります。

まとめ

以上、イベントの規模によると思いますが、参考になれば。これ書きながら、いままでできてなかったなぁという部分は自省しました。特に顔なじみの人にお願いする場合にはショートカットしちゃう場合も多いですが、親しき仲にも礼儀ありで、依頼する方もされる方もお互い気分を害さずに楽しいイベントになるよう心がけましょうー!

余談

2015年の振り返りと2016年に向けて

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あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、Twitter等で断片的に僕の行動を見ている方は「この人何やってんの?」ときっと感じていると思うので、自分の活動を紹介する良い機会でもあると思い、ちょっとまとめてみました。

石川生活

2014年の年末に東京から石川に引っ越したので、昨年一年間は石川で暮らすほぼ最初の年でした。 石川の中でも金沢や野々市(金沢の隣のベッドタウン)であれば人も家も店も多いのですが、うちは金沢から車で30分ほど離れた場所に住んでいて、さらに住宅街の端っこの方なので周りが田んぼに囲まれてる、とても田舎らしいところです。それでも徒歩圏内にはセブンイレブンとローソンとスーパーがあるし、車で20分でくらいかけてイオンに行けば何でも揃うし、そもそも買い物はほとんどAmazonなので、全く不自由しません。これは誇張でも何でも無くて、普段の生活に関しては本当に東京にいる時より便利です。東京、車乗れないからねー。

石川に住んでいても仕事やイベント等で東京へ行くことが多く、数えてみると昨年は21回東京に行ったらしいのですが、だんだんコツがわかってきました。

  • 移動が早朝や深夜になったとしても泊数を減らしたほうが楽 (移動よりもビジネスホテル宿泊の方が疲労する)
  • 新幹線よりも飛行機のほうが楽

地方に住んでいる分家賃が安いので、月2回くらいまでなら自腹でもまあペイするかなーという感じなのですが、移動費だけじゃなくて移動時間も考えて、極力減らしたいところです。

職場(NICT 北陸StarBED技術センター)

昨年から、情報通信研究機構(NICT)の有期技術員として働いてます。NICT自体は国立研究開発法人なので大きな組織なのですが、所属している北陸StarBED技術センターは20人弱なのでそんなに大きくないです。研究用のアプリ書いたり、チームで使うサービスを立てて管理したり、インフラをメンテしたり、けっこう幅広くやってます。ここにはたくさんの研究用サーバがあって、サーバやスイッチの実機をいじることが多いです。最近はAWSなどが普及して、実機を触る機会ってかなり減っているので、これはかなり貴重な経験をしてるなーと思ってます。特にスイッチはいままでほとんど触ってこなかったので、最初は結構苦労してたのですが、昔、新人研修の一貫でCisco CCNAを勉強して取得したことがあるので、それを思い出しながら触ってました。CCNA勉強してる時はスイッチの設定覚えても役に立たないよなーと思ってたのですが、本当に役に立つ時が来るとはw 実機なのでサーバのハードウェア的な管理も必要で、サーバラックにマウントしたり、UPSを設置したり、電源容量を考えて配線したり、10Gイーサネットを引き回してます。そもそも建物自体の管理も、小さい建物なので設備管理者がいるわけではなくかなり自分たちで行う必要があり、大雪が降ったら除雪したり、蜂の巣の駆除を依頼したり、非常用発電機のメンテナンスに立ち会ったり、いわゆるふつうのオフィスではできない体験をめちゃくちゃたくさんしてます。性格によりそうですが、やったことないことをやるのが好きなので楽しいです。*1

楽しい! ✌('ω'✌ )三✌('ω')✌三( ✌'ω')✌

サイバー攻撃関係の部門にいるので、もともと専門ではなかったサイバーセキュリティについても最初に比べればだいぶ知識ついてきました。

研究

多くの皆さんに気にかけて頂いていて、ご心配をお掛けしています&本当にありがとうございます。2010年10月からJAIST博士課程(社会人コース)に在学していて、長期履修制度を使い6年(+休学1年)かけて修了する計画なので、修了予定が2017年9月です。今年1年できちんと業績を残し、来年は博士論文執筆に専念できるようにしておきたいです。

昨年は、「過去に作ったものをアカデミックで発表しておく」キャンペーンで、2つのネタを国内研究会で発表しました。博士課程なので国内研究会に出して喜んでる場合ではないのですが、千里の道も一歩からということで。そのうち1本は国内の査読論文に投稿予定です。ただそれらに予想以上に時間をとられてしまい、昨年前半で切り上げるつもりが結局年末までかかってしまい、次のネタの進捗が思わしくないので、今年は昨年以上に気合入れて頑張ります。

制作

一昨年にABPro2014のために作った『自己主張するキーボード』を、日本テレビSENSORSにて紹介していただきました。ただ、関東ローカル番組なので、テレビ放送は見れなくて*2、親にも自慢できなかったのが少し残念です。

昨年は、これまたABPro2015のために『寝返りブロックくずし』をつくりました。本当は別の作りたいネタを用意してたのですが、開発時間が全く取れなかったため、やむを得ずすぐに実装できそうなこれを作ったのでした。そんな経緯で生まれたのですが予想以上にウケて、Mashup Award11 ではおばかアプリ賞を受賞し決勝進出しました。

状況的にも今年は研究最優先なので研究と無関係に制作に全力を注ぐのは難しいのですが、うまく研究と絡めて外にアピールできるような作品をつくっていけたらと思っています。Mashup Awardも優勝するまでやめられません!*3

ニコニコ学会β

昨年の第9回でシンポジウムはファイナルでした!ニコニコ学会βは僕の人生に多大に影響を与えたもので、これについては後日ブログを書いて詳しく振り返る予定ですが、待ちきれない方は 先日のマッドネス・マックスの登壇動画 をご覧ください。特に「野生の研究」についてはかなりいろいろ考えるところがあり、EC研究会やサイエンスアゴラで関連する発表もいくつかしました。また、後述するおうちハック同好会の活動にもつながっています。

International Space Apps Challenge (宇宙ハッカソン)

2012年の第1回より参加し、2013年にはPersonal Cosmoで優勝し、2014年からは東京の事務局長を務めていました。 昨年は、かねてからやりたいと思っていた「東京以外の日本の都市での開催」を実現でき、会津、福井、山口、肝付と東京の計5会場で開催することができました。今年は東京の事務局長を @ さんに引き継いだので、僕は東京に限らず日本の各会場を俯瞰的にサポートしたり、まだまだ日本の宇宙業界で知名度の低いSpaceAppsを宣伝していく活動に注力していければと思っています。

おうちハック

ソニーCSLの大和田さんがもともと継続していたスマートハウス関連の活動に相乗りする形で、2014年の8月に「おうちハック発表会」を開催。Facebookグループも「おうちハック同好会」に改名。「おうちハック同好会」は、“自分好みの暮らしは自分で作ろう”をコンセプトに、情報やツールを持ち寄って、自分らしい理想の住まいを追求している人たちの集まりです。

2015年は2月と6月におうちハック発表会開催と、8月にMaker Faire Tokyo出展、10月におうちハックナイトを開催しました。おうちハックナイトは、東京カルチャーカルチャーを会場にして開催。カルカルは、2013年の地図ナイトに参加して以来、ここで何かイベントやりたいとずっと思ってて、それが実現しました。集客には想定以上に苦戦して有料イベントの集客の難しさを感じ、その一方で「おうちハック」というテクノロジーネタがコンテンツになりうることの実感も得られました。当日はTogetter取材班が入り、公式まとめも作成していただきました。

また、Maker Faire出展にあたり、おうちハックTシャツをつくりたい!とおもってオリジナルグッズ(Design by 稲垣さん)をSUZURIで作ったり、2014年に引き続きおうちハックAdvent Calendarを実施しました。

あとは、TOKYO MXの朝の情報番組『モーニングCROSS』の「週刊アスモノ」というコーナーでおうちハックが特集され、おうちハックメンバーの石田さん宅への取材の様子が放送されました。

「おうちハック」という言葉を積極的に使い始めたのは僕らなのですが、この1年半でだいぶ浸透してきたようで、おうちハック同好会と関係ないところでおうちハックという単語を耳にする機会も増えました。

こうやって振り返ってみると結構イベントをやってるのですが、(少なくとも僕自身は)省エネ運営をモットーとしていて、いままでのイベント運営経験も活かしながらそれほど負荷なく活動できています。今年は、夏開催のMaker Faire Singaporeへの出展で海外進出できたらいいなーという野望を持っていますが、いままでと変わらずにゆるくできたらいいなと思います。

もともとおうちハック発表会をやりたいと思った理由は「おうちハック事例を見て楽しみたい」というのが大きいのですが、もうひとつ「実証実験住宅での期間限定の事例ではなく、実際に使っている生の事例を集め、その知見を未来のスマートハウスの創造に役立てたい」という理由もあります。だいぶ活動実績とおうちハック事例が集まってきたので、今年あたりに一度学会発表できればと思っています。最終目標はCHIです!

今年参加したイベント

ひとつひとつ振り返ってると全然終わらないので、今年参加したイベント一覧と、資料やブログへのリンク貼っておきます。これまとめるだけでも結構時間かかった。。。 一応これでも

  • 研究に関係あるもの
  • 北陸で開催されるもの
  • SpaceApps関連

に絞って参加、活動しています。若干例外ありますが。今年はさらに絞る予定。

運営関連

  • International Space Apps Challenge Tokyo 事務局長
  • おうちハック同好会幹事
  • ニコニコ学会β 運営委員
  • IPSJ-ONE企画・実施委員会

*1:もちろん自分たちでなんでもやるのは単価高くてパフォーマンス悪いのでできるだけ専門業者に委託するようなシステム化は進めてます

*2:Web配信で見た

*3:そういえばMA11の優勝の参式電子弓の安本さんもVR研究者ですし

2015年に読んだ本

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今年は18冊読んだようです

98冊(2010)→50冊(2011)→36冊(2012)→37冊(2013)→22冊(2014)→18冊(2015)と、年々減少。

公共交通機関での移動時間を読書にあてているのですが、今年から石川に引っ越したため、長距離移動は多いものの近距離移動はすべて車なので、読書時間はトータルで減ってる。あと、長距離移動のときは大抵朝早くて、移動中寝てることが多い。普段から早起き生活しよう。

今年読んだ本からオススメを6冊紹介します。

魔法の世紀

魔法の世紀

魔法の世紀

研究者・メディアアーティストの落合陽一( @ )さんの本。普段からいろいろ講演やテレビ出演されているが、「コンピューテーショナルフィールド」や「デジタルネイチャー」などについて、講演では話しきれないような深いところまで書かれているのでとても良かった。

角川インターネット講座14 コンピューターがネットと出会ったら

IoTの歴史を、主に研究的側面から知るのにとてもよい本。ちょうどこの本を読む前に、情報科学若手の会で「はじめてでもわかる!IoTの過去・現在・未来」という発表をするために自分でIoTの歴史について調べてたのだけど、この本に大体書いてあったので、もっと早く読んでいればよかった。

この本にかぎらず角川インターネット講座シリーズは大変良いので、来年は読破していきたい。

オープンサイエンス革命

オープンサイエンス革命

オープンサイエンス革命

2013年に出た本で、前々から読みたいと思いつつ読んでいなくて、サイエンスアゴラでのセッション「オープンサイエンス」に登壇するにあたって準備のためにようやく読んだのだが、とてもよかった。現時点でのオープンサイエンス事例が集約されてて、「野生の研究」について考える上でとても参考になる。もっと早く読めばよかった。

融けるデザイン

融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

明治大学の渡邊 恵太( @ )さんの本。VisualHaptics、CursorCamouflage、smoon、Integlass、LengthPrinte、CastOvenといった自身の研究成果を交えながら、考えをまとめている。インタラクションデザインに関わる研究者、エンジニア、デザイナーにオススメ。

コンテンツは民主化をめざす

明治大学の宮下 芳明( @ )先生の本。堅めのタイトル・装丁とは裏腹に、コンテンツ・メディアについて最新事例を交えて書かれていて、とても読みやすい。メディア、コンテンツに関する膨大な事例は、ただ列挙されているだけではなく、メディアとしてどのような役割を担ったのか(あるいはこれから担っていくのか)考察されているので、文脈としてとても濃い情報が得られる。音楽が好き、映像制作が好き、初音ミクが好き、プロジェクションマッピングが好き、3Dプリンタが好き、未来のツールを考えたり作ったりするのが好きという方にはオススメしたい本。特に、これらについてこれから本格的に研究してみたいという方には強くオススメしたい。

失敗から学ぶユーザインタフェース

明治大学の中村 聡史( @ )先生の本。BADUI(イケてないUI)を集め、ツッコミを入れたり、どうしてこうなったか解説している。とにかく収集量が膨大である。ページ数は多いが、写真が多いのでサクサク読める。これを読んだら、日常生活でBADUIを探したくなるはず。

あとは、来年1月発売予定の高須( @ )さん著 『メイカーズの生態系』を発売に先んじて読ませてもらったのだが、これも大変面白いのでオススメです!

書籍紹介『魔法の世紀』

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魔法の世紀

魔法の世紀

研究者・メディアアーティストの落合陽一( @ )さんの本。

普段からいろいろ講演やテレビ出演されているが、「コンピューテーショナルフィールド」や「デジタルネイチャー」などについて、講演では話しきれないような深いところまで書かれているのでとても良かった。

第1章ではコンピュータの歴史が、第2章ではメディアアートにおける文脈の変化がとてもよくまとまってて、ここだけでも読む価値がある。

メディアの歴史を壁画・彫刻から辿るなど、すべての文章が過去の歴史を踏まえて書かれているのでとてもわかりやすくてとても参考になる。

未来のテクノロジーに興味がある人にオススメで、特にコンピュータサイエンスに関わる大学生、大学院生にはぜひ読んで欲しい。