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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

clusterイベント(オンラインイベント)のメリットと肉体的安全性について #clusterVR

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またclusterの話でエントリ書きます。 前回 は司会進行の面の話を書きましたが、今回はイベントの運営・準備周りについて書きます。

品モノラジオの公開収録をclusterで開催しました。

clusterイベントのメリット

clusterで開催するイベントの準備がめちゃくちゃ楽で素晴らしいということを改めて感じられました。具体的には

  • 会場確保が不要
  • 懇親会準備が不要
  • 会場への移動が不要
    • 特に自分は石川県に住んでいてイベントは東京で開催することが多いので
  • 受付不要
  • 会場の映像・音響確認が不要
  • 会場設営が不要
  • 中継・アーカイブが簡単
  • 肉体的安全性(後述)が保証されている

などがあげられます。clusterに限らずオンライン開催イベント共通のメリットではありますが。

公開収録のトークの後、せっかく参加してくれた人がたくさんいたのでその後30分ぐらい懇親会っぽいこともやってみました。clusterはデフォルトでマイクを使って話せるのは登壇者だけなのですが、ゲスト招待機能を使えば来場者もマイクを使って会話できるので、残っていた人達を招待しました。音声は空間分割できないので、全員で同じ話題について話す感じにはなりますが。実際の懇親会でもたまにもそういう感じになる事があるんでそんなものかと。オンラインイベントで懇親会ができないという問題を解決する一つの方法かなと思いました 。

また、楽に開催できることで、イベント時間を短く設定できることもメリットであると思いました。物理的なイベントでは、時間かけて準備し、参加者も時間をかけて移動してきているので、短時間で終わるとオーバーヘッドコストの割合が大きくなってしまいます。clusterではそれらが大幅に削減できるので、30分や1時間程度のイベントでも特に問題なく開催できるように思います。移動不要な上にイベントが短時間になると、イベント参加の障壁は大きく下がると思われます。いままでは平日夜に参加できるイベントは1日1つでしたが、これからは19〜20時、20〜21時、21〜22時でそれぞれ別のイベントに参加するといったようなこともごく普通になるかもしれません。

肉体的安全性について

肉体的安全性という名前は勝手につけたのですが、最近よく話題にのぼる「心理的安全性」に対してのネーミングです。あまり表立って触れられないことではありますが、イベント準備でかなり大変なことの一つとしてトラブルへの対応があります。イベント界隈ではたまに話題になりますが、ある参加者が別の参加者にしつこくコンタクト取ったり、イベント外などでつながりを持とうとするなど、参加者が嫌な思いをすることがあります。それを防いだり対処したりすることもイベント運営者に求められます。しかも、これといった対策がないというのが現状です。

よくある対処法の一つがアンチハラスメントポリシーを掲げることで、これはある程度の抑止力になり効果は大きいと思いますが、それだけで完全に防ぐことはできないかと思っています。例えば「発表内容に問題がある場合にその発表を直ちに中止」というポリシーがあったとして、実際に誰が判定するのか、その判定は中立なのか、判定に誤りはないのか。などなど、完全に防ぐには運用まで落とし込む必要があり、なおかつ有志イベントでそこまで労力を割くのはあまり現実的ではないと感じます。

他には、要注意人物のブラックリストを作ってイベント間で共有して参加禁止にすることもよく提案されますが、これも実際に運用するのはなかなか難しいように思います。 そのイベントの過去にトラブルを起こしたことを理由に参加禁止にするのであれば筋が通りますが、他のイベントでのトラブルを理由に参加禁止にするというのは、これも運用が難しいように感じます。少なくともそのトラブルの詳細情報を共有しておいて貰う必要がありますし、誰が伝えるのか、スタッフの安全は確保できるのかなどの問題もあります。

もっとエスカレートしたトラブル、たとえば直接身体を触ったり暴力が起こることも可能性としてはなくはないです。これくらいの話になってくると、イベント運営というよりは警備に近いかもしれません。その辺諸々を開催者がフォローするコストというのは非常に大きく、特に心理的にかなり負担になります。

オンラインのイベントであれば、近づかれたり触られたり殴られたりしないので、トラブルはグッと減ります。そもそも、clusterの場合はアバターで参加するため、性別や外見が知られないので、それだけでもトラブル回避の効果は大きいです。また、現状のclusterの実装ではイベント時の1対1コミュニケーションが取りにくく、それが機能的には改善点ではあるものの、トラブル回避の面ではメリットでもあるように思いました。

トラブルは肉体的ではないものもかなり多いので、肉体的安全性だけでトラブルの全てが回避できるとは思いませんが、それでもかなりの多くのトラブルが回避できるのではないかなと思います。

一方で、肉体的安全性が確保されていることは、別のトラブルを招く可能性はあります。Twitterの匿名アカウントが攻撃的な発言をすることが問題になりますが、これは肉体的安全性が確保されていることによって起こるトラブルです。物理世界では、相手を怒らせると物理的な攻撃で仕返しされる可能性があり、これが抑止力になりますが、オンラインではこれがないので、歯止めがきかなくなります。

昨今、オフラインイベントが軒並み中止となり、オンラインイベントへの切り替えも増えていて、それにともなってオンラインイベントの良さや限界も見え始めています。オンラインとオフライン、どちらもそれぞれメリット・デメリットがあるので、目的や状況に合わせて形態を選択するのがよいでしょう。これからすべてイベントをオンラインにする必要はありませんが、いままではオンラインの技術が整っているのも関わらずあまりにオフラインに偏りすぎていたので、それを是正する良い機会だと捉えてます。

追記

2020/04/19に開催された ニコニコ学会βの逆襲 にて肉体的安全性の話をしました。