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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

ヒーローズリーグ2020で個人スポンサーとして湯村賞を授与しました #ヒーローズリーグ

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本エントリは MAヒーローズ・リーグ Advent Calendar 2020 - Qiita20日目です(だいぶ過ぎましたが!)

ヒーローズリーグ2020で個人スポンサーとして湯村賞を授与しました。個人スポンサーになると(スポンサー費¥10,000)、賞を出すことができるという制度になっています。

2020年のヒーローズリーグは全てオンラインで開催され、148作品が応募され、ProtoPedia に動画と解説が投稿されました。

湯村賞は以下のように定義し、ヒーローズリーグ開始時に動画で説明しました。

私の個人賞は、誰も気づかなかったような着眼点を持ち、未来を変えるポテンシャルがある作品に授与したいと思います。面白い作品というのは、今すぐ役立つものとは限らないんですけれど、5年後だったり10年後だったり、もしかしたら50年後に、そういえばあの時こういう作品があったよね、それが実現してるよね、ということがあるかもしれません。そのような可能性を感じさせるような作品を選びたいと思います。

選考の結果、Future Flicking Keyboard(FFKB)に湯村賞を授与しました。FFKBについては受賞式で簡単にコメントさせて頂きましたが、それ以外にも言及したい作品がたくさんあったので、このような記事を書くことにしました。

Future Flicking Keyboard

いま私たちがコンピュータを操作するために使っているキーボードは、元をたどると1874年に販売されたQWERTY配列のタイプライター です。もう150年くらい前に考案されたインタフェースをずっと使い続けているわけです。コンピューター自体は小型化も進み、インタフェースの形状の制約はすでにあまりなくなっているはずなのですが、いままで使ってきたインタフェースへの慣れによって、いまだに使われ続けています。

現在の入出力インタフェースは慣例や作りやすさが優先され、使う人間が体を無理やり合わせています。その結果、肩こり、腰痛、腱鞘炎などの症状を起こしています。分割キーボードのように、エルゴノミクス(人間工学)を考慮したデバイスも増えていますが、まだ既存のキーボードの延長線といったところで、もっと人間側に寄ってよいはずです。腕を机に載せずにどのような姿勢でもキーボード入力ができれば、例えば腕を下にだらんと垂らした状態で体に負荷をかけずにキー入力できます。

すでにスマートフォンとPCの一番大きな違いはスペックではなくインタフェースとなってきていたり、これからHoloLensのようなメガネ型ディスプレイの普及が進むなど、今後コンピュータに置いて入出力インターフェースがさらに重要視されていくはずで、この先10〜20年くらいで人間フレンドリーなインタフェースが続々と出てくるんじゃないかな、というのを以前から考えていました。

Future Flicking Keyboardはまさにそれを体現するような作品だと思い、湯村賞を授与しました。NAISTの大学院生とのことなので、HCI研究としての発展も期待しています。

29時間時計

時間の概念を変えたというのがいいなと思った作品です。しかもその方法がシンプルで、でも今まで思いつかなかったすごい発想だなと思いました

いま、いろんなイベントがオンラインで開催されることによって、物理的な制約が排除されました。例えば、海外の学会にすごく参加しやすくなったのですが、その一方で時差のせいで欧米で開催される学会に日本の真夜中に参加しなきゃいけないことがあります。せっかくリモートで参加できるのになぜ真夜中に起きてなくちゃいけないんだろう。という経験から、時間の扱いもこれから変わっていくのではないかと言う気がしています。居る場所は重要じゃないけどどのタイムゾーンで生活するかが重要になり、居住地に関わらずタイムゾーンを自分で選ぶような風になっていくのかなとか考えたりしていました。

時間の概念ができたのは人類の歴史から見ると最近で、例えば グリニッジ標準時が全世界で使われるようになったのは19世紀〜20世紀初期 です。なので、あと50年とか100年くらいすると、時間の概念はまたかわっているかもしれません。例えば、全世界の人がUTCで暮らすとか。などなどいろんなことを考えさせられる作品でした

即物的な利用方法としては、海外旅行前や海外オンライン会議のための時差調整に使えるなと思いました。

PCAPバトラー

ネットワークが専門分野のひとつなので、パケットキャプチャをどうやって面白くするかというのはよく考えて(この手の既存作品だと例えば光るLANケーブルがありました)いるのですが、pcapをゲームにするっていう発想はいままでまったく思いつかなかったし、ゲームと動画の完成度も高かったです。バーコードバトラーを知っているとすぐに面白さが理解できると思うのですが、これは世代によりそうな気がしますね。

冒頭で書いた湯村賞の基準からするとちょっと違うかなと思い授与対象からは外したのですが、自分の中の盛り上がりはこの作品が一番でした。大学の授業にも使えると思ったので、機会があれば活用させていただきたいと思います。(なのでサービス稼働し続けてほしいな・・・)

リモートdeキー暴動?

リモートdeキー暴動? | ProtoPedia

作品が面白いことに加え、私が以前からよく展示しているプロジェクションマッピングキーボードと相性が良い作品だなと思いました。これは湯村賞を授与すべき作品では、という気持ちがけっこうあったのですが、最終的には最初に決めた基準を重視し、そこからは少し外れると思い授与対象から外しました。

X(r/n)os

X(r/n)os | ProtoPedia

これはとにかく動画を見てください。めちゃくちゃかっこいいです。7セグ表示を物理的に制御するもので、そういう作品はいままでもいくつか見たことはありましたが、アクリル片をステッピングモーターで昇降させるという発想はなかった。

Glowing Air-Bubble Clock

これも動画を見てください。めちゃくちゃかっこいいです。京都駅のみやこみちにある 水が落ちるアート がすごく好きで、そういう作品つくれないかなーとよく考えてました。このGlowing Air-Bubble Clockは、液体を使うところはみやこみちと同じなのですが、泡という液体のない部分を表示部に使っていました。逆転の発想に(勝手に)感じ、面白かったです。あと、27年前に構想していたやつを年月を超えて実現したというストーリーもよかったです。

x10

これ面白かった。TENETが元ネタだそうで、私はTENET見てませんが楽しめました。Webアプリになっていてすぐに試せるのも良かったです。ぜひやってみてください。百聞は一体験に如かず。

おわりに

選ぶだけならすぐ決められるかなと思ったのですが、動画見るのも、そこから選ぶのも予想以上に大変でした。面白い作品がとても多く、賞を選ぶとなると見るのも真剣になるので、個人スポンサーになってよかったと思いました。

作品について一言コメントをつけてツイートしていたのをまとめたのと、品モノラジオでもヒーローズリーグを振り返っていくつかの作品について紹介させていただいたので、こちらもぜひ。