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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

社会人博士課程に入学したら研究時間を確保できるのか?

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先日、@hrjn さんのこのようなFacebook投稿を見ました。(「もっと見る」から全文読めます)

この前半部分は起業したい人の話ですけど、社会人博士の入学を検討している人にも同じ話だなあと思って読みました。社会人博士の入学について相談を受けることがたまにありまして、研究時間が確保できるなら入学すればいいんじゃないかなと思っています。自分が研究時間を確保できるのかどうかというのはなかなか客観的に判断しにくいかもしれませんが、この話は具体的なのでイメージしやすいのかなと思いました。

人間は何かきっかけがないとなかなか変われないものなので、大学院入学を生活を変えるきっかけにするというのはそれはそれでよいと思います。ただ、入学したからといって、1日が36時間に増えるわけではないので、研究時間を確保するためには何かをやめないといけないというのは意識しておくのがよいでしょう。

大学院に入学するだけでもリスク(時間やお金が無駄になる可能性)があるので、入学せずともできることをしばらくやってみて、ベンチマークしてみると良いと思います。分野依存はあると思いますが、論文読んだり調べたり、プロトタイプを作ったり、オープンデータを解析したり、解析用プログラムを書いてみたり、いろいろできることはあると思います。これも先ほどの起業の話と共通ですね。

どのくらいの時間が必要?

社会人博士入学後、具体的にどれくらいの時間が必要かというのは、 @mamoruk さんの 博士号取るのはかなり長期戦 - 武蔵野日記 に書いてます

博士号が取りたいと考えている人、どういう形で受け入れるのがいいのか、ということが少しずつ分かってきた。経験不足・力不足で申し訳ない。

結局どれくらい時間を確保できるかという問題に帰着するのだが、ざっくり言うと300-500時間で国際会議の論文1本、そこからさらに100-200時間で論文誌、みたいな感じなので、博士後期課程に入る前の研究で博士論文に組み込むことができる業績がある(論文誌掲載済み)なら最短500時間くらいでいいのだが、そうではない場合は短くても1000時間(論文誌2本分に相当)、標準的には1500時間必要であり、課程博士の人や社会人博士の人でも仕事で論文の読み書き(書けなくてもせめて論文読み)のできる人は良いのだが、そうでない場合は毎週末土日で5時間ずつ10時間もしくは平日毎日2時間ずつ5日間確保して10時間でも2-3年かかるので、かなり根気がないと難しい。しかもこの時代は時間をかけると陳腐化してしまう研究ネタも多く、論文を書くなら短期決戦で取ったほうがいい時代なので、難しさに拍車をかけている。(ちなみに本学の博士後期課程では論文博士以外は学生の期間に指導教員との共著の論文が最低1本必要)

退職D進?

働きながら研究する時間がなければ、退職D進という道もあるっちゃあります。

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昨年、情報科学若手の会で話したスライドです(私の所属などは昨年の古い情報です)