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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

バーチャルイベント空間clusterで学会パネルディスカッションの司会をしてみた #clusterVR #IPSJ先生質問です

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バーチャルイベント空間clusterで「情報処理学会全国大会「先生質問です!」公開セッション」というパネルディスカッション形式のセッションの司会をしました。これが想像してた5倍ぐらい楽しかったし、いろんな知見が得られたので、思ったことを残しておきます。clusterのイベント作成や接続確認、配信周りはすべて @yunoLv3 さんが担当してくれたので(ありがとうございます!)、主に司会・進行周りの話を書きます。

YouTube Liveの配信アーカイブも見れます。

セッション自体の内容については書かないので、↑のアーカイブを見て頂くか、アカリクさんが速攻で書いてくれたnoteをご覧ください。

cluster

clusterは、バーチャル空間でイベントを開催するためのプラットフォームサービスです。参加者はアバターをアップロードしてそのアバターを身にまとってバーチャル空間でのイベントに参加することができます。

MacWindowsのPC用クライアントをインストールすれば参加できますし、つい一昨日にスマートフォン用クライアントもリリースされたので、スマートフォンでも参加することができます。ずっと使ってるとスマホが熱くなりますが。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使って参加することもできますが、おそらく多くの人がPCを使ってるのではないかなと思います。

「先生質問です!」公開セッション

まず、情報処理学会の学会誌で連載している 「先生,質問です!」 というコーナーがあります。このコーナーは高校生や大学生などの若い学生さん等を中心に質問を投稿してもらい、その回答を大学の先生等の研究者にしてもらうコーナーです。これのオフライン版イベントとして、パネリストが過去の質問や聴講者の質問に答えるセッションを、情報処理学会全国大会の企画セッションとして開催するはずでした。ですが、新型コロナウイルスの影響で全国大会の現地開催は中止になり、全国大会自体の一般セッションはZoomでオンライ開催となりましたが、このセッションはZoomではなくてclusterを使ってやることにしました。

パネルディスカッションのcluster開催

通常のプレゼンテーション形式で進めるイベントであれば、スライドを見せながら話すという形になるので、物理空間で開催するイベントとそれほど変わらないかなと思います。しかしこのセッションはパネルディスカッション形式で、しかも登壇者も凄く多く全部で10名のパネリストがいるセッションなので、この辺でも他のイベントとは違う知見が得られたところかなと思います。

パネルディスカッションでは、テーマを用意してそのテーマに基づいてパネリストには回答してもらうという形になります。その時に誰に回答してもらうかはパネリストが挙手などで立候補する場合もあれば、司会で指名する場合もあります。司会が指名する場合には、表情などの様子を見ながら指名するかと思いますが、clusterの場合は表情が見えないためなかなかそれができないことがリハーサルを通じてわかりました。解決策として、clusterのリアクション機能を用いることにしました。回答したい際には「!」(ビックリマーク)を使うことにしました。これは司会としては進めやすくてとてもとよかったです。お客さんにもわかりやすかったのではないかと思います。個人的にはFF5を思い出しました。

パネルディスカッションのテーマはあらかじめいくつか用意し、それに加えて会場から投稿してもらうことにしました。物理開催イベントでもsli.do等がよく使われていると思いますし、これは元々のセッションでやる予定でした。cluster開催になったので、clusterでのコメントとYouTube Liveのコメントを拾うようにしました。

やってみて良かったところ

まず、お客さんのリアクションがすごくよく分かることがとても良かったと感じました。 物理開催だと大体みんなじっと座ってるだけで、笑うか拍手するぐらいしかリアクションがありませんが、clusterではいいねを出したり拍手したりニコちゃんマーク出したりサイリウムを振ることができたりるので、物理開催イベントよりもむしろフィードバックがたくさんある用に感じました。clusterでは静止時にアバターがゆらゆら動くようになっているので、リアクションがない時もそれほど寂しさも飽きも感じませんでした。

clusterではじっと静止して聞いている必要はなくて、うろうろ歩き回って遊んだりすることもできるので、動きがあって良かったかなと思います。登壇者もお客さんのところに走って行ったりできるので、常に飽きずに楽しめます。物理開催イベントでは、知り合いを見つけても話しかけるタイミングがないですが、clusterでは講演最中でも近くに行って存在を認知してもらうことができます。

アバターもいろんなのがいて、鳥や実写アバターや巨大稲見先生がいて、壇上がカオスでシュールで、そういうのが個人的にはすごく良かったなと思います。

その他、場所の制約がなかったり、家事をしながら見られるなどのメリットもありますが、その辺はZoom等を使った他のオンライン開催と同じかと思います。

難しかったところ

今回は、2日前にリハーサルを行い、そこで音声や通信の確認をしました。パネリストのが人数がすごく多く、全員集まってリハーサルすることができず、一部の方は別の時間に個別に接続してのリハーサルとなりました。なるべく全員揃って、かつ当日と同じ環境でリハーサルするというのが望ましいかなと思います

「!」を出した登壇者を指名する形式にしたのですが、立ち位置によって「!」が他の人とかぶって見づらかったりしました。これは、リハーサルの時点で立ち位置を決めておけばよかったかなと思います。

司会としては、パネルセッションなのでパネリストの方を見ながら様子をうかがっていましたが、一方でお客さんのリアクションも気にしなきゃいけなかったんで視野を頻繁に切り替えないといけなかったというところが難しかったです。両方見渡せるような立ち位置を確保した方が良かったかもしれません。

会場から質問を拾った際に、そのテーマをスクリーンに映すことをやろうとしていました。clusterでは、Zoom等のビデオ会議ツールにある画面共有の機能はなく、スクリーンに映すためには画像か動画かPDFのファイルをアップロードする必要があります。なので、あらかじめテンプレートのスライドを手元に用意しておいて、質問を受けた時に記入してスクリーンショットを撮って即clusterにアップロードして表示するというオペレーションを考えてました。ですが、質問のペースが結構早く、一回だけやってみましたが追いつかないなと思って途中で諦めました。司会とは別の人がスライド表示担当を担うと上手く回るかなと思います。clusterの機能として画面共有か任意のテキストをすぐ表示できる機能はぜひ実装して欲しいところです。

要望

clusterに以下の機能があると、イベントを進行するにあたってとても嬉しいです。

  • PCの画面をスクリーンに表示(いわゆる画面共有)
  • 任意のテキストをスクリーンに表示
  • コメントを遡って全部閲覧する機能(とりいそぎスタッフだけでも)
  • イベント終了後に参加者リスト閲覧したいです

まとめ

2017年にclusterがリリースされた時、「これはいつか『学会はこれでいいじゃん』となる日が来るな」と思ってました。それにちょっと近づいたかなと思います。clusterは今はまだバーチャルリアリティ系に興味ある人の界隈でしか使われてない感じもしますが、とても良いプラットフォームなので使われないのはもったいないと思っています。昨今こういう形でのリモートイベントがすごい増えてきたので、もっと流行るといいなと思っています 。ZoomやWebExなどリモート会議支援ツールの多くはUSの会社のものですが、clusterは日本初のスタートアップですし。

物理開催イベントにもいろんなノウハウがあってその経験はわりとある方だと思いますし、Podcastのオンライン収録も長年やっていますが、clusterのようなオンライン開催イベントにはそれらとは違うまた別のノウハウがありますね。cluster使ったイベントはまたどこかで開催したいと思っています。自分がすぐに気軽に主催できそうなイベントだと、品モノラジオ公開収録や、おうちハックIoTLTあたりですかね。

おまけ:収録環境

clusterをはじめとしたオンラインイベントで話す機会が多い場合、少しだけ音声機材に気を使うことをおすすめします。私も 品モノラジオ 用に環境を整えました。USB接続できるダイナミックマイクを、机に固定したアームに挿して使ってます。なお、Podcast界隈にはマイク沼という沼があります。

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