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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

プラズマ屋さんの就職先

地球惑星科学専攻の就職

私は、3年ほど前まで、地球惑星科学専攻という専攻に所属し、宇宙プラズマという学問を学んできた。就職のとき、よく聞くのが

 「地惑(地球惑星科学専攻の略)って、就職ないよね」

という話。そして、周りがどういう就職先を選択していくかというと

  • IT系(ざっくり)

どの分野でも、研究を進めていく上でコンピュータは欠かすことのできないものである。学生の時の経験を活かすために、IT系という選択肢は悪くないように思える。ただ、このIT系という選択肢を選ぶ人が、あまりにも多い。本当に多い。他でもない私自身も、IT系でくくられる職種に就職した。(まあ、世の中の仕事が、IT系という枠でくくることのできるものが多くなっているというのもあるだろうが。)


しかし、専門分野の研究でせっかく身につけた専門性を自覚せずに進路を決めるのは、非常にもったいない気がする。本当にIT系がベストな選択肢なのだろうか。

プラズマは何の役に立つ?

さて、自分の場合、研究として宇宙プラズマのシミュレーションをやっていた。就活の最中、これがどういう仕事に役立つだろうと考えたとき、IT系の他に、車体設計などの流体シミュレーション関連や宇宙関連で人工衛星やその運用システムの設計くらいしか思い浮かばなかった。


しかし、就職してから周りを見渡すと、就活の時には何の役にも立たないと思っていたプラズマを学んだ経験が、実は非常に多くの分野で役立つということに気づいた。

  • 電子機器における電磁界設計
  • 半導体製造プロセス改善、製造装置設計
  • 原子力発電装置設計
  • レーザー装置設計

他にも役立つ分野はまだまだあるはず。これらは、就活の時には思いもしなかったものばかりだ。


ここでは宇宙プラズマの研究が「プラズマ」がキーとなって関連分野を発見した、という例として挙げた。どの分野の研究でも、専門性を活かせる産業分野がきっとあるはずである。

専門性が活かせる分野の調べ方

自分の専門性はどのような分野で活かせるのか。最も手っ取り早い調べ方は、人に聞くこと。先輩や企業のリクルーターをつかまえられる機会があれば、話を聞いてみるのがいいと思う。とはいえ、的確なアドバイスができる人が必ずしも周りにいるとは限らない。


そこで個人的にお勧めの方法は、学会をチェックすること。自分の専門に関連しそうな分野の学会の予稿を眺めて、どういう研究分野があるのか、どういう企業が参加しているのかを調べる。


これは普段から企業が参加するような学会に参加している人達にとっては極めて当たり前なのかもしれないが、分野によって(特に理学系)は企業が参加しない学会が普通だったりするので。


宇宙プラズマ分野の研究者の場合、

という学会に所属し活動することが多いが、これらの学会には、企業はほとんど参加しない。
関連する分野の学会としては

などがあり、これらの学会を調べるとよい。
というか、調べればよかった > 就活時の自分 orz。


もっと気軽に調べるなら、「プラズマ」みたいなキーワードで Amazon で検索したり、Wikipediaを眺めるのもいい。


最後に

ここまで、学生時の専門を活かして就職先を探す方法を書いてきたが、自分の専門を学生の時と違う分野に進むことを反対しているわけではない。むしろ、異なる専門での経験は大きなメリットであり、違う分野へのチャレンジはどんどんしていったほうがいいと思う。ただ、その時に「学生の時の研究が役に立たないから、仕方無く。。」というネガティブな思考を持っていても、いいことは何も無い。どういう分野に進むにせよ、数ある選択肢の中から自分でその分野を選んで進むんだという意思を持つことが大切だと思う。

追記

物理系でシミュレーション携わってた人は、コンピュータグラフィクス業界の研究開発職が超絶おすすめです。複雑な物理現象をどうやって省リソースで再現するかという話なので。SIGGRAPHという国際会議などで動画や論文がたくさん出てます。