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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

東大博士が語る理系という生き方


東大博士が語る理系という生き方 (PHPサイエンス・ワールド新書)

東大博士が語る理系という生き方 (PHPサイエンス・ワールド新書)


東大博士課程卒or在学中の8人が、自身の研究内容や東大に入った経緯などを紹介する。


巻頭にある監修者2人の対談で、

なんでその道を選んだのかを聞くのではなく、いまの研究テーマにはまり込んだ具体的な理由を探るようにしています。

とあるように、研究テーマを選んだ経緯がとても具体的に書かれているのが本書の特徴であると感じた。研究キャリアに関する他の本では、どうやって研究を進めていったかに主眼が置かれているように感じられ、研究テーマを選んだきっかけは省略されていることが多い。一見どうでもいいような、でも個人的にはすごく気になるところが書かれていて、非常に興味深かった。


また、同じく巻頭の対談で

高校生ぐらいの段階で過度な固定的な夢を持っている人は、私からすると窮屈でちょっと気持ちが悪い。そもそもサイエンスはたえず進歩する業界だから、自分がプロとして飛び込む頃には、高校生の頃の状況とは変わっているはずですし。

とある。この言葉は、とても本質を突いているように感じる。自分が何に興味が有るのかなんて、簡単にわかるものではない。進路なんてささいなことがきっかけで決まってしまうこともある。それに、人生を大きく左右する(かもしれない)決定を高校生に課すのはなかなか重いのではないだろうか。


東大には、大学2年の終わりに進む学部を決める進振り制度という制度がある。この制度のおかげで、大学受験を終えてからの2年間を使って情報を収集し、進みたい学部を考えることができる。本書ではこの制度に対して賛成の意見が多かった。


全体的に、文章が短くまとまっているのでとても読みやすい。自分と同年代の人が多いため、大学や教育制度に対する問題意識が近いのかもしれない。これから大学受験、大学院受験する学生や、博士課程の学生には本当にお勧めしたい本。