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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

論文紹介『Changing the Appearance of Physical Interfaces Through Controlled Transparency』

はじめに

本エントリは ヒューマンコンピュータインタラクション論文紹介 Advent Calendar 2016 の2日目です。Advent Calendarとは、12月1日〜25日まで1日ずつ担当を決めてみんなでblog記事を書いていく企画です。ITエンジニアの間ではもうだいぶお馴染みの年末の習慣です。本日紹介するのはUIST2016で発表された『Changing the Appearance of Physical Interfaces Through Controlled Transparency』

論文はこちら

研究紹介動画はこちら

ショート(30秒)

ロング(7分16秒)

概要

  • 透過度の変化で表現する新しいフィジカルインタフェース
  • PDLC: Polymer Dispersed Liquid Crystal (高分子分散型液晶) + ITO(酸化スズインジウム) を使用
  • これに電圧を印加すると透過になる
  • この素材をレーザーカットして立体にする
  • オブジェクトの展開図をつくると、レーザーカット用の設計図(辺をジグザグにして辺同士を結合可能とし、折り曲げ部を曲げ可能な処理を行う)に変換するソフトウェアを作成した
  • 配線は自動では行わない
  • 応用事例として、インジケーター、虫型アバター、ランプシェードの3つを紹介
  • (アクチュエータを有する)動的物理インタフェースよりも「変化が早い」「省電力」「部品消耗が少ない」「既存オブジェクトにかぶせることも可能」
  • 動的物理インタフェースの補完となる位置付け

どこに注目したか

先行研究として引用されているSquamaのように、透過度の変化を用いて物理空間内の物体を変化させる。Squamaの場合は2次元平面の事例だったが、この研究では展開図の組み立てによって3次元化した。inFORMなど、さまざまなフィジカルインタフェースが研究されているが、この研究もその一つを担う。

おわりに

Advent Calendarの登録者が全然いないので、みんな登録して!!!!

東京デザインウィークの火災事故と、展示イベントを運営する際のリスクについて

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ニュース等で報じられて多くの方がご存知の通り、TOKYO DESIGN WEEKというアート展示イベントで火災死亡事故が起こりました。亡くなったお子さんのご冥福をお祈りします。

展示とリスク

この事故にはとても大きなショックを受けました。丸一日経ったいまでも頭から離れず、むしろ時間とともにことの重大さが身に染みてきます。2013年のTDWでは出展者として展示し、展示物調整のために会期の10日間毎日会場に通っていたことも、深く考えさせられる大きな要因となっています。僕は、普段からものづくり関連のイベントに出展することが多く、時にはイベントを主催することもあります。いままでのイベントを振り返ってみて、本当に安全を徹底して展示を行っていたかと問われると、そうといい切る自信はありません。一歩間違えば事故につながっていたという可能性はどこにでもあったと思います。今回起こった火災は、火気を使わなくても電気を使う展示であれば起こりうることですし、火災以外にも、頭上からものが落下する可能性や、コードが首に絡まって窒息する可能性など、展示には本当に多くのリスクが潜んでいます。

いまやるべきこと

ネットでは、イベント主催者、展示制作者、展示制作した大学の教員へ批判が向けられています。情報が明らかにされていない現段階で憶測で言及するのは好ましくないですが、現時点でもいくらかの不備があったであろうことは見て取れます。しかし、無責任な立場から一方的に批判している様子を見るととてもつらく、腹立たしくさえ感じています。それと同時に、僕がその人達に腹を立てることも、批判することと同様に無意味なことだと思います。いまできることは、今後、このような事故の発生を減らし、被害を最小限に抑えることです。「事故を二度と起こさない」と書きたいところですが、完璧な安全対策はありません。できる限りの準備をした上で、常に危険やリスクを意識することが、最大限の安全対策だと思います。

展示イベント運営の安全管理

イベント主催者を擁護するわけではありませんが、運営という立場での安全管理は本当に難しく、それゆえ徹底しないといけないと感じます。自分で作ったものであれば、使われている材料や作品の特徴からリスクを把握しやすいですが、膨大な数の出展物のすべての安全性を確認するのは、ただでさえ慌ただしいイベント運営において相当な労力を費やします。イベント全体で安全性を確保するには、出展者個人の資質や経験のみに依存するのではなく、仕組みとしてリスクを排除することが必要です。そのためには、ルールを定め、周知し、そのルールが守られているかチェックすることになりますが、虚偽の報告をされた場合にはそのリスクを漏れなく見つけるのは非常に困難でしょう。

Maker Faire Tokyoでの安全管理

ここまで書いて思い浮かぶのが、Maker Faire Tokyoというイベントのことです。会場となっている東京ビッグサイトにて「東京都火災予防条例上の禁止行為」が適用されていることもあり、「使用する布は全て防炎加工マークが必要」「リチウムイオンバッテリーの使用に承認が必要」など、とても細かくルールが定められていました。Maker Faire Tokyoには出展者として毎年参加しておりましたが、これらのルールは正直に言うと面倒に思っていました。しかし今となっては、事故が起こらないよう徹底した結果であり、きちんと運営して頂いていたことに本当に頭が下がる思いです。

これからの展示イベント

よくイベントを主催している人達にとって、今回の事故を目の当たりにし、改めて展示イベントを行う危険性について認識することになったと思います。僕はいま、怖くてイベントを主催するという気持ちにはまったくなれません。しかし、楽しい気持ちにさせてくれる展示イベントが今後一切開催されないという未来は、とても寂しいです。今後また今まで以上に盛んに展示イベントが開催されていくには、何が必要で、どうやったらリスクを減らせるのか、これからずっと考えていきたいと思っています。

博士取得のタイムリミットまであと3年になりました

f:id:yumu19:20160927080609j:plain 2016年9月の最終日になりました。2010年10月に入学した大学院博士課程の社会人コースは、元々の修了予定は2016年9月(在学年限6年)でしたが、ご存知の通りまだ修了できてません。入学したときは2016年なんてまだずっと先のことだと思ってたのに、いつの間にか来てましたね。休学と単位取得退学を使った本当のリミットが2019年9月なので、残りあと3年です。

東京にいたときの4年間は、授業を履修した以外はほとんど研究できずに過ごしてました。転職したりフリーになったり会社立ち上げて畳んだりしてたからなので、自業自得なんですが。研究以外の面ではとても有意義な期間だったことに違いはないのですが、研究的には空白期間になってます。仕事と両立できないと思ったら、仕事を辞めるか大学を辞めるかすぐに決断したほうが良いのかもしれませんね。

石川に来てからやっと社会人博士らしい生活になったものの、いまだにグダグダな状態なので、気持ち的には一旦辞めて仕切り直したいくらいなのですが、入り直したとしたら修了まで短くても3年程度はかかるわけで、授業とか取り直すのもしんどいし、それならちょうど博士課程の標準年限と同じである残された3年を使ってきちんと修了するのがいいですよね。てことで、今日から入学し直したつもりでがんばります。ここまできたらやるしかないんで、やっていく気持ち。

これはなんなんだ。ポエムか。あとで黒歴史化しそうだけど、こういう感覚は後になったら忘れてしまうので書き残しておく。

こういう時に読んでやる気と元気を出すエントリ

年収800万円以下でも寿司が止まって見える装置をABPro2016で発表した #ABPro

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今年も明治大学宮下研究室主催のABProに参加しました。

自作の「普通じゃないプログラム作品」を発表しあう会,それがABProです. ぼくらが目指すのは, 人を驚かせ,笑わせ,幸せにするようなプログラムです.

5年連続5回目の参加です。

発表概要

今年は「年収800万円以下でも寿司が止まって見える装置」をつくりました。

元ネタのこのツイート*1

が好きすぎて、年収が低くても寿司を止めたいと思い、製作に至りました。本当は昨年作るはずだったのですが、時間無くてつくれなかったので、1年越しの実現。↓昨年のABPro2015直後のツイート

「作りたい!」「作ったら絶対面白い!」という思いに基づいて作ったので、「人を驚かせ,笑わせ,幸せにする」というABProのコンセプトに沿った発表ができたかなと思います。発表中のツイートを見返すと、たいへん楽しんでもらえたようでよかったです。発表後はすごい充実感でした。

ハイコンテキストなネタなので、Mashup Awardとかで賞をとるのも難しいかなと思いますが、全然気にしてません。

発表紹介

個人的に面白かった発表をいくつか紹介します。他の発表も全部面白かったので、完全に独断と偏見です。

Making Film

宮下研M2の若林(@)くんの発表。Processingとイラレを使って35mmフィルムのネガをつくって、暗室で実際に現像。新しい技術を使って古い技術を再現するコンセプトがよかった。

それの元になった、宮下研M1の秋山(@)くんの8mmフィルム動画自作もいい!

http://gutugutu3030.xyz/contents/8mmFilm/index.html

いぬけいさんき

現象数理学科B2のりゅうふじわら(@)さんの発表。逆ポーランド記法で数式を送ると答えを返してくれるbot。リーマンゼータ関数も解ける。自分が犬の国から来たという設定のプレゼン(そしてその設定をちょいちょい忘れる)がめっちゃ面白かった。

夢に向かって

宮下研M1の秋山(@)くんの発表。Fate(アニメ)の剣で剣を叩き落とすシーンを再現するために剣発射装置をつくった。あんまりうまくいってなかったけど動画が面白くてさすがという感じだった。

http://gutugutu3030.xyz/contents/Gilgamesh/index.html

RESTfulに蚊を殺す技術

FULLERのルータ芸人 末田(@)くんの発表。走るルータの話をするのかと思ったら蚊取り線香の話を聞いてた。ルータをつかって電気蚊取り線香を制御。ルータ(と蚊取り線香)ハックのレベル高くて技術の無駄遣い感がすごくよかった。

トロンボーン

spiceboxのやまざきはるき(@)さんの発表。トロンボーンに超音波距離センサーをつけてゲームのコントローラーにし、デモでドルアーガの塔をプレイ。ちょっと演奏してるっぽく見えるのが面白かった。

Bad Apple Curve!!

カヤックの岩淵(@)さんの発表。全てフーリエ記述子でBadAppleの動画を再現。デモサイトでは次数をリアルタイムに変更できてすごい!

ABPro感想

気のせいかもしれませんが、会場を見た感じ、来場者数が増えた気がします。発表者数も、飛び入りを含めると昨年よりも多かったのでは。宮下研の研究室イベントなので、あまり外の人が多くなりすぎるのはどうなんだろうというのは少し気にかかってたのですが、宮下先生が

と言ってるので、来年も全力で招待したいと思います!今年は Facebookイベント が立っていたので、いろんな人を招待しやすかったです。ぜひ来年もお願いします。

あと、懇親会でデモできるとよさそう。

発表者の人達に伝えたいのは、せっかく面白いものをつくったので、Mashup Awardなどのコンテストに出すといいと思うよ!

今年も本当に楽しませて頂きました。準備・運営してくれた宮下研の皆さんありがとうございました!

*1:これが初出かどうかはわかりませんが。先に2chで出た?