yumulog

北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

東京デザインウィークの火災事故と、展示イベントを運営する際のリスクについて

f:id:yumu19:20161107221631j:plain

ニュース等で報じられて多くの方がご存知の通り、TOKYO DESIGN WEEKというアート展示イベントで火災死亡事故が起こりました。亡くなったお子さんのご冥福をお祈りします。

展示とリスク

この事故にはとても大きなショックを受けました。丸一日経ったいまでも頭から離れず、むしろ時間とともにことの重大さが身に染みてきます。2013年のTDWでは出展者として展示し、展示物調整のために会期の10日間毎日会場に通っていたことも、深く考えさせられる大きな要因となっています。僕は、普段からものづくり関連のイベントに出展することが多く、時にはイベントを主催することもあります。いままでのイベントを振り返ってみて、本当に安全を徹底して展示を行っていたかと問われると、そうといい切る自信はありません。一歩間違えば事故につながっていたという可能性はどこにでもあったと思います。今回起こった火災は、火気を使わなくても電気を使う展示であれば起こりうることですし、火災以外にも、頭上からものが落下する可能性や、コードが首に絡まって窒息する可能性など、展示には本当に多くのリスクが潜んでいます。

いまやるべきこと

ネットでは、イベント主催者、展示制作者、展示制作した大学の教員へ批判が向けられています。情報が明らかにされていない現段階で憶測で言及するのは好ましくないですが、現時点でもいくらかの不備があったであろうことは見て取れます。しかし、無責任な立場から一方的に批判している様子を見るととてもつらく、腹立たしくさえ感じています。それと同時に、僕がその人達に腹を立てることも、批判することと同様に無意味なことだと思います。いまできることは、今後、このような事故の発生を減らし、被害を最小限に抑えることです。「事故を二度と起こさない」と書きたいところですが、完璧な安全対策はありません。できる限りの準備をした上で、常に危険やリスクを意識することが、最大限の安全対策だと思います。

展示イベント運営の安全管理

イベント主催者を擁護するわけではありませんが、運営という立場での安全管理は本当に難しく、それゆえ徹底しないといけないと感じます。自分で作ったものであれば、使われている材料や作品の特徴からリスクを把握しやすいですが、膨大な数の出展物のすべての安全性を確認するのは、ただでさえ慌ただしいイベント運営において相当な労力を費やします。イベント全体で安全性を確保するには、出展者個人の資質や経験のみに依存するのではなく、仕組みとしてリスクを排除することが必要です。そのためには、ルールを定め、周知し、そのルールが守られているかチェックすることになりますが、虚偽の報告をされた場合にはそのリスクを漏れなく見つけるのは非常に困難でしょう。

Maker Faire Tokyoでの安全管理

ここまで書いて思い浮かぶのが、Maker Faire Tokyoというイベントのことです。会場となっている東京ビッグサイトにて「東京都火災予防条例上の禁止行為」が適用されていることもあり、「使用する布は全て防炎加工マークが必要」「リチウムイオンバッテリーの使用に承認が必要」など、とても細かくルールが定められていました。Maker Faire Tokyoには出展者として毎年参加しておりましたが、これらのルールは正直に言うと面倒に思っていました。しかし今となっては、事故が起こらないよう徹底した結果であり、きちんと運営して頂いていたことに本当に頭が下がる思いです。

これからの展示イベント

よくイベントを主催している人達にとって、今回の事故を目の当たりにし、改めて展示イベントを行う危険性について認識することになったと思います。僕はいま、怖くてイベントを主催するという気持ちにはまったくなれません。しかし、楽しい気持ちにさせてくれる展示イベントが今後一切開催されないという未来は、とても寂しいです。今後また今まで以上に盛んに展示イベントが開催されていくには、何が必要で、どうやったらリスクを減らせるのか、これからずっと考えていきたいと思っています。