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生物と無生物のあいだ


生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)


分子生物学者の福岡伸一教授の本。


「生命とはなにか」という問いについて解き明かす科学書であると同時に、日本ではあまり語られないような野口英世のダークな面やDNA二重らせん構造の解明まで物語が書かれた科学史のようであり、さらにそれらは臨場感ある描写で書かれたノンフィクション小説のようでもある。


「生命とは自己複製を行うシステムである。」という従来のひとつの定義から抜け出し、「生命とは動的平衡にある流れである」という考えに辿り着く。その過程の記述には、研究における姿勢や考え方が多く書かれている。


非常に重要だと感じたのが、冒頭にある以下の記述

なにかを定義するとき、属性を挙げて対象を記述することは比較的たやすい。しかし、対象の本質を明示的に記述することはまったくたやすいことではない。

これは常に気をつけなければいけないと感じた。科学に限らず全てにおいて言えることだろう。


また、研究プロセス、特に実験において、コンタミネーション(対象外の要因による実験結果の汚染)の影響を取り除くことがいかに難しいかも述べられている。最近では、原発や放射線に関して、専門家が断定的な意見を述べることに慎重になっているが、これは彼らが御用学者だからなのではなく、このような背景があるからだ。


知識を得るのに加え、自身の研究に対する取り組み方や科学的思考を見直し整理するためにも良い本だと思う。