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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

「大企業を辞めるという合理的な選択」にマジレスしてみた

ちきりん先生の 大企業を辞めるという合理的な選択 - Chikirinの日記 を読んで、本筋には同意しつつも、ちょいちょい引っかかるところがあったのでマジレスしてみた。

・世間の評価も圧倒的に高く(合コン市場や親戚間において)

親戚はともかく、合コン市場はそうなの?

・福利厚生も充実してる

えっと、福利厚生って何? 金銭的な報酬に折り込めるんじゃ。

<大企業を辞める人が重視する価値>


・通勤や服装に求められる規律からの自由

服装、超自由だったけど。。。

そしてもうひとつ、ちきりんが「若い人が大企業を辞めはじめている理由」として感じるのは、彼らにとって今の大企業の40代、50代が「すごい」と思えなくなっているのだろうということです。

ちきりんが就職した頃は、なんだかんだいっても20代半ばの新入社員と40代、50代で働き盛りの会社員の間には、圧倒的な実力(仕事力)の差がありました。情報や知識も、判断力も胆力も、さらに様々な経験知も。少なくとも私は、当時のそれくらいの年令の先輩を尊敬していたし、すごいと思えていました。

でも今の20代の人って、会社に入って今のそういう年代の人を見て、必ずしもそう思えないのではないでしょうか?入社3年くらいまでは、自分が余りに何もできないので、それでもそれなりに学ぶことがあるし、上の人は「すごい!」と見えます。

しかし今や数年も働けば、「あの人たちどうなの?」という点があれこれ目に付き始めます。ネットで調べればすぐ済むようなことに長い時間をかけたり、バカ高いコストをかけていたり。「そんなことも知らないの?」的なことも多々あります。

辞める理由になっているかどうかはともかく、時が経つにつれていろいろ進化して学習効率が良くなり、若い世代ほどその恩恵を受けられるというのはその通りだと思う。ウェブ進化論梅田望夫氏が(元々は棋士の羽生善治氏が)「学習の高速道路」と言っていたやつです。インターネットすごいよ、ほんとに。


彼らはいったいなぜこの船を降りるのでしょう?その選択は、彼らにとって合理的な選択なのでしょうか?それとも彼らは単に「変わった人」であり、非合理的な選択をしているのでしょうか?

ちきりんには、明らかに前者に思えます。20年前に大企業を辞めた人は単なる「変わった人」(=非合理的な選択をする人)だったけれど、今そうする人は「彼らなりの合理的な選択」をしている。だから増えてるんです。

うーんと、ここが一番違和感のあるところ。20年前も今も、大企業を辞めた人は「変わった人」なんだよなあ(大企業を辞めない人にとっては)。そして、20年前も今も、「彼らなりの合理的な選択」をして辞めているんだよなあ。ここのところは変わらないんじゃないか。まあ、物は言い様なんですが。
社会が成熟すると安全な生活が保障されて価値観は多様化するものだと思うので、お金以外のいろんな軸で考える人が増えてるんだよねきっと。
増えているのはたぶん間違いない((dx/dt > 0) == true)だろうけど、まあ今も圧倒的少数であることはそんなに変わらないんじゃないかなあ。
あと、あまり関係ないけど、企業のことを船に喩えるのはあまり正しくないと思っている。船に乗って沈んだら、そこでお終い。その後はない。だから沈む前に降りなきゃいけない。企業に乗って沈んでも、そこから乗り換えられる。沈む前に乗り換えてもいいし、沈んでから乗り換えてもいい。

追記