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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

Space Apps Challenge Tokyo に参加しました #spaceapps_tokyo

4/21(土)〜22(日)で Space Apps Challenge Tokyo というイベントに参加してきました。

Space Apps Challenge は、世界規模で行うハッカソンイベントです。ハッカソン(Hack-a-thon)という用語は、「Hack」と「Marathon」を合わせた造語で、同じテーマに興味を持ったエンジニアやデザイナーなどのメンバーが一箇所に集まり、一定期間に集中して、互いに強力しながら開発を行うイベントです。(あとでご紹介する米国のサイトでは、Codeathon と呼ばれています。)


今回は、4月21日、22日の2日間で、宇宙xテクノロジーをテーマに世界中の様々なロケーションで同時にハッカソンが開催されます。なんと、15都市以上のロケーションと、南極宇宙観測所や国際宇宙ステーションISS)が参加を表明しています。


ざっくり言ってしまうと、NASAJAXA 等のデータを使って*1、宇宙に関する開発を行うハッカソンです。

いままで、勉強会的なイベントにはちょくちょく顔を出していましたが、ハッカソンは敷居が高くて参加したことがありませんでした。でもテーマが「宇宙」ということで、元 JAXAer*2 として「これは参加するしかない!」と思ったので勇気を振り絞って参加してみました。

磁力線アプリ 「CONNECT - Magnetic Field Line connect Our Life」

私達のチームは、磁力線の向こう側と繋がることのできる Web アプリケーションを開発しました。

概要
  • 地球は磁石なので、地球上の任意の点は磁力線で別の点(磁気共役点)につながっている
  • 磁力線は目に見えないけど私たちの身の回りにあるもの、こんな磁力線をもっと身近に感じたい!
  • ということで、磁力線を通じて「写真」「ツイート」「スポット情報」が伝わってくることで私たちの生活が磁力線の向こう側とつながる、そんな web サービスをつくりました
どうしてこうなった

前段階で行ったアイディアソンで、昔うっかり思いついた「磁力線SNS」ネタ



をうっかり話してしまったら、 @ さんと @ さんが興味を持ってくれて本格的に動き出すことに。



当日には吉原さんと島筒さんに参画して頂き(さらに吉原さんの知人のデザイナーさんにも協力して頂き)、企画がどんどんと進んでいき、形になりました。優秀な方々が揃っていて開発もすごいスピードで進んでいき、僕のようなしょぼプログラマは出る幕が無いほど(資料作りに集中できました!)。

こんなんできました

できたサイトがこちらです


Map 上の任意の点をクリックすると、磁力線を通じて反対側の点(磁気共役点)と結ばれます。Twetter 欄にはこちらの点付近のつぶやきと、反対側の点付近のつぶやきが表示され、こちらと向こうの一体感が得られます。本当は写真の表示機能なんかもあって、実装も結構進んでたんですが、結局実現できず残念(>_<)

ちなみに、開発中の情報共有は Facebook のグループで行いました。結構上手くいったように思います。

ソースコードはこちらにあります。

発表

発表時間4分。スライドは1分程度にして、残りはデモに充てました。webアプリなのでネットワーク使うデモなので、トラブらないか超ドキドキ。無事動いてホッとしました。
最後、「どこの磁力線を見たいですかー?」と呼びかけてみたものの応答がなかったので、審査員の @ さんにムチャぶりするなどw

結果

なんと、JAXA 賞(≒4位)を受賞しました!!

昔、妄想程度に思いついたネタが、まさかこんな形で実現するなんて夢にも思わず。それだけでも嬉しいのに賞までいただけるなんて。メンバーの皆さん、本当にありがとうございました!

JAXA賞の賞品のクリスタル。中にきぼうの絵が描かれている。

これは、今回お世話になったデザイナーさんがいらっしゃる 下北沢オープンソースCafe に飾って頂くことになりました。皆さん是非お立ち寄りください(僕もまだ行ったことないので、今度行ってみます!)

FAQ

  • Q. 磁力線のデータはどうしているのですか?
    • A. MAGE のモデルデータを使おうとしてたのですが、データが粗かった(日本の上に磁力線を引けず残念(´・ω・`))ので、もの凄くシンプルなモデルで算出しています。
  • Q. 磁力線て動くの?
    • A. 動きます。地球内部の対流によって出来ているので時々刻々と変化します。ただ、ざっくりとした位置はそれほど変わりません。
  • Q. 磁力線がつながってると何なの?
    • A. プラズマ(電子,陽子)は、磁力線に沿ってしか動けないという制約があります。オーロラは、電子が地球大気にぶつかって生じるのですが、その制約のため同じ磁力線上の南北で同時にオーロラが起こることがあります。
  • Q. 磁力線で何か関連性(地震とか)が見つかると面白いですね
    • A. 面白いのですが、たぶんないです。
  • Q. なんで磁力線に興味持ったの?
    • A. 修士の研究テーマが宇宙プラズマ中の電子加速で、地球磁気圏に馴染み深かったからです。

他のチャレンジ

他のチャレンジもめちゃくちゃ面白かったです!!@ さんの blog によくまとまってますし、全発表の動画撮って YouTube に上げて頂いています!!

プロジェクトのサイト

感想など

Geolocation

人工衛星等のデータ使うためには緯度経度情報が重要になります。また、オーガナイザーが @ さん、共催が CSIC(東京大学空間情報科学研究センター) ということもあり、Geolocation な人達が多かった気がします。クウジットでは無線LANによる位置測位サービス Placeengine を展開してるので、緯度経度情報の扱い方や緯度経度情報によるサービス等を知ることができたのはとても参考になりました。Google Maps API の使い方なんかもほとんど知らなかったのですが、今回触ることができてよかったです。

大人のきみっしょん

きみっしょん というのは、正式名称「君が作る宇宙ミッション」で、JAXA 宇宙研に高校生が5日間泊まりこんで宇宙ミッションを企画するというイベントです。宇宙研時代にスタッフとして参加していました。

で、今回の Space Apps Challenge Tokyo を一言で表すと、「大人のきみっしょん」! 背景知識が異なる人達で話しあったり、わからないことをひたすらググったり、意見をぶつけてプロジェクトの方向性を決めたりするのはきみっしょんと一緒。さらに、きみっしょんでは宇宙ミッションの企画をつくることが目的なのだが、Space Apps Challenge Tokyo では実際にモノ(ソフトウェアやハードウェア)をつくるわけで、いろんな技術をもった人達が集まってガチでものづくりをやる。大人なので事前準備してうまいこと進めておくのもアリだし、工作機械持ち込むのもアリ、自己責任で飲酒も徹夜もアリ。まさに大人のきみっしょん。

所感

宇宙好きな方ともそうじゃない方とも、コーディングの話や宇宙の話をたくさんできてとても楽しかったです!日常生活で「磁力線」という言葉を発することはまずないのですが、2日間で磁力線磁力線言いまくって、たぶん一生分磁力線と言った気がする。

「何で休日なのに締め切りに追われてコード書いてるんだよ!」と思ったことも無くはないですが、動いた時の喜びや、発表し終わったあとの達成感はすごい!

今回のようにそれなりのものを早くサクッと作るときには JavaScript 大事だなーと改めて思いました。

ハッカソンということでIT系エンジニアの方が多かったのですが、「デザインが出来る方」「科学データがわかる方」の需要が結構あったように思うので、デザイナーの方や、宇宙関連の研究している研究者の方はぜひ参加するといいんじゃないかと思いました。宇宙研の学生とか、「大人のきみっしょん」に参加してみるといいと思うよ。

最後に、スタッフの皆さん、かなり前からの事前準備、当日の運営、本当にありがとうございました。次回があれば、また新ネタ持って参加したいです!!

おまけ

1日目の夕食の「スペースシャトル寿司」と「はやぶさケーキ」。あまりにも人気過ぎて、これが1位になるかと思ったw

*1:制約があるわけではないので、別に使わなくてもいい

*2:造語です