yumulog

北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

夜は短し歩けよ乙女


夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)


なんとなく小説が読みたくなって、「大学生に読んでほしい本 No.1」という帯に目を引かれて買ってみた。


本を読む時に最初に見るのは、作者プロフィール。作者の森見登美彦さんは、京大の農学研究科の修士卒。これだけで期待が高まってしまうが、読んでみると、期待を大きく上回る出来であった。


ストーリー自体はごく普通、というか個人的にはむしろ嫌いな部類に入るのだが、そんなことは気にならないくらい描写や表現が素晴らしかった。


気に入った表現に付箋をつけておけば良かったと、読み終わってから後悔したのだが、もう一度パラパラと見返して目に止まったのは、例えば

そのたびに、私は何やらボーットしてしまうのでした。もちろん私は普段から精神を研ぎ澄ましているような人間ではありませんが、その「ボーッ」は、「ボーッ」の中の「ボーッ」、「世界ボーッとする選手権」というものがあれば日本代表の座も間違いなしと思われるほどに筋金入りのボーッであったのです。

李白さんの快気祝いは午後六時から糺ノ森で開かれるから、午後四時に彼女と待ち合わせて珈琲を飲む約束になっていた。遅刻せぬように、私は午後二時には下宿をでなくてはならなかった。そのためには午前七時に起床しなくてはならなかった。なぜならば、服を洗濯して乾かすのに数時間、シャワーを浴びて髪を乾かすのに一時間、歯を磨くのに五分、髪を整えるのに半時間、そして彼女との会話の予行演習に数時間を要し、多忙を極めたからである。


このような妄想(?)は、日常生活でふと考えつくもすぐ忘れてそのまま流れていってしまいがちなものだが、この本ではこういった表現がところどころではなく至る所に詰め込まれていて、読み手を楽しませてくれる。好き嫌いが分かれそうではあるが、上記の引用を読んでみて「おっ」と思った方には絶対にお勧めしたい。


それから、京都、京大を舞台にしているので、土地に縁があるともっと楽しめるでしょう。自分はもともと京都に憧れがあったのだが、この話を読んでより一層憧れが強くなった。


京都、住んでみたいなあ。1年くらい。