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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

2020年に読んだ本

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2020年は16冊読んだようです。50冊くらい読みたいと思っててそれよりはだいぶ少ないのですが、昨年よりは増えました。

本は飛行機等の移動時間で読むことが多かったのですが、昨年は移動の機会が激減し、自宅で読みました。そのため、毎朝(または毎晩)読み進めるようにし、締切等に追われている時期以外は習慣化できたかなと思います。まぁ、締切に追われてる時期が多いのですが。。。あと、いままで慢性的な睡眠不足でしたが、昨年は睡眠が十分取れたため、読みながら眠くなることが少なく、内容が頭に入りやすかったです。

ずーっと読みたいと思ってた銃・病原菌・鉄とサピエンス全史をそれぞれ上下巻読み切ることができて、満足感がすごく高いです。内容もめちゃくちゃおもしろかった。いずれも結構長めですが、1章30分くらいで読めるので、毎日1章ごと読み進めるのにちょうどよかったです。

きちんと習慣化すれば、週1冊、年間50冊くらいは読めそうな気がするので、今年はモチベーションや忙しさに関わらずなるべく毎日読むようにしてみようかと思います。

2020年の振り返りと2021年に向けて

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あけましておめでとうございます!今年もどうぞよろしくお願いいたします。 毎年書いてる振り返り+抱負的なエントリを今年も書きました。

研究

ずっとやってたBluetooth Low Energyの研究のジャーナル論文がようやく英文論文誌Sensors and Materialsに採録されました。来年publishです。研究に着手して約4年、最初のジャーナル投稿から約2年。長かった。。。

昨年は主著の成果はそれだけですね。昨年末に、博士論文の内容をまとめてIEEE ICHMS(International Conference on Human-Machine Systems)に投稿してたショートペーパーは不採録で(ショートなので通るだろうと油断してた・・・)、同じ会議のポスターに出し直そうかと思ったものの開催時期が4月上旬でコロナ禍でどうなるかわからなかったので見送り。会議は結局9月にオンラインで開催されることに。他に適当な会議もなかったので、結果論としては出しておけばよかった。。。

共著では、国内学会で3本(IEICE総合大会、UBI、DPSWS)発表。今年はジャーナルと共著学会発表だけなので、自分では1度も発表をしなかったのだな・・・。今年も年度内に共著発表が2本(IPSJ全国大会、IEICE総合大会)あります。

あとは、競争的資金の申請でACT-X(面接したけど不採択)や、別のネタで科研費(若手)を書いたりしてました。結構時間取れられたけど、計画を立てるためにあれこれサーベイして来年度以降のネタの弾込めができたので無駄ではなかったはず。科研費取れても取れなくてもこれから研究していきます。

学会仕事

情報処理学会の会誌編集委員(3年目)とMBL研究会委員(2年目)は継続。DICOMO2020(プログラム委員)とEC2020(運営委員)はオンライン開催でした。国際会議ICMU2020(Poster & Demo Chair)は今年は開催せず1年スライドしてそのままの体制でICMU2021に。DICOMO2021とEC2021も引き続き委員です。

コロナ禍の影響

今年は、一生で一度どころか人類史で一度しかない(次もしパンデミックが起こった際には全然違う状況になるはず)極めて貴重な時期で、心情変化などを忘れずに残しておきたいと思って、なるべくblogに書くようにしました。春のうちに書きたいことは書ききった気がするのでそれ以降は書いてませんが。

仕事編

仕事では、いまは週1〜2回程度出勤し、残りは在宅勤務です。もともと家で作業する環境は整っており(元社会人学生・元フリーランスなので)、一人暮らしなので、在宅勤務は全く問題なかったです。在宅の方が集中するまでに時間を要する感はあるのですが、出勤すると会議室が足りない問題があったりするので、総じて自宅の方が快適です。

また、例年、Interopに始まり、NICTオープンハウスやCEATECなどで研究紹介展示を行うという流れなのですが、今年度はこれらが全てなくなりました。また、例年だとだいたい月2回くらいで会議などで東京などへ出張してたのですが、これもなくなりました。その結果、例年よりもかなり時間的余裕ができました。

生活編

余裕ができた分、時間を何に回したかというと、まず寝る時間が増えました。昨年までは年中睡眠不足だったのですが、今年はたくさん寝ました。出張があると早朝の飛行機に乗ることが多くて睡眠時間が足りなかったりするし、海外に行くと時差もあるので、すぐに生活リズムが崩れるのですが、今年はそれがまったくないので規則正しい生活ができました。

睡眠を十分とれたおかげで、自律神経を整えることができ、体調の微妙な変化にも気づきやすくなりました。寝る前にお酒を飲むと睡眠が浅くなるとか。また、以前までめちゃくちゃひどかった眼精疲労が、いまでは嘘のようになくなりました。睡眠不足が原因でした。いまも睡眠時間が短い日は眼精疲労が起こるので、原因がわかりやすい。自律神経を整えるために、朝の散歩も習慣にしていました。秋以降、熊が出てからは散歩できなくなってしまったのですが。。。

毎日家にいるので、季節の変化を今までで最も感じる一年でした。日の長さの変化も気づきやすいし、ちょうど自宅のベランダが田んぼに面しており、休憩時にベランダに出て稲が成長する様子を眺めるのが日課でした。

仕事でもプライベートでも海外行くのは楽しみの一つなので、それができなくなったのは残念ではあるのですが、5年とか10年スパンで行けないならともかく、1〜2年くらいなら全然大丈夫です。昨年の秋から今年の冬にかけてだいぶ予定を詰め込んでロンドン、グルガオン、バンコク、深圳、バンコクマドリッドに行っていたので、海外成分を溜め込んでいたというのもありますが。

遠出ができない分、県内や近隣の観光地を巡ってました。北陸は感染者数も比較的少なく、移動はすべて車なので交通機関での接触もなし。もうかれこれ丸6年石川に住んでるのですが、今まで回ってなかったところがとても多かった。北陸の歴史を辿るよい機会になりました。

あと、多くのイベントがオンラインになったのは、地方在住民的にはありがたいです。また、主催側としてもclusterやZoomを使って何度かイベントを開催し、感触がわかってきました。3月には、金沢工大で開催予定だった情報処理学会全国大会がオンライン開催となり、企画セッション「先生!質問です」をclusterでやりました。これでclusterでのイベント開催ノウハウがつかめました。

CoSTEP

今年度、北海道大学 科学技術コミュニケーター養成プログラム (CoSTEP) を受講してます。今年度は上述の通り時間的余裕が大きかったので、今年度受講したのはとても良いタイミングだったなと思います。新たに学ぶことがとても多くて、想像以上に楽しいです。学費は、私が受講している選科は年間たったの3万円で、得られるメリットと照らし合わせると実質無料に感じます。興味ある方は、ぜひ来年度以降の受講を検討してみてください!

これもblog記事をいくつか書いてるので、詳細はそちらをご覧ください。

SpaceApps

昨年は、例年通りの10月の開催の他、5月にSpaceApps COVID-19 Challengeというのがありました。両方完全オンラインです。COVID-19 Challengeは会場という概念がなく全世界でひとつのコンテストで、Local Lead(居住地域の参加者をサポートする役割)を務め、 10月の方はオンライン開催だったので久しぶり(5年ぶり)にSpace Apps Tokyoのオーガナイザを務めました。オンライン開催は、会場準備が不要なので物理開催よりも総じて楽にはなるのですが、年に2度開催はなかなか大変でしたね。特にCOVID-19 Challengeの方で、日本独自の企画を頑張りすぎたので、もし今年もCOVID-19 Challengeがあったらコミット量は少し下げます。宙畑さんで開催レポート記事を書いたので、ぜひ見てください。

その他

大きなイベントとしては、2月にマドリッドに行ってテレビ番組El Hormiguero 3.0に出演しました。今思うと超ギリギリのタイミングで、あと少し遅かったら行けなかった。年の後半には現地開催イベントも増えてきて、Maker Faireも1月にMaker Faire Bangkok出展とSendai Micro Maker Faire見学、2月にTsukuba Mini Maker Faire出展、12月にOgaki Mini Maker Faire見学と、例年以上にたくさん参加できました。

あと、5月にclusterで博士号取得記念パーティをclusterでやりました。これ、パーティやりたいとは考えてて、やるなら金沢でと思ってたのですが来れない人も多いだろうしどうしようかと思ってたところだったので、clusterでのオンライン開催にしたのは多くの人に参加してもらえてよかったです。ご参加ありがとうございました。

NT札幌も年末の12/26にclusterでオンライン開催しました。ご参加ありがとうございました。

2020年まとめ

例年このまとめ作る時に「今年いろいろあったなあ」と思うのですが、2020年はいつもの年よりは振り返る出来事が少なかったなと思います。とはいえこうやって書き出してみるとなんだかんだでいろいろとあったのですが。

時間ができたら作品作りをしたいとずっと思ってたんですが、目標となるイベントも無かったせいかあまりモチベーションが湧かず、ほとんど何もつくりませんでした。プロジェクションマッピングキーボードをJavaScriptからUnityに移植したくらい。あとはclusterのワールド作ったりアバター作ったりもしたか。研究でももうちょっとアウトプットを出したかったのですが、研究費申請とかを優先してて実働はあまり進められず。本を読む時間はまあまあ取れて、ずっと積んでた銃・病原菌・鉄やサピエンス全史も読破できたし。総じて、アウトプットよりもインプットが多かった一年だった気がします。

生活の変化の原因が感染症というセンシティブなものなのであまり軽々しく言うのも憚れるのですが、自分に限った範囲では、非常に満足度が高い1年でした。ちょうどよい充電期間になりました。1年前くらいは毎日のように「無職になりたい」と言ってましたが、時間の余裕が欲しかったのだと思います。いまは無職になりたい気持ちはだいぶ薄れてきました、いま無職になっても海外とかにあまり自由に行けないというのもありますが。

さて、石川での生活とNICT在籍が7年目に突入しました。そして、以前から言っていた通り、今年度はNICT有期研究員の最終年度です。任期延長?転職?はたまた無職!?一体私、これからどうなっちゃうの〜😭😭!?!?!?ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、研究を続けられるんだから!次回『ポスドク任期切れ』デュエルスタンバイ!*1

*1:念の為補足しておくと、来年度のことは既に確定していますので、心配無用です

北大CoSTEP選科B集中演習「サイエンスライティング」を受講しました #costep

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10/10(土)-11(日)の2日間でCoSTEPのサイエンスライティング演習を受講し終えました。本来は3日間北大に集まってやるものなんですが、今年はZoomを使ってオンラインで2日間開催されました。初オンライン開催で、例年とはいろいろと形式が異なるようです。

CoSTEPの選科は、基本的には講義の受講のみですが、年に1回だけ集中演習があります。AコースとBコースに分かれていて、Aが「サイエンスイベント企画運営」、Bが「サイエンスライティング」です。CoSTEPに応募する4月の時点でどちらのコース希望か決めないといけないのですが、その時点でAの日程は受講できないことが確定していたので、B一択でした。

サイエンスライティング演習、すごく楽しみにしていました。その一方、仕事柄、論文や研究費申請書類などを書く機会が多く、また、大学院生の論文執筆指導のため書くことについて普段からいろいろ考えているということもあり、演習で学べることがあるのだろうかというやや斜に構えた気持ちもありました。もちろん後ろ向きな気持ちでは学べることも学べないので、なるべく多くのことを学ぶ姿勢で臨みましたが。結果的には、予想を遥かに上回るとても多くのことを学びました。

課題文の執筆

サイエンスライティング演習のメインタスクが課題文を書くことです。科学技術に関するテーマを自分で見つけ、1600字程度の文章を演習中に完成させます。課題文は、テーマ選択は自由ですが、「義務教育修了程度の人が関心をもって読み、その内容を理解して、何らかの 行動を起こせるような文章」という設定となっていました。演習開催の1週間前、初稿を提出します。その文章が演習期間中にレビューされ、推敲を重ねていくという流れです。

行動変容を促すことが課題文の設定となっていて、テーマ選びがなかなか難しかったのですが、最近自分がよく使っていて周りの人にもおすすめしたい音声入力での執筆について書くことにしました。課題文は受講者同士でレビューして読み合うため、まさに執筆をやっている最中の人が読むことになるので、執筆に関する内容は興味を持って読んでもらえるだろうという狙いもありました。課題文のタイトルは「音声入力で執筆が変わる 〜音声入力執筆の現状とそれを支える音声認識技術〜」。初稿のタイトルは別のものだったのですが、何度か変遷を経て、最終的にこのタイトルに落ち着きました。

初稿では、音声入力を試しに使ってもらうという行動変容に注力して書き、音声認識の技術的背景はほとんど書かなかったのですが、レビューコメントをもらって技術的背景についても追記していきました。私は情報科学研究者なのですが、音声認識については全く専門ではないので、解説記事や論文を読み、ひとつひとつ調べながら書きました。専門ではない分野について調べながら書くとのはまさに科学技術コミュニケーションにおけるサイエンスライティングだと感じました。課題文はWebで公開してもよいのかよくわかっていないのですが、せっかく頑張って書いたものなので、後日どこかで公開できればと思います。

良い文章が書けたなと思ってわりと満足していたのですが、2日間の最後の振り返りで他の参加者が言っていた「答えのないものを書く」「忖度せずに書く」といった意気込みを聞いていると、この程度で満足せずにもっと良い文章を目指さないといけないなと思い直しました。もっと良い文章を書いていきたいと思います(今回の課題文ではなく別の機会に)。

その他の演習内容

受講者同士で文章を読んでコメントをつけるピアレビューも1周やりましたが、例年の対面形式ではもっとたくさんやるらしいので、少し物足りなく感じました。演習は班に分かれての作業で、進め方は班によって違うので、他の班はまた状況異なると思います。

サイエンスライティングに関する講義もあります。集中演習期間中に受講するものと、事前にビデオ受講するものがあります。「論理的とはどういうことか」「なぜ論理的に書くことが必要なのか」「デザインとは」などなど、なんとなく無意識にやっていたことが言語化されたり、わざわざ考えることのなかった問いを改めて考えるなど、非常によかったです。

演習初日の最初には、アイスブレイクも兼ねた文章デッサンのワークを行いました。お題として示されたある絵を見てそれを文章で書きます。他の人がその文章を読み、内容から元の絵を想像して書きます。絵と文章を使った伝言ゲームみたいなやつですね。これはすごく良かったですね。全体像を示してから細部を示す、詳細すぎる情報は切り捨てる、物事の位置関係を示すなど、文章を伝えるための重要なスキルをすごく意識させられました。これはライティングを指導するような機会があれば実践したいと思いました。

「サイエンスライティング」と「サイエンティフィックライティング」の違い

この演習で学ぶのはサイエンスライティングです。一方、似て非なるサイエンティフィックライティングというものもあります。なにが違うのでしょう?editageの記事に書かれていたこちらを引用します。

私が言う「サイエンス・ライティング」とは、科学について非専門家向けに書くこと(大衆紙の記事など)を意味します。一方、「サイエンティフィック・ライティング(scientific writing)」と言うときは、科学者対科学者のライティング(学術ジャーナルの論文、補助金申請書類など)を指します。

論文執筆時のミスを防ぐには―投稿規定をよく読み、幻想を捨てる | エディテージ・インサイト より

サイエンスライティングでは切り口を決めるのがすごく重要であることを実感しました。講義では、ノーベル賞の報道について触れられていました。ノーベル賞のニュースは、同じ日の同じ新聞でも、一面、経済面、社会面などいくつかのページで取り上げられます。これらの記事は、それぞれ違う記者が、科学的成果の内容、経済的影響、社会的影響、倫理的問題など違う観点に着目して様々な切り口で書いています。

7月にもサイエンスライティングに関する講義があり、そこでも独自の切り口で書くことの重要性が示されていて、あわせて独自の切り口で書いた記事が例示されていました。ただ、その時には、「独自の切り口で変わった記事を書かずに、直球の記事を書けばよいのに」と感じ、あまり重要性を理解できていませんでした。しかし、先述したノーベル賞の話を受けてこの記事のことを思い返すと、記事の役割はそれぞれあり、直球の記事を書くのはまたその役割を担う別の記者がいるのだと気づきました。題材が同じであったとしても、それぞれの切り口で捉えることがサイエンスライティングなんですね。

一方、サイエンティフィックライティングである論文では、ディスカッション部分などを除いて基本的には主観を排除して事象を客観的に明確に書くことが求められます(主に理工学系にて)。サイエンスライティングとサイエンティフィックライティングという一見似ているものでも、書く原理が大きく違うのですね。どちらの文章を書くこともあるので、書く際には強く意識しないといけないなと思いました。

論文でも、レビュー論文・サーベイ論文という種類の論文では、独自の切り口が重要なので、サイエンスライティングに近い面はあるのかもしれません。補助金申請書類は、先ほど引用した説明ではサイエンティフィックライティングの扱いになっていましたが、実際には異分野の審査員が見ることも多く、非専門家に向けた内容で書くことが多いので、サイエンスライティングとして扱うほうが適切かと思いました。そして、ちょうどいま科研費申請シーズンですね。サイエンスライティング演習の成果を生かして科研費申請書類書きます。。。

感想

すごく楽しかったです。最近、あまり人と会ってない話しをしてないせいもあるかもしれません。懇親会も楽しく参加しました。特に、某先生が起こしたいくら事件が面白かったです。なめらかに流れ落ちるいくらの様子が忘れられない。

対面でできるとより楽しかったのだろうという思いは当然ありますが、家にいながらにしてこんなに密度の濃い時間をすごせたのは改めてすごいと思いました。選科Bの集中演習はこれでおしまいで、実際に会う機会があるとしたら、あとは修了式です。開催形式はまだ決まっていないようですが、現地で会えるといいですね

P.S. 音声入力の執筆について

この記事ももちろん音声入力を使って書いてます。音声入力は2,200字で20分でした。その後の推敲には1時間50分かかりました。推敲のときに書き足す内容がけっこう多かったので、いつもよりも推敲に時間がかかっています。最終的に約3,600字の記事になりました。

音声入力の前につくる箇条書きメモはこんな感じです。終わった直後にこの感想記事かくつもりだったので、演習中に少しずつメモを書き溜めていました。 f:id:yumu19:20201011205151p:plain

このメモを元に、音声入力で執筆した最初の文章がこんな感じです。 f:id:yumu19:20201011205013p:plain

音声入力での執筆、便利なのでぜひ使ってみてください!Google Docsがオススメです!

日本学術会議 若手アカデミーの提言「シチズンサイエンスを推進する社会システムの構築を目指して」について

日本学術会議 若手アカデミーが「シチズンサイエンスを推進する社会システムの構築を目指して」という、シチズンサイエンスに関する提言を出しました。

提言内容には

シチズンサイエンスの存在および、その魅力を周知する広報活動を行うため、サイエンスカフェ等の取り組みを活用することが望ましい。そして、文部科学省および関連省庁は、一連の取り組みを主導するサイエンスコミュニケーターの雇用やイベント開催の予算的措置を進めるべきである。また、職業科学者は、サイエンスコミュニケーターにシチズンサイエンスの推進をすべて任せるのではなく、科学者自身が市民と一体となるシチズンサイエンスをより一層推進していく必要がある。

 

科学コミュニケーションにおけるモデルの変遷に鑑みると、シチズンサイエンスの今後の発展のためには、日本でも職業科学者とシチズンサイエンティストの双方向性を備えたコミュニケーションの場が不可欠である。しかしながら、現状では、職業科学者とシチズンサイエンティストの橋渡しによる双方向性のあるシチズンサイエンスを推進するための社会連携の基盤が十分に整備されていない。学協会は、主催する学術集会でシチズンサイエンティストの発表を奨励し、双方向性を備えたコミュニケーションの場を提供すべきである。また、このような企画を立案、運営する委員会を設置し、社会連携の基盤整備を進めるべきである。

 

シチズンサイエンティストの活動を支援する研究資金制度について、現在、社会課題解決型の研究を助成する資金制度が存在する。これに対し、知識生産を目的とした研究を行う際に、シチズンサイエンティストが研究代表者として申請できる柔軟な使用用途が認められる助成制度が必要である。文部科学省および関連省庁は、シチズンサイエンティストの研究を支援する研究資金制度を確立することが望ましい。職業科学者はシチズンサイエンスの重要性を認識し、社会課題解決型以外の研究に対して、現在の研究費制度にシチズンサイエンティストによる研究を組み込むことを推奨すべきである。

といった内容が盛り込まれ、職業科学者とシチズンサイエンティストの関係、さらにサイエンスコミュニケータまで含めた、シチズンサイエンティストが活躍するための極めて真っ当な提言になっています。提言全文の前半では、世界と日本におけるシチズンサイエンスに関する現状と課題がとてもよく整理されていて、これだけでも価値がある文章です。このような形の提言がアカデミア側から出てくることはあまり想定しておらず、そもそも若手アカデミーがシチズンサイエンスに関する活動をやっていたことも知らなかったので少し驚きましたが、とても良い動きだなと思います。

シチズンサイエンスについて普段考えていることが提言としてまとまってて嬉しく思うとともに、自分ができることをもっと形にしていかないとなと改めて思い、「ハッカソンシチズンサイエンス」という論文ちゃんと書くかーという気分になった。