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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

北大CoSTEP選科B集中演習「サイエンスライティング」を受講しました #costep

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10/10(土)-11(日)の2日間でCoSTEPのサイエンスライティング演習を受講し終えました。本来は3日間北大に集まってやるものなんですが、今年はZoomを使ってオンラインで2日間開催されました。初オンライン開催で、例年とはいろいろと形式が異なるようです。

CoSTEPの選科は、基本的には講義の受講のみですが、年に1回だけ集中演習があります。AコースとBコースに分かれていて、Aが「サイエンスイベント企画運営」、Bが「サイエンスライティング」です。CoSTEPに応募する4月の時点でどちらのコース希望か決めないといけないのですが、その時点でAの日程は受講できないことが確定していたので、B一択でした。

サイエンスライティング演習、すごく楽しみにしていました。その一方、仕事柄、論文や研究費申請書類などを書く機会が多く、また、大学院生の論文執筆指導のため書くことについて普段からいろいろ考えているということもあり、演習で学べることがあるのだろうかというやや斜に構えた気持ちもありました。もちろん後ろ向きな気持ちでは学べることも学べないので、なるべく多くのことを学ぶ姿勢で臨みましたが。結果的には、予想を遥かに上回るとても多くのことを学びました。

課題文の執筆

サイエンスライティング演習のメインタスクが課題文を書くことです。科学技術に関するテーマを自分で見つけ、1600字程度の文章を演習中に完成させます。課題文は、テーマ選択は自由ですが、「義務教育修了程度の人が関心をもって読み、その内容を理解して、何らかの 行動を起こせるような文章」という設定となっていました。演習開催の1週間前、初稿を提出します。その文章が演習期間中にレビューされ、推敲を重ねていくという流れです。

行動変容を促すことが課題文の設定となっていて、テーマ選びがなかなか難しかったのですが、最近自分がよく使っていて周りの人にもおすすめしたい音声入力での執筆について書くことにしました。課題文は受講者同士でレビューして読み合うため、まさに執筆をやっている最中の人が読むことになるので、執筆に関する内容は興味を持って読んでもらえるだろうという狙いもありました。課題文のタイトルは「音声入力で執筆が変わる 〜音声入力執筆の現状とそれを支える音声認識技術〜」。初稿のタイトルは別のものだったのですが、何度か変遷を経て、最終的にこのタイトルに落ち着きました。

初稿では、音声入力を試しに使ってもらうという行動変容に注力して書き、音声認識の技術的背景はほとんど書かなかったのですが、レビューコメントをもらって技術的背景についても追記していきました。私は情報科学研究者なのですが、音声認識については全く専門ではないので、解説記事や論文を読み、ひとつひとつ調べながら書きました。専門ではない分野について調べながら書くとのはまさに科学技術コミュニケーションにおけるサイエンスライティングだと感じました。課題文はWebで公開してもよいのかよくわかっていないのですが、せっかく頑張って書いたものなので、後日どこかで公開できればと思います。

良い文章が書けたなと思ってわりと満足していたのですが、2日間の最後の振り返りで他の参加者が言っていた「答えのないものを書く」「忖度せずに書く」といった意気込みを聞いていると、この程度で満足せずにもっと良い文章を目指さないといけないなと思い直しました。もっと良い文章を書いていきたいと思います(今回の課題文ではなく別の機会に)。

その他の演習内容

受講者同士で文章を読んでコメントをつけるピアレビューも1周やりましたが、例年の対面形式ではもっとたくさんやるらしいので、少し物足りなく感じました。演習は班に分かれての作業で、進め方は班によって違うので、他の班はまた状況異なると思います。

サイエンスライティングに関する講義もあります。集中演習期間中に受講するものと、事前にビデオ受講するものがあります。「論理的とはどういうことか」「なぜ論理的に書くことが必要なのか」「デザインとは」などなど、なんとなく無意識にやっていたことが言語化されたり、わざわざ考えることのなかった問いを改めて考えるなど、非常によかったです。

演習初日の最初には、アイスブレイクも兼ねた文章デッサンのワークを行いました。お題として示されたある絵を見てそれを文章で書きます。他の人がその文章を読み、内容から元の絵を想像して書きます。絵と文章を使った伝言ゲームみたいなやつですね。これはすごく良かったですね。全体像を示してから細部を示す、詳細すぎる情報は切り捨てる、物事の位置関係を示すなど、文章を伝えるための重要なスキルをすごく意識させられました。これはライティングを指導するような機会があれば実践したいと思いました。

「サイエンスライティング」と「サイエンティフィックライティング」の違い

この演習で学ぶのはサイエンスライティングです。一方、似て非なるサイエンティフィックライティングというものもあります。なにが違うのでしょう?editageの記事に書かれていたこちらを引用します。

私が言う「サイエンス・ライティング」とは、科学について非専門家向けに書くこと(大衆紙の記事など)を意味します。一方、「サイエンティフィック・ライティング(scientific writing)」と言うときは、科学者対科学者のライティング(学術ジャーナルの論文、補助金申請書類など)を指します。

論文執筆時のミスを防ぐには―投稿規定をよく読み、幻想を捨てる | エディテージ・インサイト より

サイエンスライティングでは切り口を決めるのがすごく重要であることを実感しました。講義では、ノーベル賞の報道について触れられていました。ノーベル賞のニュースは、同じ日の同じ新聞でも、一面、経済面、社会面などいくつかのページで取り上げられます。これらの記事は、それぞれ違う記者が、科学的成果の内容、経済的影響、社会的影響、倫理的問題など違う観点に着目して様々な切り口で書いています。

7月にもサイエンスライティングに関する講義があり、そこでも独自の切り口で書くことの重要性が示されていて、あわせて独自の切り口で書いた記事が例示されていました。ただ、その時には、「独自の切り口で変わった記事を書かずに、直球の記事を書けばよいのに」と感じ、あまり重要性を理解できていませんでした。しかし、先述したノーベル賞の話を受けてこの記事のことを思い返すと、記事の役割はそれぞれあり、直球の記事を書くのはまたその役割を担う別の記者がいるのだと気づきました。題材が同じであったとしても、それぞれの切り口で捉えることがサイエンスライティングなんですね。

一方、サイエンティフィックライティングである論文では、ディスカッション部分などを除いて基本的には主観を排除して事象を客観的に明確に書くことが求められます(主に理工学系にて)。サイエンスライティングとサイエンティフィックライティングという一見似ているものでも、書く原理が大きく違うのですね。どちらの文章を書くこともあるので、書く際には強く意識しないといけないなと思いました。

論文でも、レビュー論文・サーベイ論文という種類の論文では、独自の切り口が重要なので、サイエンスライティングに近い面はあるのかもしれません。補助金申請書類は、先ほど引用した説明ではサイエンティフィックライティングの扱いになっていましたが、実際には異分野の審査員が見ることも多く、非専門家に向けた内容で書くことが多いので、サイエンスライティングとして扱うほうが適切かと思いました。そして、ちょうどいま科研費申請シーズンですね。サイエンスライティング演習の成果を生かして科研費申請書類書きます。。。

感想

すごく楽しかったです。最近、あまり人と会ってない話しをしてないせいもあるかもしれません。懇親会も楽しく参加しました。特に、某先生が起こしたいくら事件が面白かったです。なめらかに流れ落ちるいくらの様子が忘れられない。

対面でできるとより楽しかったのだろうという思いは当然ありますが、家にいながらにしてこんなに密度の濃い時間をすごせたのは改めてすごいと思いました。選科Bの集中演習はこれでおしまいで、実際に会う機会があるとしたら、あとは修了式です。開催形式はまだ決まっていないようですが、現地で会えるといいですね

P.S. 音声入力の執筆について

この記事ももちろん音声入力を使って書いてます。音声入力は2,200字で20分でした。その後の推敲には1時間50分かかりました。推敲のときに書き足す内容がけっこう多かったので、いつもよりも推敲に時間がかかっています。最終的に約3,600字の記事になりました。

音声入力の前につくる箇条書きメモはこんな感じです。終わった直後にこの感想記事かくつもりだったので、演習中に少しずつメモを書き溜めていました。 f:id:yumu19:20201011205151p:plain

このメモを元に、音声入力で執筆した最初の文章がこんな感じです。 f:id:yumu19:20201011205013p:plain

音声入力での執筆、便利なのでぜひ使ってみてください!Google Docsがオススメです!

日本学術会議 若手アカデミーの提言「シチズンサイエンスを推進する社会システムの構築を目指して」について

日本学術会議 若手アカデミーが「シチズンサイエンスを推進する社会システムの構築を目指して」という、シチズンサイエンスに関する提言を出しました。

提言内容には

シチズンサイエンスの存在および、その魅力を周知する広報活動を行うため、サイエンスカフェ等の取り組みを活用することが望ましい。そして、文部科学省および関連省庁は、一連の取り組みを主導するサイエンスコミュニケーターの雇用やイベント開催の予算的措置を進めるべきである。また、職業科学者は、サイエンスコミュニケーターにシチズンサイエンスの推進をすべて任せるのではなく、科学者自身が市民と一体となるシチズンサイエンスをより一層推進していく必要がある。

 

科学コミュニケーションにおけるモデルの変遷に鑑みると、シチズンサイエンスの今後の発展のためには、日本でも職業科学者とシチズンサイエンティストの双方向性を備えたコミュニケーションの場が不可欠である。しかしながら、現状では、職業科学者とシチズンサイエンティストの橋渡しによる双方向性のあるシチズンサイエンスを推進するための社会連携の基盤が十分に整備されていない。学協会は、主催する学術集会でシチズンサイエンティストの発表を奨励し、双方向性を備えたコミュニケーションの場を提供すべきである。また、このような企画を立案、運営する委員会を設置し、社会連携の基盤整備を進めるべきである。

 

シチズンサイエンティストの活動を支援する研究資金制度について、現在、社会課題解決型の研究を助成する資金制度が存在する。これに対し、知識生産を目的とした研究を行う際に、シチズンサイエンティストが研究代表者として申請できる柔軟な使用用途が認められる助成制度が必要である。文部科学省および関連省庁は、シチズンサイエンティストの研究を支援する研究資金制度を確立することが望ましい。職業科学者はシチズンサイエンスの重要性を認識し、社会課題解決型以外の研究に対して、現在の研究費制度にシチズンサイエンティストによる研究を組み込むことを推奨すべきである。

といった内容が盛り込まれ、職業科学者とシチズンサイエンティストの関係、さらにサイエンスコミュニケータまで含めた、シチズンサイエンティストが活躍するための極めて真っ当な提言になっています。提言全文の前半では、世界と日本におけるシチズンサイエンスに関する現状と課題がとてもよく整理されていて、これだけでも価値がある文章です。このような形の提言がアカデミア側から出てくることはあまり想定しておらず、そもそも若手アカデミーがシチズンサイエンスに関する活動をやっていたことも知らなかったので少し驚きましたが、とても良い動きだなと思います。

シチズンサイエンスについて普段考えていることが提言としてまとまってて嬉しく思うとともに、自分ができることをもっと形にしていかないとなと改めて思い、「ハッカソンシチズンサイエンス」という論文ちゃんと書くかーという気分になった。

北大CoSTEPモジュール2「表現とコミュニケーションの手法」を受講しました #costep

f:id:yumu19:20200822124125j:plain 今年度、北海道大学 科学技術コミュニケーター養成プログラム (CoSTEP) を受講しています。

CoSTEPの講義はモジュール1からモジュール6まであります。その2つ目が終わり、以下のようなレポートを提出しました。

モジュール2 レポート

モジュール2の講義で取り上げた、3つのコミュニケーションの手法(プレゼンテーション、ライティング、映像メディア)について、コミュニケーション上の特徴をまとめてください。そして、自分がこれまで実践している(あるいはこれから実践しようとしている)科学技術コミュニケーションに資する活動に、どのコミュニケーションの手法を取り入れることで、どのようなプラスの効果をもたらすことができるのかを、具体的に述べてください。(800〜1200字程度)

■プレゼンテーションによるコミュニケーションの特徴

 プレゼンテーションは、時間と場所を共有して同期的に行うコミュニケーション手法である。話者と聴講者の距離が近く、直接的なコミュニケーションができる双方向性を持つ。コミュニケーションの最中に、聴講者の反応を見ながら適切な説明方法を選択することができる。  プレゼンテーションを撮影した動画がアーカイブとしてWebにアップロードされたり、ビデオ会議ツールを用いてオンラインで開催されるなど、オンラインを活用した実施形式もある。この場合、特徴である双方向性が弱まる一方、時間と場所の制約が解消される。

■ライティングによるコミュニケーションの特徴

 ライティングは、書かれた文章をいつでも読むことができる非同期的なコミュニケーション手法である。3つのコミュニケーションの手法の中で、内容を正確かつ詳細に伝えることに最も向いている。ライティングでは、内容を大まかにわかりやすく記述することも、精密に記述することもでき、目的や対象に応じて内容の抽象度や説明の仕方を選択することができる。ただし、わかりやすい文章を書くには技術を要する。書く技術が低いと、意図通りに伝わらない。執筆と推敲にかかる労力も、プレゼンテーションに比べて大きい。  執筆された文章は、以前は書籍や新聞といった紙媒体に掲載されることが主流であったが、近年はWeb媒体に掲載されることも多い。現在、Webにおける検索は文字検索が主流のため、映像や写真に比べ、文章情報は検索性に優れる。そのため、調査の際に目にする可能性が高い。

■ 映像メディアによるコミュニケーションの特徴

 映像メディアは、受け手に強い印象を与えることのできるコミュニケーション手法である。映像は情報量が多く、上手く活用することで効率よく情報を伝えることができる。さらに、CGやアニメーションでの表現、ナレーション、テロップ、BGMなどを活用することで、より効果的な情報伝達となる。映像は演出によって伝わる印象を調整することができる。ただし、過剰な演出は誤解を招く可能性も高いため、演出方法には気をつける必要がある。  スマートフォンの普及、映像制作支援ソフトウェアの充実、動画配信Webサービスの増加により、コミュニケーション手法のひとつとして映像メディアを利用しやすくなった。ただし、依然として映像制作には非常に大きな労力がかかる。

ポッドキャストにライティングを取り入れる

 私は「品モノラジオ」というポッドキャスト番組を主宰しており、約5年間で約40件のエピソードを配信してきた。Maker Faireなどのものづくりイベントに出展している方たちをゲストに迎え、作品制作の詳細な話やその背景にある想いなどを語ってもらうことを趣旨とした番組である。ポッドキャストなので、基本的には音声だけを配信している。しかし、音声コンテンツには、情報の細部まで伝達することが困難であること、視聴に拘束時間が発生してしまうこと、検索性に乏しいことといった欠点がある。  これらの欠点を補うには、ライティングが活用できる。例えば、ポッドキャストで話した内容をインタビュー形式の記事としてまとめれば、より詳細な内容を伝えることができ、それはいつでも読むことができる。また、文字としてアーカイブされるためWeb検索でみつかりやすくなる。

モジュール2を終えた感想

モジュール2は、「イベント・フィールドワーク」「映像メディア」「プレゼンテーション」「ライティング」「アート」という、科学技術コミュニケーションを行う具体的な手法について学びました。

それぞれ90分の講義なので、この講義だけですべてを学ぶというのは難しいですが、限られた時間の中で多くのことを学ぶことができました。イベント、プレゼンテーション、ライティングは普段やることがとても多いのですが、科学技術コミュニケーションにおいて非専門家に向けてコミュニケーションを行う際のポイントを改めて意識しました。映像メディアとアートは、CoSTEPで学ぶことをとても楽しみにしてたトピックでした。映像メディアの講義は、担当の早岡先生が元テレビ局の科学番組のディレクターで、現状のテレビ番組制作の問題点なども交えつつ、映像制作における文法などをとてもわかりやすくまとまってました。来月、選科でも希望者が受講できる映像制作の演習講義もあるのですが、行けないのがとても残念です。

レポートは、プレゼンテーション、ライティング、映像メディアのそれぞれのコミュニケーション上の特徴をまとめ、これらを具体的にどう活かせそうかまとめるという内容でした。この3つのコミュニケーション手法は、それぞれ別の手法ではありますが、似た特徴も多く、3つの手法間での補完関係が成立しにくいように感じました。最初は、自分の研究を伝える時にどうするかというテーマで書こうかと思いましたが、まとめるのがなかなか難しかったので、この3種類以外の手法を用いている活動としてポッドキャストを選び、それをライティングで補完する方法を書きました。実際、ポッドキャストがWeb検索に引っかからず特定コミュニティ外にリーチしないという課題は大きく、内容をWebに載せることは相互補完的で相性が良いと思いました。知ってる事例では、かまぷとゆうこのデベロッパーズ☆ラジオ がそのような感じでポッドキャスト配信とWeb記事掲載を両方行ってます。

何か伝える時、プレゼンをするのか、文章を書くのか、それとも、映像を作って見せるのか。これは、多くの場合、イベント等の機会の形態によって自ずと決まるもので、これらの特徴を吟味した上で取捨選択することはあまりありません。ただ、こうした取捨選択の一部は無意識的に行ってることかもしれず、そういう意味では、改めて意識したことは重要だったかもしれません。コミュニケーション手法というのは、講義で紹介されたものに限らず、たくさんの手法があるので、より適切な方法を持ち出せるよう、普段からひきだしを多く持っておくことが大事なのかもしれません。

「オンラインでもできる」ではなく「オンラインだからできる」 #DIYMUSIC #劇団ノーミーツ #むこうのくに

f:id:yumu19:20200727081727p:plain 週末に観たDIY MUSIC on Desktopと 劇団ノーミーツ「むこうのくに」が面白かったので、紹介します。

DIY MUSIC on Desktop

Maker Faire Tokyo/Kyotoのスピンオフ企画で、2時間で8組のアーティストが自作の楽器や独自演奏方法を駆使して演奏するオンライン音楽ライブです。YouTube Liveで配信され、そのアーカイブが残ってます。

ねや楽器 @neyagakki さんのソルダリングシンセサイザーは、はんだづけでシンセサイザーを制御するパフォーマンス。このシンセサイザーの発想自体がすごいんですが、パフォーマンスもすごい。

HAUS++のパフォーマンスは、チャットにコード書き込むとそれが音楽になるというもの。観ている人もチャットに入ることができて、一緒に参加して音を鳴らすことのできる参加型の形態でした。

城一裕さんのパフォーマンスは、模様をプリンタで印刷して紙に溝を作って、それをレコードとして読み取らせることで音を鳴らすというもの。プリンタで印刷するところから見せていて、見せ方が面白いと思いました。

音楽系のイベントは現地開催ならではの楽しみもありますが、一方、機材を現地に持っていくのが大変だったり、会場の制約でできないパフォーマンスがありますが、オンラインだと自宅で自由にできるので、表現の幅は広がるなと思いました。また、現地のパフォーマンスでは手元があまり見えなくて何をやっているのかわかりにくいことがありますが、オンラインでは見せ方の工夫次第で手元や機材をアップにして写すこともできるので、操作方法などが細かく分かるのもよかったです。

Maker Faire Tokyoではいくつかあるステージの一つが音楽専用ステージになっていて、2日間ほぼずっとライブイベントやっているのですが、実際にMaker Faireに行くと、展示を見て回ったり、他のトークセッションを聞いたりするのに忙しく、音楽ステージにずっといて聞き続けるのはなかなかできません。今回の DIY MUSIC on Desktop は、2時間だけですが音楽ステージにずっといてステージを存分に楽しんでいるような感覚でした。しかも、音量は自由に調節できて、映像はキレイに見えて、家にいるので好きな姿勢で好きなものを食べ飲みしながらすごい快適な環境で観ることができて、すごい良かったなと思います。

劇団ノーミーツ「むこうのくに」

注意:具体的な内容には触れないようにしてネタバレは避けていますが、それでも内容や世界観に関するキーワードはいくつか出すので、これから観る予定で先入観を持たずに観たい方は読まない方が良いかも知れません。

Twitterでよく流れていたので劇団ノーミーツというのは見かけていたのですが、あまり詳しく把握してなくて、この4連休で公演していたことも知らなかったのですが、 @ochyai のノートを見てこれは絶対見なきゃいけないやつだなと直感して、すぐに申し込みました。

これ、めちゃくちゃ良かったですね。本当に観てよかった。

劇団「No Meets」ということで、演者・スタッフが一度も会わずに準備して稽古して上映もするというコンセプトになってます。オンラインなので各自が自宅で演じ、技術的な演出もリモートで実施してるそうです。

バーチャルワールドでZoomのようなビデオチャットを通じて話が進んでいきます。全体の世界観がサマーウォーズみたいなSFアニメの世界で、その中でストーリーが展開されていくので、SFアニメの中に演劇が入り込んだと言うか、演劇と映像作品の中間のような新しい表現方法だなと感じました。サマーウォーズの他にも、Serial experiments lainなど、いくつかの有名SFアニメ作品のオマージュと思われる要素がいろいろと混ぜ込まれています。

Webブラウザを通してみる観覧方法も、作品の中にいるような立ち位置で見ることができて、面白いなと思いました。メインコンテンツの動画プレイヤーの横には、チャット機能もあり、同じ時間帯に観ている他の人と意見やコメントを共有しながら観ることができ、新しい観覧方法かなと思います。ただ、チャット見てると物語にあんまり没入できないと感じたので、チャットはたまに見るくらい止めるくらいがいいのかなと思いました。途中からは、チャット気になるので別ウィンドウで隠してチャットを見えないようにしていました。チャット非表示機能があるといいかなと思いました。

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ビデオチャットベースで全部進むので、役名が常にウインドウに表示されていて名前を覚える必要がないのもよかったです。これは最初の公演では表示されてなくて、要望により後で追加されたそうです。アップデートが入って改善されていくのも面白いですね。

スクリーンショット撮影とSNS投稿がOKと言うか歓迎だったので、Twitterにも投稿しながら観てました。Twitter見てると、同じ回で @HomeiMiyashita 先生や @tks さん、@etsuko_ichihara が観ていたようで、他の人と一緒に観に行ってるような感覚が得られるのも新鮮でした。普段、演劇や映画を誰かと一緒に観に行くのがあまり得意ではなくほとんど一人で観に行くのですが、この劇団ノーミーツの観覧方法は、一人で気楽に観つつも他の人と空間や感動を共有できる方法だなと思いました。

ストーリーの主要なテーマに「友達を作る」というのがあります。このCOVID-19の状況では、人と物理的に会えない中でどうやって友達を作るかという問題もあり、今のこの状況でこそ共感できる部分が大いにあると思います。そして、この演劇自体が一度も会わないで作られているのですが、演者の皆さんがどう見ても一度も会ったことはないと思えないほどすごく仲が良さそうで、その辺りも内容と作品制作自体がメタに絡み合って面白いなと感じました。

08/01(土)〜02(日)にあと2回だけ追加公演があります。観てない方はぜひ!

おわりに

いま、オンラインイベントの数自体はすごく増えてますが、どちらかというと今までやってたことをオンラインで実現しようとするものが多いように感じます。移動しなくていいことやアーカイブが容易になるといったオンライン化による恩恵はものすごく多くて、それ自体はとても良いと思います。ただ、オンラインだから可能となるイベント形式や表現方法って何だろうというのは最近気になっていて、この2つのイベントではどちらもオンラインならではの表現方法を強く感じました。これからも、オンラインでしかできない表現がいろいろなところから出てくるのが楽しみです。