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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

長時間労働の問題を仕事効率の話と絡めるとややこしくなる



自分も現代人は働き過ぎと常々思っていて、 @ さんやござ先輩 @ やひがさん @ の言っていることにはすごく同意なのだが、こういう話題に付き物の


「長時間労働すると効率が落ちる。長時間労働をやめて生産性を上げよう!」


というストーリー。まぁ、それはそうかもしれないんだけど、いやいや、長時間労働の問題と解決目的はそこじゃないでしょ。

長時間労働の問題は、子育てや家庭の時間を持つことができなかったり、仕事以外の趣味の時間がなかったり、健康を害したりして「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が侵害されること。

長時間労働をすると効率が落ちて〜〜というストーリーはわかりやすいし、当てはまるケースは多いんだろうけど、勤務時間と生産性の関係性は業種、職種によるし、個人差にもよる。短期的にみると、効率が多少落ちてでも労働時間を長くするほうが仕事の生産量は大きくなるだろうし。

効率を評価軸にするなら「いろいろ調査と検討を重ねた結果、 1日16時間労働が最も生産性が高いことがわかりました!我社の標準労働時間を16時間にします!!」という会社もでてきたりするけど、それでいいの?


問題の本質はそこじゃない。


まぁ、「人権侵害だから長時間労働をやめよう!」とだけ叫んでも、インセンティブが働かないとなかなか変わらないので、長時間労働に偏った現状を是正するための一種の策なんですよね。

あと、サビ残労基法違反。それはまた別の観点からも問題だよね。

女性の雇用問題も

これ、女性の雇用問題にも同じことが言える。「優秀な女性を確保して、生産性を〜〜」というストーリーなのだが、やっぱり男性向き女性向きの仕事がある(全ての男性/女性が向いてる/向いていない、という意味ではなく、総じてその傾向がある、という意味で。念のため)し、生産性だけで語るのはどうなんだろう。


これに関しては @ さんのエントリをぜひ読んで欲しい。実体験を踏まえて書かれているので説得力がある。

「多様性が生産性を高める」というように実利を訴求したところで、おそらく皆がこの問題の解決に努力するようにはならないんじゃないかな、という事です。「多様性が生産性を高める」ことや「男性より女性の方が優秀である」という状況は、確実に存在すると私も思います。ですが、利益というものは、
他の種類の利益と天秤にかけられてしまうものです。「女性が参加する事でコミュニティに得られる利益」<「現状のままで得られる利益」という図式が成り立つ限りは、後者が選ばれるでしょう。


そうでなく、人の尊厳の問題として捉えてもらわなければなりません。
自分の母親や妻・娘・姉・妹・恋人・友人が、その尊厳を踏み付けにされるような世の中は嫌だ、と思ってもらう。
大事にしている人が誇りを傷つけられるか否か、という問題であると認識してもらう。

残業は悪か

話は長時間労働に戻る。ひがさんのエントリのタイトルにあった「残業は悪」。果たしてそうなんだろうか。

自分は

  • 残業したくない人に残業させるのは悪
  • 働きたい人は好きなだけ働けばいい


と思っている。かつ自分は、仕事と仕事以外の差ってあまり意識していなくて、それが有意義であれば仕事でも仕事じゃなくてもいくらでもやりたいと思ってて、なのでその有意義なことが仕事だったら長時間労働をしてしまうことになる。

ただ、自分が働きたいと思って働いているだけでも、それを見ている周り(特に部下、後輩)に影響を少なからず与えてしまうよなあ、というのは考えてしまう。難しい。。。他の人が働いていようといまいと好きな時に帰れる雰囲気をつくれるといいんだろうな。「残業(長時間労働)が悪」と言うよりは「短時間労働は悪じゃない」とするチームを作る方が理想かな。


「残業は悪」という表現も、長時間労働に偏った社会を是正するための、これも一種のアファーマティブアクションであるとは考えられるけど。仕事したくてたくさん働いている人も、他の時間を大事にしたくて残業しない人も、互いに嫌な思いをせずに、自由に働けるような世の中になるといいね!