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天才・異才が飛び出すソニーの不思議な研究所


新年の1冊目から、とってもいい本を読めたー。

天才・異才が飛び出すソニーの不思議な研究所

天才・異才が飛び出すソニーの不思議な研究所


ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の設立の経緯から今まで20年間の歩みが、前所長の所さんとライターの由利さんによって書かれた本。
ソニーCSLは、ソニーという大企業に属する研究所でありながら、他の日本の企業研究所とはまるで違う。何が違うかは、設立前の構想

・世界的にみて、極めて高いレベルの研究を行う研究所を「日本」につくる。
・世に貢献できる最先端の仕事、コンピュータ史に残るような仕事をする。
・世界に人材を求め、学位(Ph.D)取得者しか採らない。
・基本的には各研究者がやりたいことを自由にできるシステムにする。
・年次雇用の年俸制にし、研究者には自由に伴う責任を担って仕事をしてもらう。契約の継続、年俸については一年ごとに所とディスカッションする。
・年俸や環境については、国際的にも遜色のない条件・待遇を与え、優秀な人材の確保をはかる。待遇の基本として、すべての研究者に個室を与える。
p17


によく現れている。そもそも当時の日本にない研究所をつくろうとしたのだから、他と違って当然なのだが、

この研究所構想には、所が一九七〇年代後半からよく訪れていた米国の3つの研究所の印象が大きく影響している。AT&Tベル研究所、IBMトーマス・J・ワトソン研究所、ゼロックス・パロアルト研究所で、いずれも一時代を画した有名な研究所だ。
p18


というのを読んで、なるほどと納得した*1
ソニーCSLが企業研究所でありながら非常にオープンであることは、

 所の最も大事な仕事の一つは、「ソニーCSLに合う人」を採ることと所はいうが、「合う」とはどういうことなのだろうか?
 「第一に人とは違う視点、考えをもっていること。研究者としてオリジナリティが最重要。第二に自分の研究に情熱をもっていること。どんなに頭がよくても気持ちと時間を研究に集中させない限り成果は出ない。第三に人類と社会のために研究する善意の人であること。結果として金持ちになるのならよいが、金儲けを第一義に考える人は合わない」。
p65

暦本は、「『好きな研究を自由にやってよいといわれた時に、あなたは何をするか?』が、ソニーCSLの究極の問いかけであり、その答えを見つける場。また、多くの変人と知り合いになれる場所」といっている。
p238


という言葉からも覗える。
研究者にとって「企業研究所で働くか、アカデミックか」で迷うのは永遠の課題だろう。企業研究所では、現場での需要を元に(ニーズドリブン)研究を進められたり成果を製品・サービスに反映することが可能だが、研究テーマは企業の事業領域に縛られる。アカデミックでは、ある程度自由に研究テーマを設定できるが、短期間に成果を世の中へフィードバックすることが難しい。ソニーCSLは、企業研究所とアカデミックの両方のいいとこ取りができる、まさに理想郷のような研究所だなと改めて感じた。


最後に。本書には Koozyt もちょこっとだけ出てきます (Koozyt はソニーCSL発(初) のベンチャーです!)。CSLの系譜を継ぐベンチャーの Koozyt だからこそできることを考えながら働いていきたいなと思います。

*1:これらの研究所について詳しく知っているわけではありませんが