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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

大企業のエンジニアがするべき5つのこと


先日 大企業を辞めてベンチャーに転職しました という記事を書いたとおり、私は大企業に勤めていました。3年半というのは一般的に、とりわけ大企業においてはあまり長くない勤続年数ですが、それでも「やっておけばよかったこと」や「やっておいてよかったこと」はいくつもありました。ということで、今振り返ってこれはぜひやっておくべきだと思うことの中から、特に大企業ならではだと思われる5つのことを挙げてみました。

  • 勉強会に参加する
  • 他社製品を買う
  • 転職サイトに登録する
  • 自分の中で会社の契約更改をする
  • 自分の行動指針をもつ

勉強会に参加する

社内に閉じこもっていると情報が入って来なかったり考えが固まって新しい発想が浮かんで来なかったりする、というのはよく言われることです。大企業は、新卒で入って以来ずっとそこで勤めている人が多いと思います。そのため、そこでの文化や習慣が世の中の常識のように錯覚してしまうことが起こります。「ライフハック」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、世間では技術だけじゃなくて手法もどんどん進化しているので、そういう良い方法があるのを知らずにずーっと同じやり方でやっていたりするのは非常にもったいないですよね。

「コネをつくるぞ!」と意気込まなくても、単に情報収集とか気分転換として出かけてみればいいのかなと思います。特定の言語やフレームワークの話もあれば開発手法だったりライフハック的なこともあったりするので、↓から適当なものをみつけて参加してみるといいと思います。


という自分は全然行けてなかったのですが。これからいろんなところに顔出していきたいです。

あとは、その時にあまり話せなくても twitter でフォローしておけば、その後に定期的に連絡をとらなくてもふと何か連絡をとりたくなったときに気軽に連絡できると思います。本当にいい時代だなぁと感じます。

他社製品を買う

何か買うときに優先的に自社製品を買っている人は多いと思います。自社製品を買えば売上に貢献できるし、社内販売の制度もあったりするので自社製品を買うのが当たり前と思っているかもしれませんが、それはちょっと考え直したほうがいいかもしれません。

自分でお金を払って何か物を買うときって、すっごい調べますよね。というかちゃんと調べるのって買う時くらいですよね。そう、買い物というのは最高のベンチマークの機会です。それなのに、この機会を自ら逃すなんてもったいない!他社と自社の製品の違いを徹底的に調べて比較しましょう。

それに、社内で業務に使う製品は自社製品のみというところも多いと思うので、他社製品をきちんと使ってベンチマークする機会って自分で買って使う以外にはほとんどなかったりします。できれば他社製品を買って、使い込んで利点や欠点を比較してみましょう。

自分でお金を払って自社製品を買っても売上は1個しか増えないけれど、他社製品を買って何かヒントを得られれば自社製品の売上を10個でも100個でも増やすことができるのですよ。

転職サイトに登録する

転職希望の有無にかかわらず、転職サイトに登録してみることをオススメします。私は、転職サイトには、入社して1年くらい経った頃に登録してプロフィールを載せていました。これは転職の準備と言うよりは、どんな企業が募集をかけているのか、オファーはどれくらいくるのか、という本当に単なる興味本位で登録していました。

転職サイトに登録する際には、自分のその時点までの仕事を短めの文章にしてまとめます。自分のポートフォリオを定期的にまとめ直すことで、自分の手持ちの武器を確認することができます。これは、この先自分は何を身に付けてどういう方向へ行きたいのか考えるのに役立ちます。

また、社外の人や専門外の人向けの説明を考えることは、自分の仕事の客観的な位置づけを確認する機会になります。社内の人にするような説明を同じように社外の人にしたら全然通じないということも起こると思います。私は、ある業務でアイディアを試作してみるという「開発」をやっていました。これも開発の一種には違いないのですが、おそらく世間一般でイメージされる「開発」とは異なります。「プロトタイプ作成」という表現を使ったほうがより理解してもらいやすいと思います。

あとは、もし機会があればエージェントにお会いしてみるのもいいでしょう。自分の今の給料が他の職業と比べてどうなのか等なんでも聞けるので、自分の仕事や立場がより客観的に見られると思います。

自分の中で会社の契約更改をする

プロ野球選手は、毎年(or複数年に1回)シーズンオフに契約更改しますよね。チームが、来年もその選手を雇うかどうか決めるのです。これと同じように、自分がこの先も今の会社で働きたいかどうか、1年に1回程度考えてみる機会を作りましょう。やり方は以下の通り。

  1. 自社以外に自分が働きたい企業をいくつか挙げてみる
    • 「もし今の会社がなくなったらどこに行くか」を想像すると考えやすいかも
  2. それらの企業に自社を加えて、自分が働きたいランキングをつくってみる
  3. なぜその順位になったのか振り返り、自分の中で職場に求めるものが何かを考えてみる
  4. 実際には転職のハードルは高く、諸々の事情を込みで考えると大抵は自社が1位になるはず、そこで、転職の障壁となっているものは何かを洗い出す
  5. どう頑張っても自社が1位に来なければ、それは転職するべき時が来たのですw


これをすることで、自分が何を求めて働いているのか、今の会社にそれがあるのか、転職しない理由は何なのかを自分の中で強く意識できるようになります。定期的に繰り返し行うことで、自分が重視するものが変わっていたり、転職の障壁となっていたものが既になくなっていることに気づいたりするかもしれません。

会社なんていつ潰れたり買収されるかわからないので、もし本当に会社がなくなったときには役立つと思います。

自分の行動指針をもつ

程度や表現の差はあれ、どんな組織もピラミッド構造をしています。そして、組織が大きいと一番上から末端に伝わるまで多くの人を経由し、情報が正しく伝わって来なかったり、そもそもこの仕事がどこから発生したのかわからなくなったりします。「何のためにやっているかわからない」状態で仕事をするのは精神衛生上よろしくなく、組織や個人の生産性を低下させます。そこで、「自分の行動指針」を持つことを薦めます。

行動指針という単語は土光敏夫氏の 経営の行動指針 からとったものですが、ここでいう行動指針とは「何を最優先にして、どのように行動するか」ということです。

ドラッカー先生が

顧客を定義せよ


と言うように、自分の仕事が上司のためなのか、取引先のためなのか、エンドユーザのためなのか、自分で決める必要があります。

さらに、自分の顧客のためにすべきことは何なのか見出すのも、結構難しいことです。例えば、自分の顧客を製品の「エンドユーザ」と定めたとしましょう。そして、ある製品について、部長と話し合っています。内容は、今度売り出すある製品の機能についてAとBのどちらがいいか。自分はエンドユーザの使いやすさを考えると絶対にAがいいと思っているのだが、部長はお気に入りのBで話を進めようとしています。

ここで、エンドユーザのことを考えて、Aを強く主張したほうがいいのでしょうか?

実は自分はこの次の新製品も開発中で、この新製品はとっても便利できっと多くのエンドユーザに役立つはずのものです。しかし今ここで部長の機嫌を損ねて関係を悪化させてしまったら、せっかくのこの新製品を売り出せなくなってしまうかもしれない。「エンドユーザ」の最大幸福を考えて、ここは部長の言うことを黙って受け入れよう。

という場合もあるかもしれません。

「そんな組織腐ってる!」と言ってしまえばまあそうなのかもしれませんが、世の中は理想状態ではなくもっともっと複雑系です。たとえ誰にも悪意がなかったとしても、いろいろな意思や思考や意図や思惑が絡まりまくってます。組織が大きければなおさら。そうなったときに迷わないように、そして自分の精神衛生を良好に保つために、自分なりのブレない行動指針を持ちましょう。

追記

大企業に就職した「将来有望な若者」が本当にしなければならないこと - 常夏島日記 という、厳しめですが素晴らしいエントリーをみつけたので、載せておきます。