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「博士号」の使い方 2


「博士号」の使い方 2

「博士号」の使い方 2


前作 「博士号」の使い方 がとても面白かったので、2 も期待して読んでみた。いろいろな人のエピソードを知ることが出来るという点では期待通りだったのだが、エピソードとしては前作のほうがインパクトがあったなあという印象。読み慣れてきたため単調に感じるようになってきた、というのもあるかもしれない。


紹介されている人たちは全員博士号保有者なので基本的には博士課程に進学しているわけだが、博士に進学した理由としては「修士課程の研究を続けたいと思った」「就職したが、やはり研究をやりたいので大学に戻った」程度にサラッと書いてあるだけである。博士課程に進学する理由は人それぞれ異なるし、決めるに至るまでそれなりの考えや覚悟があったはず。紙面の都合はあるだろうが、その辺の思いを詳しく知りたいと個人的には思うし、思いを書く事で内容がより惹き立ち記事が面白くなるのではないかと思った。


本の中で、とある研究者の方針として

「学生には、私や先輩の研究テーマのコピーは決してさせません。独自の視点で難しい問題にチャレンジしてこそ、自分だけの技術が生まれるのです」。


というものが紹介されていた。研究室の研究テーマの決定方針は、大きく分けると「個別テーマ型」(それぞれが個別の研究テーマを持って問題に取り組む) と「集中テーマ型」(ある程度研究テーマを絞ってみんなで共通の問題に取り組む) になると思う。本に書かれていた先ほどの研究室は典型的な個別テーマ型であろう。わたしが所属していた研究室は、学部の研究室は個別テーマ型、修士の研究室は集中テーマ型であった。そのためそれらの違いについては認識しているつもりである。それぞれ特徴をあげると、

  • 個別テーマ型
    • 学生がそれぞれ違う研究テーマに取り組む (一人一芸)
    • 研究テーマ(課題や問題点)を一から探さなければいけない
    • 同じテーマの先輩がおらず、指導教員以外に専門的な指導をできる人がいない
    • いろんなテーマの人が周囲にいることで得られる知識が広がる
    • 知識が広がることで様々な角度から問題を見つめ、アプローチを取ることが出来る
    • 人によって所属学会が違ったりすると、文化の違いを実感できる
  • 集中テーマ型
    • 学生がチームとなり同じ研究テーマに取り組む
    • 研究テーマ(課題や問題点)は過去の研究成果からある程度見えている
    • 先輩から専門的な指導を受けられたり、ノウハウの蓄積がある
    • 他の分野の常識に触れられず、自分たちの分野の常識が世界の常識だと思ってしまう


これらはトレードオフの関係で、どちらが良い・悪いの問題ではない。ただし、ひとつだけ注意しなければいけないと思うのは、短い期間で研究成果を出しやすいのはおそらく後者の集中テーマ型の研究室であろうということだ。その研究テーマでの課題がわかっており、手法も既に確立されているので、すぐに研究にとりかかることができる。成果を出す期間が重要となるのは、修士論文、博士論文を書くまでの期間が限られているためというのはもちろんだが、最も切実なものとして学振への影響がある。


博士課程へ進むにあたりいろいろと考えさせられるのが生活費の確保だが、最もメジャーなのは日本学術振興会(通称 学振)の研究員として研究奨励金という名のお給料をもらうという方法である。最初に申し込むのは修士2年の5月であり、それまでに研究成果を出している方が採用されやすい。そのため修士に入って1年ほどという短い期間での成果が重要となる。


当然、個別テーマ型の研究室でも、他大学との共同研究などの工夫や個人の努力で研究成果を上げることはできるだろう。ただやはり、教員は研究室を運営していく上で、学生は研究室を選ぶ上でこのような違いがあることは認識しておくべきであろう。