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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

書籍紹介『「ハードウェアのシリコンバレー深圳」に学ぶ』

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深圳で電機メーカーを経営する藤岡さんの本。帯に「たった一人で深圳へ乗り込んだ、若き経営者の10年奮闘記」とあるように、藤岡さんが深圳で起業するに至る経緯から、深圳での工場経営の苦労など、まさに半生記として記されている。現地で社員を雇用して工場運営する上で身についていった深センの文化などもよくわかる。

日本のハードウェア・スタートアップも、量産を深センでする場合が増えているが、量産するときに単に単価の安い工場として深センを使ってもダメで、エコシステムに上手く乗らなければいけない、ということがよくわかる。

ニコ技深センツアーで藤岡さんの会社「JENESIS」の工場見学に行ったときにもお話しを伺ってとても興味深かったのだが、この書籍ではその興味深い話がより凝縮されて余すところなく書き記されていて、読み進めるのが惜しくなるくらい面白くてあっという間に読んでしまった。

以下、書籍の本文中から、気になった文を抜粋

  • 有象無象の会社を知っているだけでは役にたたない。どの企業が信頼がおける会社なのかを知り、彼らと表面上ではなくビジネスの付き合いができるようになって初めてネットワークを作ったと言える。
  • お年玉を貯めてこの商品を買ってくれた中学生はがっかりしないだろうか
  • (华强北の)モデルとなったのは秋葉原の電気街
  • 海賊版を作っていた会社と展示会で商談
  • 初めてハードウェア製造に挑むスタートアップ企業は私の提案を受け入れないことが多い。
  • 小ロットでも低コスト短納期の開発製造が可能な点が深圳の魅力だが、ひとたびエコシステムから外れると、こうしたメリットは一気に減じてしまう。
  • ハードウェアの性能は必要最小限に抑えること
  • クラウド側でできること(クラウドコンピューティング、ストレージ)はクラウド側に全部やらせるべき
  • 世界に1つしか存在できない、稀有な場所が深圳

「IoTシステムの開発プロセスにテストベッドはどのように貢献できるか?」をSIGPX4で発表しました

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2018/03/02(金)に東京大学で開催された SIGPX4 で「IoTシステムの開発プロセスにテストベッドはどのように貢献できるか?」を発表しました。

スライド

予稿(6ページ):https://goo.gl/bgrkgc

発表概要

IoTシステムのための開発・検証環境を構築するため,ソフトウェアの特徴を活用したIoTテストベッドについて検討する.IoTテストベッドの事例と,著者らが提案するBluetoot Low Energyのエミュレーションシステムについて紹介する.IoTテストベッドの参考となる事例として,IoTプロトタイプ開発ツール,実環境のデータを活用する開発ツール,仮想環境のデータを活用する開発ツール,Webブラウザを活用したシミュレータと実機のシームレス開発ツールの例を挙げる.本稿での論点をひとことで表すと,Mark Weiserが提唱したユビキタスコンピューティングにおけるシステムの開発をどのように行うか,であると言える.この論点における重要な観点として,「プロトタイプ開発からプロダクション開発への壁」と「IoTシステム開発においてstaging環境をどのように用意するか」の2つについて議論する.

SIGPXとは

SIGPXは、プログラミングのための環境と、その環境が提供する体験の設計に興味を持つ人で集まり、最新の研究動向や事例について情報交換する会です。

感想など

  • 普段漠然と考えている「IoTシステムの開発プロセスにテストベッドはどのように貢献できるか?」について、議論する良い場であり、考えをまとめる良い機会になると考えて、そのままのタイトルをつけて発表しました。
  • 今回は原稿の投稿システムがあり、これが考えていることを整理するきっかけとしてとても役立ちました。この仕組みは、もともとは査読付き論文として投稿する予定の原稿に対して本投稿前にコメントをもらうためのものなのですが、ふわっとした原稿を予稿として投稿するのに活用させて頂きました。
  • 原稿にまとめたことで、「Mark Weiserが提唱したユビキタスコンピューティングにおけるシステムの開発をどのように行うか」という切り口と、「プロトタイプ開発からプロダクション開発への壁」と「IoTシステム開発においてstaging環境をどのように用意するか」という論点で整理して、さらにこれらをもっと深掘りできそうという感触が得られました。
  • ログ用のGoogle Docsがあり、発表の概要や質疑応答のログ、さらに聴講者の感想やコメントが参加者によって記述されていくので、発表者としては発表後に見直すことができて大変ありがたかったです。学会の研究会もこういうシステム取り入れられればいいのになあ。

2017年に読んだ本

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2017年は10冊読んだようです(スクショの9冊 + 発売前レビューが1冊)

少ない。。。移動時間はあまり疲れないようにマンガを読むようにしてたからというのが大きいんですが。

「1000冊読むと価値観が変わる」的な話をよく目にするので、とりあえず1000冊は読みたいと思ってるのですが、通算361冊でまだまだなので、今年からは読むペース上げていきたいと思います。

2017年の振り返りと2018年に向けて

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あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

仕事としての研究生活

昨年は、メインの研究テーマとして、Bluetooth Low EnergyのコントローラをLinuxアプリケーションで実装するエミュレーションシステムの研究に取り組んでました。設計と実装をして、8月の情報処理学会UBI研究会で発表し、性能評価した結果を国際会議PerFoT(IEEE PerCom共催ワークショップ)に11月に投稿し、無事採択されました。PerFoTの発表は3月にアテネです。PerCom行く方いたらアテネでご飯行きましょう!

加えて、サブ的なテーマとして、マルチエージェントシミュレータと通信エミュレータの連携システムの研究もしていて、デモ展示のためのビューワをUnityでをつくったりもしました。Unityはいままでもちょっとずつ触ってたのですが、初めて人前で披露するようなアプリケーションとして完成させるところまでつくりました。このデモは、歩行者が任意のタイミングで通話を行うもので、描画だけでなくて実際にStarBED上に立てたSIPサーバで通話パケットを流してます。Interop Tokyo 2017で披露したあと、NICTオープンハウスとSC17(@Denver)で展示しました。

このデモシステムに関するまとめを、合同エージェントワークショップ&シンポジウム2017 (JAWS2017)ポスター発表 しました。JAWSは初参加で、マルチエージェントシステムといえば人や車の流れを扱う災害や交通の話はユビキタスコンピューティングにも関連するわりと身近な分野なのですが、それ以外にも経済や社会科学系の多様なトピックがあって、セッションがすごく面白かった。たまにちょっと違う分野の研究会に行くの大切だなあと改めて思いました。

あとは、情報処理学会の特集に記事を書きました。

仕事以外の研究生活

2017年9月が在学期限だったので、そこで単位取得満期退学をするために、副テーマ完了と博士論文の骨子を最優先で取り組んでました。もともと2016年で博士修了する計画だったのに、修了しないまま2017年を過ごしてきたんですが、時間がずっと2016年で止まってる感覚がしてすごい違和感ありました。だからといってどうすることもできないんですが。。。

まず、明大中村先生とやっていた副テーマ研究を完了させ、情報処理学会EC研究会で発表しました。3月に予備実験、4月本実験をして原稿書いて、6月に発表。実験に協力してくれたJAIST丹研と明大FMS中村研の皆さん、ありがとうございました。

次に、博士論文の骨子を書いて提出しました。これが6〜7月。詳細は下記エントリで。

単位取得満期退学のための要件が揃ったので、9月末に無事単位取得満期退学をしました。ついに学生じゃなくなりました。退学後2年以内は博士論文審査を申し込むことができます。

あとは、srt.jsハッカソンでつくったChef*moを12月に情報処理学会EC研究会で発表しました。

その他

講演

3月のCIVIC TECH FORUM 2017で、Code for Kanazawaの福島さん、日本UNIXユーザ会/さくらインターネットの法林さんと「社会インフラとなったオープンソースコミュニティに学ぶコミュニティ運営のコツ」というセッションに登壇しました。この様子はWIREDのWeb記事としてもまとめて頂きました。

また、引き続き福島さんにお声がけ頂き、ITビジネスプラザ武蔵での金沢市開催トークイベントにも登壇しました。こちらも記事にまとめて頂いたのですが、取り留めのない話をすごく丁寧にまとめてあって、本当に驚きました。ありがとうございます!

品モノラジオ

月1を目標にしてたはずのペースがだいぶ落ちてますが、ゆるゆるとやってます。2月にWebサイトのリニューアルをしました!5月に落合陽一 @ さんに出てもらった効果で、購読者数とYouTubeチャンネル登録数がだいぶ伸びました。

ダイエット

腹筋を割る会に巻き込まれて、いっちょやってみるかと思って調べたら、腹筋を割るためにはまず脂肪を落とさないといけないという(当然の)事実に気づいたので、筋トレ、ランニング、炭水化物を摂るのをやめて8kgくらい痩せたんですが、最近は運動して無くて3kgくらい元に戻りました(トータルで -5kg)。

あと、走るのは元々まあまあ好きで、金沢マラソンに申し込んでみたら当選したのですが、お金を払うのを忘れてて当選無効になりましたorz そこからやる気をなくしてしまったのと、忙しくて気持ちの余裕がなかったのと、寒かったので、昨年の後半はあまり走れませんでした。。。

コンサドーレ

コンサドーレがJ1に上がったのと、DAZNが放映権を取って¥1,980/月で見れるようになったので、予定がかぶってた数試合を除いてほぼ全節みてました。毎週末楽しみがあるのはいいですね。昨年は、少なくとも土日のどちらかはできるだけ家にいる(予定を入れない)ようにしようと思ってて、それの後押しにもなった気がします。無事残留でき、来シーズンからは監督がミシャになるのでますます楽しみです。

所感と2018年に向けて

仕事

石川に来て(=NICTに入って)3年が経ち、4年目に突入しました。大学の学部に置き換えて考えると、入学してからちょうど卒業年度まで来たわけですね。もう結構長いこといるなあw NICTというまぁまぁ大きなお役所的な組織にいながらも、職場のStarBEDには20人程度しかいなくてベンチャー的な感じもあって、なかなか面白いところでやってます。NICT来てから周りの様子を見つつすごしてきましたが、3年いて学んだことは「空気を読まずにやりたいことやったほうがいい」です。これからもいろいろやっていこうと思います。

あと、D取得後の後のこともよく聞かれるのですが、ぶっちゃけ何も決まってません。自分の得意なことやそれを生かしたキャリアについていろいろ考えたりもしますが、まずは目の前の研究をしっかりやって研究成果を積んでいきたいと思います。幸い、任期もあと3年ほどありますし(こういう面では、博士研究と就活を並行しなくていい社会人Dは便利ですね)。特に、トップカンファレンスに通すような研究をしたいなあというのはここ最近強く思ってます。博士のリミットが迫るにつれて、トップカンファレンスを狙う気持ちの余裕がなくなってくるのがよくわかったので、博士の目処がついてから。。。ネットワーク界隈だとCHIやSIGGRAPHが通じないし、HCI界隈だとSIGCOMMやNSDIが通じないので、どっちでも通じるUBICOMPを狙いたいです(まぁ、言うのはタダなのでw)。

博士論文

崖っぷちなのは相変わらずですが、一年前と比べるとだいぶ道筋が見えてきたので、D取得まで引き続きがんばります。査読論文の採択状況によるのですが、スムーズにいけば2018年12月にはD取得したいと考えてます。そうなると来年夏〜秋頃が忙しさのピークですかね。ついに博士論文執筆・・・!まだ少し時間はあるのですが、これからD論を毎日少しずつ書いていきたいと思います。毎日最低1時間は博士論文関連のタスクに集中する時間を設け、ハッシュタグ #湯村博士論文 をつけて毎日進捗をツイートしていこうと思っています。

とは言え、研究以外の活動を完全に止めるというのも自分の性格上無理そうなことがわかったので、博士論文執筆に支障のない範囲でその他の活動を続けていきたいと思います。今年は機械学習の勉強とMashup Awardsで優勝するための作品作りをしたいと思っていて、研究以外のリソースは主にそれに割く予定です。

まとめ

1年前のエントリ では「自分の時間を取り戻そう」と書いたんですが、これはわりとうまくいったなという実感があります。「小さい石で埋めてしまうと大きい石が入らない」という話 もあるように、時間をはじめとしたリソースは有限なので、自分が大事だと思ったことにきちんと注力してやっていこうと思います。