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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

Mashup Awards 2017 参加まとめ #MA_2017

f:id:yumu19:20171226230117j:plain 毎年楽しく参加しているMashup Awards(MA)に今年もいろんな形で参加しました。楽しかったー。運営の皆様本当にありがとうございました!!

応募作品

今年は

の2作品を応募しました。

Chef*mo

Chef*moは、昨年の最優秀賞の @ さんの作品srt.jsを使ったハッカソンでつくったものです。

srt.jsハッカソンで最優秀賞を頂いたので、そのまま2nd Stage進出になりました。全作品中で2nd進出一番乗りでした!残念ながらFINAL進出はならず。

T-shirtizer

昨年まで2年連続で制覇中の北陸予選に今年も出たかったので作った作品です。APIリストをながめて、Tシャツを簡単に作れるSUZURI APIが面白かったので、これを生かした作品として、オープンデータ画像などのいろんな素材をTシャツにできるWebサービスを作りました。

作ってる時は「これはめちゃくちゃ面白いサービスだ!」と思ってたのですが、北陸予選では敗退し、オンライン予選やその他の賞にも全く引っかかりませんでした。いま冷静に振り返ってみると、わりとありきたりなアイデアだなこれ。。。

FESTA

自由演舞

昨年のコミュニティ対抗LT大会に引き続き、今年も「[https://www.facebook.com/groups/IoTLT/:title=IoTLT」「TMCN」「Mashup Awards」そして「おうちハック同好会」の4コミュニティによるプレゼンテーションをしました。今年は自由演舞。ということで、おうちハック同好会は「史上初!?スマートスピーカーとのトークショー 〜2017年のおうちハックを振り返る〜」というタイトルで、人とGoogle Homeによる対談プレゼンを行いました。

↑だと音声が小さいと思うので、バックアップ用に撮影した練習動画も上げます。

自由演舞ということで、おうちハック同好会っぽいことが何かできないかなと思って、スマートスピーカーとの対談というのを思いつき、当時半額セールだったGoogle Homeを急遽注文してプレゼンすることにしました。スライドの最後の方に書いてますが、IFTTTを使って定型文のトリガとレスポンスを指定してます。プレゼン本番のマイクを使った音響環境だと聞き取りが少し難しいようで、「よくわかりません」「お役に立てず申し訳ありません」という反応を連発してましたが、この反応は仕込みではないですw

基調講演

塚田さんの「研究にする話」と、武地さんの「ビジネスにする話」が、どちらもほんとうに良かった。常日頃から死ぬまでには両方で成果残したいと思ってたので「これは俺のためのキーノートトークか!?」と思ったほどでした。

職業が研究者なので、論文化についてはいつも考えてて、今年作ったChef*moは研究会で発表しました。

個人賞

2ndで一番面白かったので。あと、Chef*moの一機器としても使えそうなので。 この他に、FINAL進んだので個人賞候補からは除外したのですが、

も、とても良かったです。

感想と今後の抱負

  • GROOVE最優秀賞おめでとうございます!改良を続けてた話をプレゼンで聞いてたので感動した。
  • 武地さんもまなみんも「自分が本当に作りたいものを作れ!」(意訳)と言ってたけど、結局のところほんとそれだなあと思った。作りたいもの作ろう。
  • MAで優勝するには高い天使度と悪魔度の両方が必要。MAでは天使度高い作品は多いけど、悪魔度高い作品は限られてる。過去を見ても優秀作品に選ばれるには悪魔度が肝。

天使度と悪魔度: 研究法(Claimとは)

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  • ちょうど久下さんがnoteに書いてたけど、悪魔度を上げるにはチームを組んでスキルを補完しあうのが向いてる。
  • なんでも自分でやってみたい性格なので基本的に一人でつくることが多かったけど、チーム組むのもやってみたい。できるだけ自分と異なるスキルセットの人と。てことで、これからはチーム組んでやるのも検討してみよう。

「Chef*mo: 動画が調理器具を制御して調理を支援するシステムの提案」をEC46で発表しました

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2017/12/22(金)〜23(土)にグランフロント大阪で開催された情報処理学会 第46回エンタテインメントコンピューティング研究会で「Chef*mo: 動画が調理器具を制御して調理を支援するシステムの提案」を発表しました。

スライド

研究報告(論文):https://goo.gl/6oJHh4

デモ動画

概要

  • 料理動画に調理スクリプトを埋め込み、動画の内容に合わせて調理器具を制御して調理支援を行うシステムを提案
  • コンセプト実装を行った
    • 動画とIoT機器の連携フレームワークsrt.jsを用いた
    • 「かける」「混ぜる」「切る」の3種類の調理行動を実装した
  • 議論と課題をまとめた

いきさつ

本研究は、2017/06/19にMashup Awardsのイベントとして開催されたsrt.jsハッカソンで生まれたものです。

論文にも謝辞として掲載しました。 f:id:yumu19:20171225001312p:plain

イデアを形にしてみると、これは研究ネタとしてもいけるんじゃないかということで、論文化しました。いま、大きなテーマとして情報と物理空間と人間のインタラクションに興味を持っていて、その枠にも入るような内容だと思ったので。テーマ的に料理系はいままでやったことのない完全に新しい分野の研究だったのですが、さらに、メタ研究的にも以下のような新たなチャレンジがありました。

  • 本業外でのプライベートプロジェクト
  • コンセプト重視での研究進行

本業外でのプライベートプロジェクト

今回は、組織の仕事とは無関係のプライベートプロジェクトとして取り組んでます。内容としては広義にはスマートホームの研究なので、仕事と絡められないこともないとは思ったのですが、せっかくなので、完全にプライベートの研究として取り組んでみました。ニコニコ学会βで打ち出していた「野生の研究」の一例になればいいかな、という思いです。(まあ、この辺は若干後付けではありますが)

コンセプト重視での研究進行

そして、実装はしたものの簡単なコンセプト実装にとどまっていて、評価は行ってません。代わりに、サーベイに基づく本研究の位置付けと、コンセプト実装によって得られた知見に対する議論に注力して書きました。ここまでしっかりと研究の位置づけを整理して書いたのは初めてだったので、結構苦労しましたが、この経験は今後の論文執筆に活かせそうな気がします。また、料理研究の取り組んだのは初だったのでサーベイはだいぶ網羅的に調べたのですが、サーベイしていると結構いろんな人達が過去に料理に関する研究に取り組んでることがわかり、「HCI研究者が一度は通る道」という感じがしました。

家電とおうちのプログラミング+α

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本エントリは おうちハック Advent Calendar 2017 の1日目です。Advent Calendarとは、12月1日〜25日まで1日ずつ担当を決めてみんなでblog記事を書いていく企画です。

はじめに

情報処理2017年11月号の「プログラミング・エクスペリエンスの新潮流」という特集で、おうちハック(=家にある機器などをハックしてより便利におうちを使えるようにする)におけるプログラミングについてまとめ、「家電とおうちのプログラミング」という記事を書きました。本エントリは、この情報処理に掲載した記事に加筆・修正を行ったものです。

情報処理 2017年11月号

情報処理 2017年11月号

情報処理学会員の方は、無料でPDFをダウンロードできます。

ちなみに、この特集を企画した加藤淳(@)さんは、第一回おうちハック発表会のキーノートスピーカーでもあります。

IoT時代の家電

家電といえば、分厚い説明書を読みながら、ボタンがたくさんついたリモコンを難解な手順で操作するというイメージがあるかもしれません。しかし、Internet of Things(IoT)の流れとともにネットワークと接続する家電が増え、操作の概念も変わってきています。

例えば、色や明るさを変えられる電球hueは、スマートフォンアプリから操作でき、事前に設定したスケジュールに合わせて点灯する機能をもちます。屋内や屋外の気温や湿度、二酸化炭素濃度などを計測するガジェットnetatmoは、Webブラウザやスマートフォンアプリでデータを監視することができます。さらに、モジュールを追加購入することで風力や雨量などのデータも取得可能となります。

Amazon EchoやGoogle Homeなどの音声で操作するスマートスピーカーは、米国を中心に普及が進んでいます(というのが元の記事を執筆していた夏頃の所感ですが、いまや日本でも発売が開始されて注目されてます)。スマートフォンでアプリをインストールするのと同様に、Echoでは、スキルと呼ばれる様々な機能をAlexa Skills Marketplaceからインストールすることができます。

マッシュアップによるカスタマイズ

上で紹介した機器は、もともと便利で多様な機能を持ちますが、IFTTTやZapierなどのマッシュアップサービスをつかって組み合わせることで、より高い利便性を発揮するようになります。

IFTTTは、自分のためのオリジナルアプリケーションを簡単に作ることができるサービスで、「IF」というトリガと「THEN」というアクションを指定することで動作を定義します。例えば、燃えるゴミの日の朝に玄関の照明色を赤くしたり、帰宅時に最寄り駅に到着した頃に部屋のエアコンを点けたりするといったことが可能となります。IFTTTでは、IFとTHENを選んでパラメータを設定するだけで動作を決められるので、プログラミングの知識がなくてもスマートフォンアプリの設定をするような感覚で使うことができます。Zapierも似たようなサービスですが、1つのトリガに対してフィルタとアクションを複数設定できるより高機能なものになっています。

このような時代の流れの象徴と言えるデバイスがMESHです。MESHは、タグと呼ばれる5cmほどの大きさのブロック型デバイスを組み合わせて、独自のアプリケーションをつくることができます。タグには、ボタンタグ、人感タグ、温度・湿度タグなどの種類があり、タグをどのように組み合わせてどう使うかは、iPadアプリの専用ツールを使って設定します。このアプリは、モジュールの入力と出力を線でつなぐビジュアルプログラミングツールで、プログラミングに馴染みのない層にも扱いやすいようにできています。小学生を対象にしたワークショップにも活用されます。

MESHのレシピサイトやFacebookのユーザグループには、たくさんの活用事例が載っています。

MESHが出たときには「おうちハックのためのデバイスはこれだ!」と感動し、MESHプロジェクトリーダーの萩原さんには、第4回のおうちハック発表会でキーボートスピーチをしてもらったり、@ さんと私で不定期にやっている品モノラジオにもゲスト出演して頂きました。

おうちハック

おうちハックでは、既存のWebサービスAPI、ガジェット、さらに先述のIFTTTやMESHを活用したマッシュアップがよく行われます。凹(@)さんは、家電の音声操作や自動制御のシステムを自宅に構築しました。

id:bohemian916 さんは、様々なトリガーデバイスと照明などの家庭内デバイスをIFTTTとmyThingsで組み合わせました。

@ さんは、赤外線モジュールやロボットアームを使って、家庭内の様々な機器をHomeKit対応にしました。

また、おうちハックのために家の中のデータを取得したいという需要がありますが、先述のnetatomのようなセンサガジェットは高価なものが多いです。そのため、安価なセンサ部品を購入して電子工作を行うことで、様々なセンサガジェットが自作されています。ArduinoRaspberry Piといったプロトタイピング用のマイコンボードや、TWE-Liteのような低消費電力無線モジュールの普及によって、ガジェット自作の障壁は下がっています。ミクミンP(@)は、お風呂のお湯の水位を監視するセンサを自作し、お湯がたまると初音ミクが歌って知らせてくれるシステムをつくりました。 - おうちセンサでキャラクターと暮らしてみた

おうちプログラミングの未来

おうちハック発表会を始めた2014年頃は、Web経由で操作したりマッシュアップできるようなガジェットはポツポツと出始めていた時期でしたがそれほど多くなく、Arduinoなどをつかってわりと力技でハックしていた事例が多かったと思います。それが、IFTTTやmyThings、Zapierなどのマッシュアップツールをつかって組み合わせるだけで自分専用のツールをつくることができるようになりました。MESHのように、動作をビジュアルプログラミングで設定できるデバイスも出てきました。このようなインタフェースは、今後増えていくと思います。

また、おうちプログラミングで操作する対象も、従来の家電機器だけではなく、広がっていきます。 昨年のAdvent Calendarの記事 でも紹介しましたが、東京大学ソニーCSLの暦本(@)さんの「Squama」という研究では、透過度を変更できる窓を例に取り、「プログラマブル建築」というコンセプトを提唱しています。現在はおうちハックと言えば家電の挙動に関するものがほとんどですが、いずれ壁や天井を含めた住宅全体がカスタマイズ可能な要素を持ち、それを住人が自由にハックする時代が来るだろうと思っています。

おうちプログラミングのもっと未来

住人がハックしなくても、機械学習で勝手にカスタマイズされていく家になると思う。

さいごに

昨年も今年も総論的なエントリになってしまって、こういうのも大事かもしれないけど、来年は自分でおうちハックしたエントリ書きたいなと思いました。

あと、Amazon Echoの招待がまだ来ません

俺にEchoが来ないことで
俺の代わりにだれかがEchoを持てる
   ∧ ∧
  ( ・ω・)
 _| ⊃/(___
/ ヽ_(____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はそういうことに
幸せを感じるんだ
 <⌒/ヽ-、__
/<_/____/

北陸先端科学技術大学院大学を単位取得満期退学しました(退学後2年以内に博士号取得予定)

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2017年9月30日に北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 情報科学研究科 博士後期課程(社会人コース)を単位取得満期退学しました。在学年限の6年間(+休学1年間)を迎えたためです。博士号は2年以内に取得する予定で引き続き博士の研究します。仕事等の生活についても特に変わりません。

単位取得満期退学とは

厳密な定義はよく知りませんが、博士研究以外の博士修了要件(授業の単位取得など)を満たし、あとは博士論文を書いて提出するだけという状態で退学することを指します。Wikipediaにも載ってます。もともとは、文系の「博士課程を終えても博士号は取得せず、教授とかになってから取得するのが普通」みたいな考え方から生まれたもののようです。

博士課程では、社会人学生に限らず単位取得満期退学をするのはたまに見かけます。私のように在学年限を超えた場合もありますが、標準年限(3年)を過ぎて就職が決まっていたり授業料を払うのがもったいない場合が多いように思います。

単位取得満期退学をすると、退学後も一定期間内は博士論文の審査を受けられ、審査を通ると博士号が授与されます。期間は大学によって違うと思いますが、JAISTの場合は2年以内です。

退学するには退学願を提出するのですが、これが思っていたよりだいぶ大変で、指導教員、副指導教員、副テーマ指導教員、学系長(旧研究科長)の4人から承認印と所見(コメント)をもらい、退学予定日の1ヶ月前に提出します。これが教授会で承認されると退学が許可されます。ちなみに退学が許可されないと除籍(授業料を払わなかったりした場合と一緒)になります。

今後の予定

上記の通り退学後2年以内ということで、2019年9月が学位取得のタイムリミットなのですが、現実的で最速なスケジュールとして2018年12月に学位取得のつもりで動いています。投稿論文の採択可否などの状況によってはもう少し遅れるかもしれません。

今までの研究を博士論文のストーリーの一部としてまとめ直したり、追加の実験が必要になるかもしれないことを考慮して、 少し早めの年明けあたりから博士論文執筆に取り掛かろうと思っています。まだもうちょっとありますが、1年前や2年前と比べると道筋だいぶ見えてきました。。。

退学するとどう変わる?

社会人学生ということもあり、いままでとこれからで変わることは特になさそうです。JAISTの学生ではなくなったのですが、実はJAISTのプロジェクト研究員という身分も以前から有しているので、引き続きJAISTの人です。JAISTの設備等もいままでとそれほど変わらずに使えるのではないかと思います(よくわかってない)。

いままで使っていたJAISTのメールアドレスは失効しました。といってもJAISTのメールアドレスはそれほど使っておらず、学会系のMLにいくつか登録してたのを変更しただけでしたが。

授業料を払わなくてもよくなりました。JAISTでは標準在籍年数の3年分の学費で最大6年在籍できるという長期履修制度というものがあり、実質半額で大変助かりましたが。

あとは、入会している学会の会員種別を学生会員から正会員に変更しました。

心残りといえば、国際会議で開催されるDoctoral Symposiumに一度も参加したことがなかったので、参加しておけばよかったなあというのは最近強く思ってます。博士課程の人は行くといいと思うよ。

小学校入学以来、修士課程修了から博士課程(社会人コース)の入学までの2年半を除いた23年間は学生だったわけですね。長いなあ。博士号取得できなかったりしたら、またどこかの大学院に入る可能性も無くはないですが。もう入りたくねぇなぁ。

現役の社会人博士の皆様におかれましては、単位取得満期退学せずとも学位取得できるよう、計画的に博士研究を進められることをお勧めします。