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北海道の大学教員/情報科学研究者の日記

「なぜあなたの研究は進まないのか?」「なぜあなたは論文が書けないのか?」の2冊が素晴らしかった

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タイトルに惹かれ、Amazonのレビューを眺めても悪くなさそうだったので読んでみたら、めちゃくちゃ良書だったので誰かに紹介せずにはいられないので紹介エントリ書きます。研究の副読本はいままでもたくさん出ていて何冊か読んでますが、過去読んだ中でベストと言えるくらいオススメ。どちらも2016年7月に発売された新しい本で、著者は東大医学部附属病院の講師の方です。なので例文には医学・生理学系の内容が多く用いられていますが、研究に関わる人なら分野は関係なく誰にでも読めるようになっています。

それぞれ40ずつのトピックが設けられ、1つのトピックが2〜3ページに簡潔にまとまっていて、とても読みやすいです。トピックの最初に「Question」、最後には「Message」という要約が大きなフォントで書かれていて、これを見るだけでも大まかな内容がつかめ、あとで読み返す時のラベルにもなります。一気に読まなくても、1日1トピックずつ読んでいくという読み方もできそうです。

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なぜあなたの研究は進まないのか?

なぜあなたの研究は進まないのか?

なぜあなたの研究は進まないのか?

「なぜあなたの研究は進まないのか?」(以下、「研究は」)は、「研究テーマの設定」や「研究活動の困難を突破すること」について書かれており、後半にはメンタルや生活を整えるライフハック的な内容にも触れています。「研究とはどういうものか」ということがわかるので、研究を始めたばかりの学生が読んで研究活動についての理解を深めたり、研究者が手元に置いておいて研究に行き詰まった時に読み返すのによさそうです。以下、特に個人的に気になった文・フレーズを引用してみます。なるべく原文の通りに表記していますが、コンテキストの補足が必要なものなどは意味を変えないように改変しています。

  • 承認欲求が研究の第一のモチベーションになっていないか?
  • 自分は人にどう思われようと◯◯だから研究するのだ、と言い切れる確固たる自我を確立する
  • 目の前の疑問やテーマにすぐに飛びついていないか?
  • その疑問に答えることは、分野の重要な進歩につながるか
  • 研究に値するテーマかどうか見極める基準は、そのテーマが自然に出てきた素朴で素直な「なぜ?」という疑問かどうか。頭の中でこねくり回したテーマは素直でない部分がある。
  • 研究で一番役に立たないのは、過去の論文はよく知っているけど何一つ建設的なことが出てこない評論家タイプ
  • 「仮説」とは、そのように仮定すれば現象がうまく説明できるようなもの
  • 起こるとは知られていない現象が起こりうると仮定し、そのためにはこういうことが必要だ、というような研究は技術開発と仮説の証明の中間
  • ある目的に向かう「技術開発系の研究」と、仮説に問いかける「仮説証明系」の研究の違いは重要
  • これから行おうとしている実験・研究に「近い」モデル論文を見つける
  • その辛い経験は決して無駄ではない。その経験は必ずあなた自身に返ってくるし、将来指導的立場になったときにはあなたと後輩のために大いに役立つ経験だ
  • 必ず道は開ける
  • 朝起きがけの時間は本当にゴールデンタイム
  • 今やっている研究の意義と仮説を1分で説明できるか?
  • 実験・解析の労力:論文執筆の労力=9:1くらいに思っているかもしれないが、実際には6:4か5:5と言えるくらい、論文を書くことは大変で時間もかかる作業
  • 論文作成作業を開始する目安は「核となるデータ」が出たところ

なぜあなたは論文が書けないのか?

なぜあなたは論文が書けないのか?

なぜあなたは論文が書けないのか?

「なぜあなたは論文が書けないのか?」(以下、「論文が」)は、論文の執筆に必要な作業が列挙され、論文の各章「Introduction」「Materials and Methods」「Result」「Discussion」の役割を明確に書き記しています。また、こちらの本でも、論文執筆の時間を確保するためのライフハック的なトピックも取り上げられています。文章を書く技術についても触れられていますが、そこはメイントピックではなく、論文の構成の組み立て方に主眼が置かれています。文章を書く技術については、大定番の 理科系の作文技術 (中公新書 (624)) など、他の本を合わせて読むとよさそうです。以下、引用。

  • 論文作成の大部分が単純作業である一方で、まとまった時間を作って深く入り込むことで成し遂げられるパートもある
  • 朝の30分は知的作業のゴールデンタイム
  • 安易に研究に逆戻りしてはいけない。勇気を持って、可能な限り、今、手元にある材料で書き上げよう
  • 論文のテーマに関連した文献を30以上集めて目を通したか?
  • 論文の結論を1〜2行で書ききること
  • イイタイコト(=結論)は、砂漠を旅する時に常に進むべき方向を教えてくれる北極星のような存在
  • 結論というのは普通、実験結果に解釈が加わって、「結局そういうことなのか!」という概念に昇華したもの
  • 結論がはっきりしていれば、仮説または目的も自然に書ける
  • 原著論文を書く時は、仮説か目的のどちらかを明確にintroductionで述べるのが鉄則
  • 核になるデータが出たらFigureの紙芝居でストーリーを組み立てながら実験や解析を進め、それが出揃ったあたりで論文の結論(=イイタイコト)を1〜2行で書き表して論文のゴール(北極星)を明らかにし、そこに向かって書き進む
  • よいResultを書くにはデータの解釈が絶対に必要
  • Discussionは結果と結論の間をブリッジするもの
  • Resultを見れば論文の結論は明らかだ、と思うかもしれないが、それはあなたがその研究分野やあなたの出した研究結果を知りすぎていることから起きる錯覚
  • Resultと結論の間には大きなギャップがあり、それを丁寧に埋めて説明しなければReviewerや読者はあなたの論文をきちんと理解できないということを自覚すべき

「論文が」では、特に、結論を北極星に喩えているのが抜群に分かりやすいと感じました。上記に引用した文は、気になったところ全部は上げきれないのでかなり抜粋です。この他にも、いくつかチェックリストも用意されていて、論文執筆の際に役立ちそうです。

まとめ

「研究は」は研究室に配属された直後に、「論文が」は初めて論文を執筆することになった時に読み、その後も手元にずっとおいておいて行き詰った時に読み返すという使い方がよさそうです。2冊合わせても¥5,000弱なので、十分に回収できる投資かと思います。書店で探す時は、医学書のカテゴリに置いてあることが多いようです。

研究分野にそれほど依存しないように書かれていますが、当然細かい部分では分野によっての差異があり、特に論文構成などはそれぞれの分野での流儀のようなものがあると思います。とは言え本質的な部分は変わらないので、いまの自分の専攻である情報科学に当てはまるように噛み砕いて実践していきたいと思います。

宅配便の荷物の中に車の鍵と家の鍵を入れてしまった

f:id:yumu19:20160916125810j:plain ※写真は昼に食べたラムチョップ。内容とは全く関係ありません。

何が起きたか

  • 2泊3日の出張の帰りの出来事
  • 出張にはリュック+ボストンバッグで出かけてて、最終日の朝にボストンバッグの方は自宅宛に宅配便として送った
    • これは結構よくやる。特に最終日に用事がある時には。¥1,000ほどなので、コインロッカーの値段ににちょっとプラスするくらいの感覚。
  • 送ったボストンバッグの方に車の鍵と家の鍵を入れてしまった/(^o^)\

どうしてこうなったか

出張初日に、リュックが壊れてしまった。

すぐ直せそうにもなく、このままだと出張中にとても困るので、替えのリュックを購入。

壊れたリュックから新しいリュックに、PCや充電ケーブルなどの出張中に必要なものを移す。このときに鍵を壊れたリュックに入れっぱなしにしてた!!そして最終日の朝、壊れた方のリュックはボストンバッグに詰めて、ボストンバッグを宅配便で送る。こうして鍵を送ってしまったのだ。気づいたのが、小松空港(家の最寄りの空港)について駐車場に向かう途中にリュックから車の鍵を取り出そうとしたとき。つまり鍵が必要になるまで全く気づかなかった。

対処法

  • 家のスペアのキーを配置していなかった(全て家の中に置いてある)
  • 車のスペアキーは家の中にも無し
  • 職場か大学にいけば一晩越せるけど、公共交通機関はなく(バスが1日1本とか。ちゃんと調べてない)、仮にタクシーを使ったら¥6,000くらい。
  • 荷物は翌朝には届く(翌日午前中の時間指定で送ってるので)

まず、ヤマトのウェブで伝票番号を入力して現在の位置を追跡。東京→石川の輸送中っぽい(今朝出したのでそりゃそうですよねー)。てことで、おとなしく今晩はホテルに泊まり、翌日に荷物を回収する作戦。

次に、ヤマトに電話して相談。もともと自宅宛だったけど、自宅に送られても受け取れないので、最寄りの配送所留めに変更してもらう。ちなみに、伝票はもらったらすぐ捨てることが多いのだけど、今回はたまたま捨てずに持ってた。伝票無いと追跡できなかったかもしれないので、運が良かった。

(現在ホテルでこれを書いている。翌朝に無事回収したら追記)

今後の対策

家のスペアキーを家以外のどこかにおいておく。10年近く前に、家の鍵を失くしたことがあって*1、それ以来家のスペアキーを家以外に置いておくようにしてたんだけど、最近は油断してて今の家に引っ越してからはスペアキーを家以外においてなかった。。。

ちょうど、そろそろAkerun買おうかなーと考えていて、Akerun買うなら万が一の時を考えて家の鍵をどこかに置かないとなー、と考えてたところだった。そもそもAkerunあればケータイ失くさない限り家に入れるし。Akerun買おう。

スマートロックロボット Akerun 630015

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まあでも、家の鍵をどこか(たとえば職場)においてあっても、そこまで移動と、さらに家に帰る移動手段がほとんどないので、結局同じようにホテルに泊まったかもしれない。

余談

iPhoneのSIMの今月の使用容量を使い切ってしまい、まともに通信できなくなってしまったので、荷物追跡やヤマトの営業所の場所を調べたりするのがハードモードだった。10年近くぶりに空港においてある10分100円のPC使った。

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*1:このときは管理会社にスペアキーを借りた

CEDEC2016ペラコン177位でした #peracon

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今年もCEDECでペラコン(A4 1枚のゲーム企画書コンテスト)に参加しました。

結果は195作品中177位でした。初参加の一昨年は38位、昨年は26位とそこそこの順位をとってきたのですが、今回は最下位付近の大事故です。

できるまで

応募したのは、エントリのトップに貼った「Rokuring」という拡張現実ゲームです。今回のテーマは「リング」ということで、一人ブレストをしていろいろネタ出しをし、クラウドファンディングで一時期話題になったあの Ring が思い浮かびました。Ringのように指輪型ウェアラブルバイスで指先の動きをセンシングして操作を行うのをゲームに取り入れたらおもしろいんじゃないかと思い、ちょうど大流行中のポケモンGOやその元になったIngressのような街中でプレイする拡張現実ゲームのネタを詰めていきました。IngressやポケモンGOで散々言われていた「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)でプレイればと絶対面白い」というのも取り入れてみました。技術的にも、現状のRingやHoloLensの技術を考えれば、それほど非現実的ではなく、数年後に実現してもおかしくないくらいです。

仕掛け

内容の他にペラ自体にも何か仕掛け(ペラコン自体もハック)をしたいなと思い、ゲームで現実をしたようにペラもWebへ拡張すべく、広告でよくある「続きはWebで」を取り入れてみることにしました。ポスターに検索ワードを書いて検索に誘導しつつ、実際にランディングページを作成し、検索すると本当にページを閲覧できるようにしました。

ページの作成には、 WebのGUIからランディングページ向けの1枚サイトを作成できる「ペライチ」という奇しくもペラコンっぽい名前のサービスを利用しました。

Google Analyticsも仕込んだのでアクセス数もわかるのですが、たったの8アクセス!その内、審査期間と思われるCEDEC開催中のアクセスは1アクセスで、まったく審査員に見てもらうことができませんでした。

ランディングページがあるからといって提案のネタが面白くなるわけではなく、面白い仕掛けとおもって票を入れてくれる審査員が数名いたらいいなあくらいの気持ちでしたが、そもそも検索してもらえないと仕掛けにも気づいてもらえないですね。200弱の大量のペラを審査している間にわざわざ検索して調べてもらうのは難しいということに気付かされました。

規約には違反していないはずなので失格にはならないだろうと思いつつ、失格になったらどうしようと少しドキドキしてました。*1

なぜ事故ったか

実際のところは審査員コメントを読むまでわからないのですが、自分で思いつくところの反省点を上げると

  • ゲームルールがIngressの劣化版パクリで新規性も面白味もない
  • 指輪ネタが多すぎたので、指輪という時点で興味を惹けなかった
  • 世界観(なぜ戦うのか)の記載が一切ない

あたりが思い浮かびます。ただ、この順位だと票を入れた審査員がおそらく0人か1人ということで、ほぼすべての審査員に響かなかったわけで、根本的に何かが違うんですかねー。

自分の中で「続きはWebで」の仕掛けにちょっと傾倒しすぎてたというのはありますが、「続きはWebで」が無くてもおそらくこのネタで勝負しただろうという程度には自信があったネタなので、ネタ作りに手を抜いたということでもないです。ペラの作成時間も、昨年までは2〜3時間でパワポで作っていたのが、今年はだいぶ気合入れて5時間以上かけてイラレでつくってたり。

まあでもやっぱり本当のところは審査員のコメントを見てみないとわからないので、講評出るのがとても楽しみです(開き直りではなく本当に)。50位くらいだとすごく凹んだ気がするのですが、ここまで低いと悔しさよりもなんで低かったんだろうという好奇心の方が勝るんですね。この順位だと酷評コメントばかりでしょうが、大人になると酷評される機会も少ないですし。

「失うものしかない」との呼び声が高いペラコンですが、(逃げを打つわけではないですが)自分はゲーム業界の人間ではなく失うものが特にないので、順位が低くてもペラコンを楽しませて頂きました。また来年新しい気持ちで出直して、来年こそはきちんと結果を出したいと思います。

*1:まあこの順位だと失格のほうがマシと思えるくらいなんですが

研究テーマの探し方(大学3〜4年生・M1向け)

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書きかけを下書きに保存したまま忘れて放置してました。。。 研究室に配属されたばかりの大学3〜4年生・M1くらい向けに、研究テーマの探し方について書いてみます。

ざっくり次の4ステップ。うまく見つかるまで繰り返し。

  1. 授業等で得た知識の中から興味あるキーワードを10個挙げる
  2. そのキーワードをもとに、どういう研究ができそうか、研究テーマ候補を5個挙げる(この段階で新規性のあるものを思いつくのは無理なので、すでにありそうなものでOKなので、とにかく5個絞りだす)。
  3. それぞれの研究テーマについて、Google Scholarを使って、最も近い論文を探す(似たような研究テーマが必ずあるはずなので。見つからなければ検索ワードを少し変えて検索し直す。)
  4. その論文を読んでみて、自分のアイディアとの差分(自分のアイディアの方が優れていること)か、こうすればもっと上手くいきそうというアイディアを考える。

研究ネタを思いついた場合、同じような先行研究が必ずあるので、自分が考えたネタと一番近いことをやっている先行研究の論文を探しましょう。(思いついたネタがありきたりだからというわけではなくて、世の中のどんな研究ネタにも必ず先行研究があるし、人間が思いつくことは大抵過去の誰かがやってます)

1ネタについてGoogle Scholarを使って論文探し2時間・論文読み2時間として半日くらいあればできるはずで、丸1週間くらいかければ先行研究調査を大体終えられるはず。

その先行研究を踏まえたうえで、既存研究に対して差分が出せそうなネタを選ぶといいんじゃないかな。または、どうやればいいかは未確定だけどこれをやりたい!という情熱を持ってできそうなネタが見つかればそれでもよいし。

1ネタに絞ったら、国内研究会→国際会議→査読付き論文投稿という研究のステップ(分野によって異なります)を一通り体験できるといいですね。国内研究会だけで終わっちゃうと英語の論文が残らないので、世界的には何もやってないことと変わらないので、どんなネタでも国際会議まではやらないともったいない(ブーメラン)。